補助金・助成金 資金調達

【2025年】新事業進出補助金の活用について

新事業進出補助金の活用方法

近年、治療院や接骨院、整体院、エステサロン、美容サロンなどのヘルスケア事業者は、健康志向の高まりや多様化する顧客ニーズに対応するため、新たなサービスの導入や事業の多角化を求められています。

​しかし、新規事業への進出には設備投資や人材確保など多くの資金が必要であり、資金調達が大きな課題となっています。

そこで注目されているのが、「新事業進出補助金」です。

​この補助金は、中小企業や個人事業主が新たな事業分野に進出する際に活用できる制度で、事業の多角化や新規市場への参入を支援することで、企業の成長や競争力の強化を目的としています。

本記事では、「新事業進出補助金」の概要や申請要件、補助対象経費、申請手続きの流れなどを詳しく解説します。

​ヘルスケア業界の経営者の皆様が、補助金を活用して新たな事業展開を図る際の参考となる情報を提供いたします。

ヘルスケア事業者とは

治療院(整骨院・接骨院、鍼灸院、マッサージ院)、整体・リラクセーション院、カイロプラクティック院、美容・エステサロン、スポーツトレーナー、フィットネスクラブ、病院・診療所(クリニック・医院)、歯科医院・クリニック、機能訓練型デイサービス、リハビリテーション、介護・福祉関連など

新事業進出補助金とは?

2025年-令和7年-中小企業-新事業進出補助金
中小企業新事業進出補助金パンフレット-R6年12月時点版(中小企業庁)

目的

新事業進出補助金は、現在おこなっている既存事業とは異なる新しい事業への挑戦を支援するための制度であり、新市場や高付加価値事業に進出することで、生産性を向上し、企業規模拡大や賃上げを促すことを目的としています。

活用イメージ

  • 機械加工業でのノウハウを活かして、新たに半導体製造装置部品の製造に挑戦
  • 医療機器製造の技術を活かして蒸留所を建設し、ウイスキー製造業に進出

補助事業概要

中小企業新事業進出補助金の概要
項目内容
補助対象者企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業等
補助上限額●従業員数20人以下:2,500万円(3,000万円)
●従業員数21~50人 :4,000万円(5,000万円)
●従業員数51~100人:5,500万円(7,000万円)
●従業員数101人以上:7,000万円(9,000万円)

補助下限750万円
※大幅賃上げ特例適用事業者(事業終了時点で、①事業場内最低賃金+50円、②給与支給総額+6%を達成)の場合、補助上限額を上乗せ。
(上記カッコ内の金額は特例適用後の上限額。)
補助率1/2
基本要件中小企業等が、企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行い、事業者にとって新製品(又は新サービス)を新規顧客に提供する新たな挑戦であること

① 付加価値額の年平均成長率が+4.0%以上増加
② 1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、又は給与支給総額の年平均成長率+2.5%以上増加
③ 事業所内最低賃金が事業実施都道府県における地域別最低賃金+30円以上の水準
④ 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等の基本要件を全て満たす3~5年の事業計画に取り組むこと。
補助事業期間交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)
補助対象経費建物費、構築物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費
その他●収益納付は求めません。
●基本要件②、③が未達の場合、未達成率に応じて補助金返還を求めます。
ただし、付加価値が増加してないかつ企業全体として営業利益が赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還を免除します。

尚、小規模事業者で、もう少し投資額が小さく既存事業の販路拡大を考えている方は「小規模事業者持続化補助金」も確認してください。
弊社が考えている、補助金活用にあたり「事業の対象」と「規模」は下記程度かと考えていますので、ご参考までに。

  • 小規模事業者持続化補助金”は、100万円~500万円規模の既存事業(現在おこなっている事業)の販路開拓・生産性向上の取組み
  • 新事業進出補助金”は、1,500万円以上~数千万円規模の新たな事業に対する取組み
  • ものづくり補助金”は、1,500万円以上~数千万円規模の新たな製品・サービス等の開発のための設備投資

