緊急事態宣言が解除となりましたが、経営者は当面の資金手当て策などをすすめている中にあり、先の見通しなどは見えづらく、依然厳しい状況かもしれません。
しかし、新型コロナ感染症の対応もステージが変わりつつあり、新型コロナ感染症の第2波があることを想定した経営が求められます。
今の業態をそのままで開始するのか、新たな事業を加えていくのか、全く違う業態に転換するのも良いでしょう。
だが、共通して求められるのは、「新しい生活様式に対応した事業経営」です。
そのため、今回の内容は、施術・リラクゼーションビジネス(治療院、整骨院・鍼灸院・マッサージ・整体院・リラクゼーションサロン、美容・エステサロンなど)のための感染症対策をまとめました。
従業員が、感染者や濃厚接触者となってしまった場合、長期間にわたり職場離脱が予想されます。また、感染者となった従業員が他の顧客(患者・利用者)や同僚の従業員に二次感染させることで、当該事業所内に新たなクラスターを発生させることにもつながりかねません。
事業継続にも大きな影響を与えるために、従業員の対策実施とともに、管理者も人員確保含めたサービス提供体制、連絡体制の整備など改めて感染対策を見直し、徹底しましょう。
目次
新生活様式に対応する店づくり
早急にすべきことは、新型コロナウイルス感染症の主な感染経路である接触感染と飛沫感染のそれぞれについて、従業員や顧客等の動線や接触等を考慮したリスク評価を行い、そのリスクに応じた対策を検討することです。
接触感染のリスク
接触感染のリスク評価としては、他者と共有する物品やドアノブなど手が触れる場所と頻度を特定し、以下の対策を講じましょう。
複数の人の手が触れる場所を始業前、始業後に清掃、適宜消毒
- テーブル、椅子の背もたれ、ドアノブ、電気のスイッチ、電話、キーボード、タブレット、タッチパネル、蛇口、手すり、エレベーターのボタン など
ゴミの廃棄対策
- 鼻水、唾液などが付いたごみは、ビニール袋に入れて密閉して縛る
- ゴミを回収する人は、マスクや手袋を着用する
- マスクや手袋を脱いだ後は、必ず石鹸と流水で手を洗う など
トイレ対策
- トイレの蓋を閉めて汚物を流すよう表示する
- ハンドドライヤーは止め、ペーパータオルを設置する(共通のタオルは禁止) など
飛沫感染のリスク
飛沫感染のリスク評価としては、換気の状況を考慮しつつ、人との接触を避け、人と人との距離がどの程度維持できるか(できるだけ2mを目安に)や、施設内で大声などを出す場がどこにあるかなどを評価します。
対策
- オフィスはレイアウトの見直し広々と使用する
- 人と人が対面する場所は、アクリル板・透明ビニールカーテンなどで遮蔽する
- マスクの着用(従業員及び入場者に対する周知)を徹底する
- 休憩スペースは、常時換気する
- 一度に休憩する人数を減らし、対面で食事や会話をしないようにする など
症状のある方の入室制限
発熱や軽度であっても咳・咽頭痛などの症状がある人は入室しないように呼びかけることは、オフィス内などにおける感染対策としては優先すべき対策となります。
- 発熱者を体温計などで特定し入室を制限
- 万が一感染が発生した場合に備え、入室者等の名簿を適正に管理(個人情報の取扱に十分注意)
働き方のスタイルの見直し
新型コロナウイルス感染症の猛威により、日常生活は多大な影響を受けていますが、否応なしに働き方改革の必要性に迫られています。しかし働き方のスタイルの見直しを前向きにとらえ、人手不足対応、生産性向上と業務効率化、魅力ある職場づくりと人材育成の観点から以下のような取組みを進めましょう。
- テレワークやローテーション勤務
- 時差通勤での出社
- 会議や名刺交換はオンライン化 など
室内の換気改善
新型コロナウイルス感染拡大のリスクを高める環境である「3密」の1つとして、「換気の悪い密閉空間」が挙げられます。
換気の悪い密閉空間にしないよう、換気設備の適切な運転・点検を通じて定期的な換気を行う必要があります。
それは、事業場内で集団感染が生じてしまうと、事業継続にも大きな支障をきたす為です。
企業でできる対策
厚生労働省が公開している「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」を参考に下記が挙げられます。
●職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト(厚生労働省)
1)換気状況の確認
オフィスの換気設備は、通常は省エネルギーを考慮して外気導入量を絞っているケースが多く、運用を見直すだけでも効果を高められます。
室内の二酸化炭素濃度が1,000ppm以下であれば、必要換気量(一人あたり毎時30立方メートル)を確保できるとみなすことができ、「換気が悪い密閉空間」には該当しないと言えるでしょう。
まずは、室内の二酸化炭素濃度の測定結果をビル管理会社に確認し、1,000ppmを超えている場合は換気設備の運用見直しを相談しましょう。
日本産業衛生学会の産業衛生技術部会から換気シミュレーターが公開されています。
以下の例のように、手軽に換気状態を見積もることができますのでお試しください。
●換気シミュレーター(日本産業衛生学会)