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新事業進出補助金の補助対象者

日本国内に本社を有する中小企業者等(組合関連以外)に含まれる会社又は個人であること。

中小企業者とは、資本金又は従業員数(常勤)が下表の数字以下である必要があります(サービス業は資本金5000万円以下、従業員100人以下)。

表:中小企業者の範囲
業種資本金従業員数(常勤)
製造業、建設業、運輸業3億円300人
卸売業1億円100人
サービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)
5,000万円100人
小売業5,000万円50人
ゴム製品製造業
(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)
3億円900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業3億円300人
旅館業5,000万円200人
その他の業種(上記以外)3億円300人

分類については産業分類の改訂に準拠します。(https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/kaitei_13.pdf

  • 企業組合等、一般財団法人、一般社団法人、農事組合法人、労働者協同組合などでは要件を満たす場合のみ補助対象となります。

新事業進出補助金の対象となる事業者

以下のいずれかに該当する場合、「新事業進出補助金」には申請できません。

申請しても不採択、または後日取消・返還対象となる可能性があります。

A.他の補助金・制度との重複がある事業者

  1. 過去16か月以内に採択された事業者(新事業進出補助金・事業再構築補助金・ものづくり補助金)
    ※採択辞退者を除く。また、現在これらの補助事業を実施中の事業者も対象外。
  2. 他の国庫補助金や助成金と重複する事業
    同一の補助対象経費が、他の補助金(委託費・助成金など)や制度(診療報酬・介護報酬・固定価格買取制度など)と重複している場合は対象外。
  3. 交付決定済み・申請中の補助金の内容を記載していない場合
    未申告や申請内容の重複は虚偽申請とされ、不採択や返還対象になります。

B. 事業再構築補助金で重大な問題があった事業者

  • 採択取消・納付命令・報告未提出・返還命令を受けたにもかかわらず対応していない事業者

C. 企業の体制・創業年数に関する条件に該当しない事業者

  • 従業員数が0名
  • 創業1年未満(最低1期分の決算書が必要)
  • みなし大企業(大企業の出資比率や役員構成により支配されている企業)
  • 課税所得が過去3年平均で15億円超
  • 応募後に中小企業の定義から外れた事業者

D. 組織形態・事業実態に関する条件に該当する事業者

  • 法人格のない任意団体(法人化していない団体)
  • 収益事業を行っていない法人
  • 公的機関からの運営費が大半を占める法人
  • 政治団体・宗教法人

E. 不正行為や制度悪用が疑われる事業者

  • 虚偽の申請内容(意図的な誤りや未記載含む)
  • 補助対象になるために、一時的に従業員や資本金を操作した事業者
  • 経産省や中小機構により指名停止や交付停止を受けている事業者
  • 過去に補助金・給付金で不正行為があった事業者
  • 5年以内に法令違反があった事業者
  • 暴力団関係者と関係がある事業者

新事業進出補助金の補助金額と補助率

補助金額

補助金額は従業員数に応じて以下の範囲で設定されています。

補助金の下限額は750万円であり、後述する補助率が1/2であるため、1,500万円以上の投資が前提となります。

交付決定額の減額により、補助金額が補助下限額(750万円)を下回ることとなった場合は、採択取消となります。
全額対象外となった場合も同様です。

従業員数補助金額賃上げ特例の適用の上限額
従業員数20人以下750万円~2,500万円3,000万円
従業員数21人~50人750万円~4,000万円5,000万円
従業員数51人~100人750万円~5,500万円7,000万円
従業員数101人以上750万円~7,000万円9,000万円

補助率

補助率は対象経費の1/2です。

新事業進出補助金の対象となる経費・対象外となる経費

新事業進出補助金で対象となる経費

新事業進出補助金では、事業化に必要な設備やサービスなど明確な目的を持った経費のみが対象となります。

以下に、補助対象となる具体的な経費を分かりやすくまとめました。

区分内容
機械装置・システム構築費
(※建物費といずれか必須
● 補助事業専用の機械、工具、ソフトウェア等の購入・製作・リース費用
● それらに関連する改良、据付、運搬費用
単価10万円以上、交付決定後の契約・購入が対象
● 中古品も条件付きで対象(相見積もり等必須)
建物費
(※機械装置・システム構築費といずれか必須
● 事業に必要な施設の建設・改修・撤去費用
● 補助事業に使用する建物に付随する構築物の建設費用
● 建物の購入や賃貸は対象外
運搬費● 宅配・郵送料等の運搬に係る費用(原則、機械装置等の運搬はシステム費に含む)
技術導入費● 他者の知的財産を導入するための費用(ライセンス等)
● 同一事業者に重複して外注・専門家として依頼不可
知的財産権等関連経費● 特許出願などにかかる弁理士費用や翻訳費用
● 日本特許庁への手数料、訴訟費用などは対象外
● 補助事業の成果に基づいた知財出願に限る
外注費
(上限:補助金全体の10%
● 補助事業に必要な加工・検査・設計の外注費
● 外注先との契約と選定理由の明示が必要
専門家経費
(上限:100万円
● 必要不可欠な専門家(大学教授・診断士など)への謝金・旅費
● 単価上限や実績報告時の根拠資料が必要
クラウドサービス利用費● 補助事業専用に使用するクラウドサービスの利用費
● サーバー利用、通信料等が対象
PC本体や共有利用の場合は対象外
広告宣伝・販売促進費
(上限:事業計画年ごとの売上見込みの5%
● チラシ・パンフ・動画・ウェブサイト・展示会出展費用など
● 要件定義書・見積書などで費用の妥当性が確認できること

各経費は補助事業に直接関連し、証拠書類に基づいて妥当性が確認できる必要があります。

新事業進出補助金で対象となる経費

次に該当する経費は、補助対象外です。
また、申請した経費の大半が対象外と判断された場合、不採択や採択取消になる可能性がありますのでご注意ください。

主な補助対象外経費一覧

  • 既存事業に使うもの
    (補助事業専用でない経費は対象外)
  • 家賃、敷金、仲介手数料、水道光熱費
    (事務所運営に関わる費用は対象外)
  • 詳細が不明な諸経費・一般管理費・雑費
  • フランチャイズ加盟料
  • 通信費(切手代、電話・ネット料金など)
    (クラウドサービスの付帯費用を除く)
  • 商品券などの金券類
  • 販売やレンタルを目的とした商品の仕入れ、試作品、サンプル費
  • 事務用品(文房具等)、新聞・雑誌代、会費
  • 映像制作のための被写体購入費用
  • 飲食代、接待費、娯楽費など
  • 不動産や株式の購入費用
  • 税理士や弁護士への報酬(税務申告・決算・訴訟費用など)
  • 登記・登録・特許・免許・許可・検査等の行政手数料
  • 収入印紙
  • 銀行振込手数料、代引手数料、両替手数料
  • 消費税等の税金、公租公課
  • 各種保険料
  • 借入金の利息・遅延損害金
  • 補助金申請書類作成に係る費用
  • 汎用的な備品(PC、プリンタ、タブレット、家具家電、スマートフォン等)
    (補助事業専用でない可能性があるため)
  • 自動車・船舶・航空機の購入・修理・車検・内装費用
  • 適正な価格設定が不明な中古品の購入費用
    (例外として3者以上から見積取得した場合は対象)
  • 自社の人件費や旅費
  • 観光農園等の栽培経費
  • 再生可能エネルギー発電設備(ソーラーパネル等)
    ※売電事業は完全対象外。法的義務がある蓄電池のみ例外的に対象。
  • 他の補助金や公的制度(医療保険・介護報酬等)で既に補助対象になっている経費
  • 事業者自身が行うべき手続きの代行費用
  • 代表者や役員が同じ、資本関係のある事業者への支払い
  • 同一企業内(部署間)での支払い(社内発注・製造も含む)
  • 経済産業省や中小機構が停止措置中の業者への支払い
  • 社会通念上不適切と判断される経費、市場価格からかけ離れた経費