部屋にいる人数,部屋のサイズ,室内での活動状況,換気装置の条件などを入力することにより,室内の二酸化炭素(CO2)の濃度を推定し,これにもとづいて換気の良し悪しを見積ります。事務室,会議用の部屋,集会などの場所,家庭内など,屋内のさまざまな状況で利用できます。
日本産業衛生学会「換気シミュレーター」 |
換気シミュレーターによる見積りで得られる結果は下表のとおりです。結果に応じて推奨される対策を行ってください。
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換気状態が良くない場合には、在室人数を減らすことで必要換気量を確保することも可能です。なお、適正な在室人数の目安も前述の換気シミュレーターにより算出できます。
2)換気設備のないスペースについて
喫煙室や喫食スペース、更衣室のような共用スペースは「3密」になりやすく、更衣室が集団感染の原因となった可能性のある事例も報告されています。以下の対策を実施してみましょう。
- 必要以上に人が集まらないようにする(滞在時間を減らす、利用時間を分ける)
- 会話を最小限にする
- 取っ手やドアなど、複数の人が触れる所は定期的に消毒(拭き掃除)する
※留意事項
換気の悪い密閉空間はリスク要因の一つにすぎず、換気をするだけで感染リスクを充分に低減できるというものではありません。
「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」を参考に、その他の対策と組み合わせて実施することが重要です。
訪問事業における従業員の感染対策
訪問施術サービスを提供する事業者において、感染が疑われる利用者への対応などは、従業員の不安も大きいと思われますが、きちんと感染対策を取ることでリスクは低減できます。
十分に感染拡大防止策を講じつつ、安定的かつ継続的に必要なサービスを提供することが社会的に求められています。
事業所でできる対策
1)訪問前に利用者の体調確認をし、症状を認める場合は訪問介護の必要性を再検討する
訪問前に利用者の体調確認をし、発熱等の症状を認める場合には関係各所に連絡の上、訪問介護の必要性をよく検討します。
- 利用者に毎日の検温を求め、訪問前に電話で体温や風邪症状の有無を確認する
- 症状を認める場合は、家族・主治医・担当ケアマネージャーに報告する
- さらに、保健所等に設置されている帰国者・接触者相談センターに電話連絡し、指示を受ける
- 担当ケアマネージャー・保健所とよく相談の上、訪問介護の必要性を検討する
2)重症化のリスクがある従業員に、感染疑いのある利用者の訪問介護をさせない
1)で訪問の必要性が認められ、サービスを提供することになった場合、万一感染した場合のことを考え、重症化のリスクがある従業員に担当させるのは控えましょう。
- サービスを提供する場合は、支援内容・支援時間を絞るように調整する
- 妊婦、糖尿病・心疾患・腎疾患等の持病があるもの以外から担当者を選定する
- 担当者は固定とし、当面は同担当者が他の利用者へのケアを行うことは控える
3)サービス提供時には感染防止策を徹底する
サービス提供時には換気の徹底に加え、利用者に接する際には手袋・マスク・ガウン・ゴーグル等の個人保護具を適切に使用し感染防止を行うことが必要です。また、サービス終了後には必ず手洗いを行います。
- 担当者は事前にマスク・ガウン・手袋等の着脱訓練を行っておく
- 訪問時には2方向の窓を開放し、換気を徹底する
- 利用者と接するときは、使い捨て手袋・不織布性マスク・使い捨てガウン・ゴーグル等を着用する(保護具がない場合は代用品を使用する*¹)
- サービス提供の際、提供前に利用者の手指消毒を行う
- サービスで使用したタオル等は、手袋・マスク着用のまま、すぐにビニール袋に入れて密閉する(必要に応じて、利用者宅で洗濯・廃棄してもらう)
- 使用したマスクや手袋は表面に触れないように注意して外す*²
- サービス終了後に手洗いを行う(アルコール消毒でも可)
- 手指消毒の前に顔を触らないようにする
- 使用したゴーグルは、改めて手袋を着用の上で、アルコールまたは0.05%の次亜塩素酸を浸透させたペーパータオル等で外側を拭きとる
最後に
最後になりますが、上記の取組みを実践する際には、「当社の感染症対策は、このようにしていますよ」と、顧客にメッセージを発信してください。
やり方は、ホームページ・Googleマイビジネスに掲載、チラシ・広告、店の看板、入り口シャッターに張り紙をする、電話、メール、顧客に訪問して説明をする、などの方法があると思います。
顧客が、サービスの一つとして捉えるなら、徹底した感染症対策は、競合他社と比べて、十分な差別化となっているのではないでしょうか。
時期が間に合うのであれば、販路拡大等に使える「小規模事業者持続化補助金」や、「補助金の事業再開枠」を活用しても良いでしょう。
●事業再開枠
業種別ガイドライン等に沿った以下の感染防止対策の経費が上限50万円(補助率10/10)
消毒、マスク、清掃、⾶沫防⽌対策(アクリル板・透明ビニールシート等)、換気設備、その他衛⽣管理(クリーニング、使い捨てアメニティ⽤品、体温計・サーモカメラ・キーレスシステム等)、掲⽰・アナウンス(従業員⼜は顧客に感染防⽌を呼びかけるもの)
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