上記経費はすべて補助対象外です。申請の際はご注意ください。

新事業進出補助金で対象となる事業の要件

対象となる事業には、以下の要件を満たす3~5年の事業計画に取り組むことが必要です。

1.新事業進出要件

新事業進出指針に示されている「新事業進出要件」である①~③をすべて満たす事業計画を策定する必要があります。

➀製品等の新規性要件

事業で新たに提供する製品やサービスが、自社にとって新規であること。過去に提供した製品を再提供する場合は対象外です。

製品等の新規性要件に該当しない例
新事業進出補助金-製品等の新規性要件に該当しない例1
新事業進出補助金-製品等の新規性要件に該当しない例1
新事業進出補助金-製品等の新規性要件に該当しない例2
新事業進出補助金-製品等の新規性要件に該当しない例2
評価が低くなる例

中小企業の大胆な新事業進出を促す観点から、以下のようなケースは評価が低くなる傾向にあります。

  • 容易な製造:既存技術で簡単に作れる新製品の製造
    (例)自動車部品を製造している事業者が、容易に製造が可能なロボット用部品を製造する場合
  • 単純な改変:既存製品に少し手を加えただけの製品の製造
    (例)自動車部品を製造している事業者が、既存の部品に単純な改変を加えてロボット用部品を製造する場合
  • 単なる組み合わせ:既存製品を組み合わせただけの新製品の製造
    (例)自動車部品を製造している事業者が、既存製品である2つの部品を単に組み合わせたロボット用部品を製造する場合。

➁市場の新規性要件

新たに提供する製品やサービスが、既存の顧客層と異なる新しい顧客層を対象としていること。

具体的には、既存事業ではターゲットとしていなかったニーズ・属性(法人/個人、業種、行動特性等)を持つ顧客層へシフトするなど、新規市場の開拓が必要です。

市場の新規性要件に該当しない例
新事業進出補助金-市場の新規性要件に該当しない例1
新事業進出補助金-市場の新規性要件に該当しない例1
新事業進出補助金-市場の新規性要件に該当しない例2
新事業進出補助金-市場の新規性要件に該当しない例2

➂新事業売上高要件

新たに提供する製品やサービスによる売上や付加価値が、事業計画の最終年度において、申請時の総売上高の10%以上または総付加価値額の15%以上になると見込めるような計画を立てる必要があります。

(参考)新事業進出指針を満たす業種別の例

【例1】製造業①

ガソリン車の部品を製造していた事業者が、車両部品の製造で培った技術を活かして、新たに半導体製造装置の部品の製造に着手する場合

新事業進出補助金-製造業の例1
新事業進出補助金-製造業の例1
【例2】製造業②

航空機用部品を製造していた事業者が、航空機部品の製造で培った技術を活かして、新たに医療機器部品の製造に着手する場合

新事業進出補助金-製造業の例2
新事業進出補助金-製造業の例2
【例3】建設業

注文住宅の建設を行っていた事業者が、建設業で培った木材の知見を活かして、新たにオーダーメイドの木材家具の製造に取り組む場合

新事業進出補助金-建設業の例
新事業進出補助金-建設業の例
【例4】印刷業

販促物の印刷を行っていた事業者が、既存事業での顧客対応力を活かして、新たに食堂等の内装工事事業に取り組む場合

新事業進出補助金-印刷業の例
新事業進出補助金-印刷業の例
【例5】情報サービス業

アプリやWEBサイトの開発を行っていた事業者が、既存事業でのノウハウを活かして、地域の特産物等を取り扱う地域商社型のECサイトの運営に取り組む場合

新事業進出補助金-情報サービス業の例
新事業進出補助金-情報サービス業の例

2.付加価値額要件

補助金を活用するには、補助事業終了後 3~5 年で付加価値額(または従業員一人当たり付加価値額)の年率平均4.0%以上増加する見込みの事業計画を立てる必要があります。

事業者は、自社でこの成長率を上回る具体的な目標額(付加価値額目標値)を設定し、事業計画の最終年度までにその達成を目指す必要があります。

付加価値額とは?

付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいいます。

そして、成果目標の比較基準となる付加価値額は、補助事業終了月の属する(申請者における)決算年度の付加価値額とします。

3.賃上げ要件 【目標値未達の場合、補助金返還義務あり】

補助金を受けるには、補助事業終了後3~5年間の事業計画期間において、次のいずれかの水準以上の賃上げを実現する必要があります。

  1. 一人当たり給与支給総額の年平均成長率が、都道府県ごとの最低賃金の過去5年間の成長率以上となること
  2. 給与支給総額全体の年平均成長率が2.5%以上となること

これらの目標値は、申請時点で自ら設定し、全従業員または代表者にあらかじめ伝えることが義務付けられています。目標値は基準値以上であれば自由に設定可能で、より高い目標を掲げると審査上の評価も高くなります。

返還要件について

補助事業終了後の事業計画期間において、設定した賃上げ目標を達成できなかった場合、補助金の返還義務が発生します。

  • 目標を従業員に表明していなかった場合:補助金の交付決定が取り消され、全額返還が求められます。
  • 目標を表明していたが未達成だった場合:未達成率に応じた割合で補助金の一部を返還する必要があります。

なお、企業全体で継続的な赤字が続いており付加価値も増加していない、または自然災害などの不可抗力による場合には、返還が免除されることもあります。

※年平均成長率がゼロまたはマイナスの場合は、補助金全額の返還が必要になります。

4.事業場内最賃水準要件【目標値未達の場合、補助金返還義務あり】

補助事業終了後の3~5年間の事業計画期間において、毎年、事業所内で最も低い賃金が、補助事業実施地域の最低賃金より30円以上高い水準である必要があります。

この要件を確認するため、毎年の「事業化状況報告」の際に、賃金台帳などの資料提出が求められます。

返還要件について

上記の要件を1年でも満たさなかった場合、その年に相当する補助金について、補助金交付額を事業計画期間の年数で割った金額の返還が求められます。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は返還を求められない可能性があります:

  • 当該年度の付加価値額が増加していないかつ営業利益が赤字である場合
  • 天災など不可抗力による影響があった場合

※返還額の上限は、交付された補助金額までとなります。

5.ワークライフバランス要件

補助金の申請には、仕事と子育ての両立支援に関する取り組みを示す「一般事業主行動計画」を作成・公表していることが必要です。

この行動計画は、「次世代育成支援対策推進法」に基づき、社員の働きやすい職場環境づくりを目的とした取組内容をまとめたもので、申請前に作成し、国の専用サイト「両立支援のひろば」へ掲載する必要があります。

なお、公表までに1~2週間ほどかかるため、早めの準備が推奨されます。加えて、可能な限り都道府県労働局への届け出も行ってください。

6.金融機関要件(金融機関等から資金提供を受ける場合)

補助事業を金融機関等からの資金提供によって実施する場合は、資金提供元の金融機関から事業計画内容の確認を受け、「金融機関による確認書」を提出する必要があります

  • 自己資金のみで実施する場合は、「確認書」の提出は不要です。
  • 金融機関は、事業所の所在地にある必要はなく、任意の金融機関を選ぶことができます。
  • 複数の金融機関から資金提供を受ける場合でも、いずれか1つの金融機関からの確認書があれば要件を満たします

<賃上げ特例の適用を受ける場合の追加要件>
7.賃上げ特例要件 【要件未達の場合、補助金返還義務あり】

賃上げ特例の適用を受けるには、補助事業の実施期間中に以下の2つの要件をどちらも満たす必要があります:

  1. 給与支給総額を年平均で6.0%以上増加させること
  2. 事業場内最低賃金を年額で50円以上引き上げること

新しい事業場で補助事業を行う場合は、既存の事業場の最低賃金を基準に、50円以上の引き上げが必要です。

応募時には、これらの賃上げを実行するための計画書を提出し、その内容が妥当かどうかが審査されます。事業完了後には、賃上げの実施状況を確認するため、決算書や賃金台帳の提出が求められます。

返還要件について

初回の事業化状況報告で上記2つの要件の達成が確認できなかった場合、特例により上乗せされた補助金額(=賃上げ特例による増額分)については、全額返還を求められます。
なお、返還額は交付された補助金額の範囲内に限られます。

※補助金を申請した時点よりも給与や最低賃金を意図的に引き下げて要件を満たそうとする行為は認められません。

新事業進出補助金申請の流れと注意点

新事業進出補助金の流れ

新事業進出補助金の流れ
新事業進出補助金の流れ

新事業進出補助金の注意事項

新事業進出補助金の申請・活用にあたり、以下の条件を遵守してください。

① 採択後〜交付申請前の注意事項

  • 説明会への参加義務
    採択された事業者は、事務局が開催する説明会への参加が必須です。不参加の場合、採択は無効となります。
  • 交付決定前の事業承継禁止
    交付決定前に、補助金を受ける権利を他者に譲渡(事業譲渡・会社分割など)することは禁止されています。
  • 計画変更の禁止
    交付決定前に、採択された事業計画の変更は一切認められません。

② 交付申請〜交付決定の注意事項

  • 速やかな交付申請
    採択日から原則2か月以内に交付申請が必要です。遅れた場合、採択は取り消されます。
  • 補助金額の減額可能性
    申請した経費のすべてが補助対象とは限りません。対象外経費は減額または全額却下されます。減額により補助金が750万円を下回る場合、採択は取り消されます。
  • 見積もりの取得・価格の妥当性確認
    経費の見積もりは可能な限り複数取得し、50万円以上の場合は3者以上からの見積もりが必要です。金融機関や事業計画支援者からの見積もり、ペーパーカンパニー、未実績業者からの見積もりは認められません。
  • 消費税控除の義務
    課税事業者の場合、消費税分は補助対象経費から控除して申請します。
  • 事前着手禁止
    交付決定前に契約・発注した経費は対象外です。

③ 補助事業実施期間中の注意事項

  • 事業期間の厳守
    事業は交付決定日から14か月以内(採択発表から最長16か月以内)に完了する必要があります。延長は原則不可です。
  • 交付決定後の計画変更の制限
    実施場所や経費配分、内容の変更、事業中止・承継などは事前承認が必要です。
  • みなし大企業への移行禁止
    期間中の株主や役員の変更により大企業とみなされる場合、採択は取り消されます。
  • 支払い方法の制限
    支払いは銀行振込のみ対象です。現金払い、手形、電子決済(PayPay等)は対象外です。

④ 実績報告〜補助金額確定の注意事項

  • 実績報告期限厳守
    事業完了後30日以内または事業完了期限日までに実績報告を提出してください。遅れは採択取消になります。
  • 実地検査の協力義務
    事務局による実地検査があります。拒否すると採択取消になります。
  • 保険加入義務
    建物や設備は補助率以上の割合で自然災害保険への加入が義務付けられます。
  • 経理処理・証憑書類の保存
    補助事業に関連する書類は5年間保存が必要です。補助金は収入として法人税の課税対象となります。

⑤ 事業化状況報告期間中の注意事項

  • 5年間の事業化状況報告義務
    完了後5年間、毎年度末に事業化状況を報告する必要があります。虚偽報告や未報告は補助金返還となります。
  • 実地検査の可能性
    事業完了後も会計検査院や事務局の抜き打ち検査が行われることがあります。
  • 財産処分制限
    補助で取得した財産は一定期間処分禁止です。処分には事前承認と納付が必要です。
  • 知的財産権の帰属
    補助事業で得た知的財産は事業者自身に帰属します。
  • 効果検証への協力義務
    事務局の政策効果検証調査への協力が求められます。

以上の内容を守って、適切に補助金を活用してください。

事業計画の策定と審査

補助金の審査は、事業計画書を基に行われます。
そのため、採択されるためには、【審査項目】を確認し合理的で説得力のある事業計画を策定することが必要です。

また、【加点項目】や【減点項目】も確認することで、審査におけるハードルを下げておくことも重要です。

書面審査

審査項目内容
(1)補助対象事業としての適格性● 補助対象者・事業の要件を満たしていること。
● 高い付加価値や賃上げ実現の明確な目標とその実現性があること。
(2)新規事業の新市場性*¹・高付加価値性● 社会的な普及度や認知度が低い新製品・サービスであること。
● 一般的な市場価格・付加価値よりも高水準な製品やサービスを提供すること。
(3)新規事業の有望度● 継続的な売上・利益を確保できる市場規模・成長性があること。
● 参入障壁をクリアでき、自社が競合他社に対して明確な優位性を持つこと。
(4)事業の実現可能性● 中長期的な課題検証、スケジュール、解決方法が明確かつ妥当であること。
● 財務状況が良好で、資金調達・人材等の経営資源確保が可能なこと。
(5)公的補助の必要性● 社会的インフラ・経済波及効果や雇用創出等、国が補助する意義があること。
● 補助金に対する費用対効果が高く、イノベーションへの貢献が期待できること。
(6)政策面● 日本経済の構造転換や経済成長、地域経済の活性化を促進する事業であること。
● 先端技術活用やニッチ分野での差別化を通じた経済波及効果があること。
(7)大規模な賃上げ計画の妥当性
賃上げ特例を希望する場合
● 賃上げの計画内容が具体的・妥当で、将来も継続的に利益を人件費に充当できること。

※1 新市場性について

新市場性の審査では、新たに提供する製品やサービスがどのような「ジャンル・分野」に属するのかを明確にする必要があります。

この際、ジャンルや分野を区分するときには、製品やサービスの「性能」「サイズ」「素材」「価格帯」「地域性」「業態」「顧客層」「効果」などの要素は含めずに分類してください。

※これらの要素は「ジャンル・分野の新市場性」審査の際に排除するだけであり、事業の具体的な特徴は、「新規事業の有望度」や「事業の実現可能性」、「公的補助の必要性」など他の審査項目で評価されます。

新事業進出補助金-新市場性の区分
新事業進出補助金-新市場性の区分

※2 高付加価値性について

高付加価値性とは、新しく取り組む製品やサービスが、同じジャンル・分野の中で「特に高い価値や価格」を提供できるかどうかを評価するものです。

具体的には、以下のポイントが審査されます。

  • 同じジャンルや分野において、一般的な製品・サービスの価値や相場価格をしっかりと調査・分析できているか。
  • それら一般的な製品・サービスと比較して、自社の新製品・新サービスがより高い付加価値や価格を実現できているか。
  • 高付加価値や高価格を実現するための、自社の強みや独自の価値について明確な分析がなされており、その内容に説得力があるか。

こうした視点で審査されるため、ジャンル・分野内でどのように他社との差別化を図り、高い価値を生み出しているのかを具体的に示すことが求められます。

新事業進出補助金-高付加価値性の例
新事業進出補助金-高付加価値性の例

加点項目

以下のいずれかを満たすと審査時に加点されます。

  • パートナーシップ構築宣言の公表
  • 次世代法に基づく認定(くるみん等)
  • 女性活躍推進法に基づく認定(えるぼし等)
  • アトツギ甲子園の参加
  • 健康経営優良法人2025認定
  • 技術情報管理認証取得
  • 成長加速化マッチングサービスの会員登録
  • 再生事業者としての支援を受けている
  • 特定事業者

減点項目

以下の場合、審査時に減点されます。

  • 過去の補助金で賃上げ加点を受けたが要件未達
  • 類似テーマへの過剰投資の恐れ
  • 過去の補助事業の進捗が不十分(新事業進出・事業再構築・ものづくり補助金)

口頭審査

一定基準を満たした申請者に対して、必要に応じオンラインで口頭審査を実施します。

(1)審査内容

  • 事業の適格性、優位性、実現可能性、継続可能性

(2)審査方法

  • Zoom等のオンライン形式(約15分間)
  • 本人確認および審査環境の確認が必要

(3)事前準備物

  • インターネット環境のあるPC(カメラ、マイク、スピーカー)
  • 顔写真付き身分証明書(運転免許証、パスポート等)
  • 審査に適した静かな環境

(4)留意事項

  • 公平な審査のため、カメラオンで本人のみ参加
  • 口頭審査の内容を他者に口外禁止
  • 指定時間に参加できない場合、不採択とみなされる

スケジュール

  • 第1回:2025年7月10日(木)18:00

申請手続きについて

電子申請

電子申請が必須で、gBIZ IDの取得が必要となります。

電子申請

電子申請には、gBIZ IDが必要となるため、早めに取得しておきましょう(取得には2週間程度かかります)。

最後に

「新事業進出補助金」は、ヘルスケア事業者が新たな事業分野に進出する際の強力な支援策となります。

​補助金を活用することで、設備投資や人材確保などの初期費用を軽減し、リスクを抑えながら新規事業を展開することが可能です。

ただし、補助金の申請には、事業計画の策定や各種要件の確認、必要書類の準備など、多くの手続きが必要となります。​

また、申請内容によっては不採択となる場合もあるため、事前の準備と情報収集が重要です。​

本記事で解説した内容を参考に、自社の事業計画を見直し、「新事業進出補助金」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

​補助金を上手に活用することで、事業の成長と競争力の強化につながるでしょう。

補助金は資金の負担を軽減できるというメリットがありますが、デメリットとしては申込書類準備・事業計画書作成にかかる負担、審査があるため不採択の可能性がある、採択後の事務負担などが考えられます。
但し、事業計画書を作成をする中で、自社の現状を見つめ直す良い機会にもなると思います。

弊社では、無料補助金チェックサービスや、「補助金・助成金」および「中小企業施策(経営力向上計画・先端設備等導入計画・経営革新計画・事業継続力強化計画等)」、「融資・資金調達サポート」などの申請サポートをおこなっております。

また、ヘルスケア業界向けにホームページ作成、SEO対策、MEO対策、リスティング広告運用代行などのデジタルマーケティング支援をおこなっております。

ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

ヘルスケア業界

病院・診療所(クリニック・医院)、歯科医院、治療院(整骨院、鍼灸院、マッサージ院)、整体院、カイロプラクティック院、リラクゼーションサロン、美容サロン、エステサロン、スポーツトレーナー、フィットネスクラブ、介護関連(通所、訪問)、機能訓練型デイサービス、リハビリテーション、薬局など

無料補助金チェックサービス(Prants)

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※簡単な項目を入力するだけで、条件に該当する最適な補助金や金額の把握が可能となり、補助金制度の煩雑な情報収集は不要となるサービスです


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ヘルスケア業界向け経営支援 KeieiChiryo Consulting(KCC)

認定支援機関として公的支援制度の活用による経営支援をおこなっております。主に、開業支援、新規事業支援、経営改善支援、M&A・事業承継、補助金・助成金・融資・資金調達サポートなど。

また、Web集客支援(ホームページ・ECサイト制作/SEO対策/MEO対策/Web広告)によるデジタルマーケティング支援ももおこなっております。初回無料相談実施中のため、お気軽にお問い合わせください。

法政大学経営大学院発ベンチャー/経営革新等認定支援機関/M&A支援機関/IT導入支援事業者

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飯塚 伸之(いいづか のぶゆき)

株式会社BE NOBLE 代表取締役、法政大学経営大学院特任講師、MBA(経営管理修士)
医療機関での勤務経験を活かし、ヘルスケア事業者の経営・集客支援や資金調達支援、M&A、企業向け健康経営支援事業を展開。 中小企業診断士/健康経営エキスパートアドバイザー/医療経営士/ファイナンシャルプランナー/鍼灸師/柔道整復師/キャリアコンサルタント/産業カウンセラーなど、多岐にわたる資格を保有し、幅広い視点からクライアントの課題解決に取り組む。

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