施術ビジネス(治療院/整骨院/整体・リラクゼーション院/美容・エステサロン/トレーニング/リハビリ/デイサービス等)において、新規開業し事業開始に伴う届出関係は大変複雑です。特に国家資格者として、接骨院(整骨院)あはき施術所(あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師)を開業する際には保健所や療養費関係の届出も必要となるため手続きが多くなります。
そして、以下の事項も決定し、届出をしていく必要があります。
- 事業を「個人事業主」または「法人」でおこなうのか
- 「国家資格を有し療養費の請求をおこなうのか」または、「民間資格等で療養費の請求をおこなわないのか」
- サービス提供において「店舗を有する」または、「出張専門で店舗を有さない」のか
- 確定申告は「青色申告」または、「白色申告」のどちらでおこなうのか etc.
新規開業・事業開始に伴い、多くの事業者が、開業の準備をしながら届出も行わなければならないため、届出関係について分かりやすく記載していきます。
先ず、必要な届出関係の一覧を時系列で図1にしました。
必要な届出は、大きく以下の3つに分かれています。
- 療養費の請求を伴う施術所開設・施術開始の届出:柔道整復の施術所(接骨院・整骨院)、あはきの施術所
- 事業開始に伴う届出:税務関係
- 従業員の雇用に伴う届出:雇用関係
*あはき:国家資格である「あん摩、マッサージ、指圧師、はり師、きゅう師」の頭文字を読んだ省略語。
目次
1.療養費の請求を伴う施術所開設・施術開始の届出 (柔道整復・あはき)
柔道整復の施術所(接骨院・整骨院)・あはきの施術所開設にあたり、療養費の請求を伴う施術所開設・施術開始の届出が必要です。
大きく分類すると、➀保健所への届出、➁療養費関係各所の届出、➂施術管理者の要件となります(図2)。
➀保健所への届出
接骨院(整骨院)やあはきの施術所を開業するには管轄の保健所へ開設届の提出が必要です。
接骨院(整骨院)やあはきの施術所は許認可制ではなく届け出制のため、開業後でないと開設届の提出ができません。後述しますが、保健所への届出が受理される事で、施術は可能となりますが、療養費による施術をおこなうには地方厚生局などの関係各所への届出が必要です。
尚、民間資格等(整体院・リラクゼーションサロン・エステサロン・美容サロン)での開業は保健所への届出は不要となっています。
保健所における手続きの流れ
施術所を開設される方(柔道整復・あはき)
step
1事前相談
工事着工前に図面(各室の用途、寸法、面積、及び外気開放面積、換気装置の位置を記入したもの)を持参の上、事前相談をおこないます。
事前相談では、構造設備基準(表1)、施術所の名称(表3)、広告の規制(表4)、開設日程、添付書類についてなどを計画変更な段階で確認してください。また、同一建物内であん摩マッサージ指圧、はり、きゅうと柔道整復の施術所を開設する場合には表2を確認してください。
特に構造設備基準については、開設後に基準を満たさず届出が受理されないことがないように気を付けましょう。
※指導事項などの詳細は地域により異なりますので、保健所で必ず確認してください。
step
2開設
事前相談で確認した以下の事項を満たして施術所の開設をおこないます。
- 構造設備基準を満たした内外装工事
- 法律で定められている広告の規制に抵触しないような施術所の名称、看板、新聞広告、屋外に置くパンフレット、屋外で配布するチラシ、施術所の外壁等の表記
※広告は看板、印刷物など目に触れるものが対象
(参考)柔道整復とあん摩マッサージ指圧・はり・きゅうの施術を併せて行う施術所について
施術所の名称はそれぞれ別につけ、看板等の広告も明確に区別します。
施術所の構造は、原則2つの構造設備を持つことになりますが、一定の条件で造設備の共用が認められます。
step
3開設届の提出
開設後10日以内に、以下の届出書類一式を提出します。また、実地検査の日程をこの時に決定します。
※実地検査の有無は地域により異なる
必要書類
- 施術所開設届(柔道整復とあん摩マッサージ指圧・はり・きゅうの開設届は様式が異なる) ※2部作成、1部は副本として受付印捺印後、返却
- 施術者の免許証の写し2部とその原本
- 平面図2部(以下の内容を記入したもの)
- 待合室及び施術室の寸法・床面積
- 施術室の外気開放部分の寸法・面積または換気装置の位置、消毒設備の位置
- 待合室の外気開放部分の寸法・面積または換気装置の位置(外気開放部分または換気装置がある場合)
- 施術所周辺図(最寄駅からの案内地図)
- 賃貸契約書のコピー(賃貸の場合)
- 定款の写しと登記簿謄本(法人の場合)
- その他各保健所で求められる書類作成
(参考)柔道整復とあん摩マッサージ指圧・はり・きゅうの施術を併せて行う施術所について
施術者が一人の施術所を開設する場合は、それぞれの開設届の開設者は同一にします。
開設届はあん摩マッサージ指圧・はり・きゅうと柔道整復について、それぞれ届出をおこないます。
step
4保健所職員による検査
現地に伺い、届出内容に相違がないか確認します。
届出内容の相違、書類の不備がなければ開設届の副本を現地で交付します。
※実地検査の有無は地域により異なる
表1~4について
必須事項 | 構造設備基準 | 施術室 | ・6.6平方メートル以上の面積を有する専用の部屋であること ・室面積の1/7以上に相当する部分を外気に開放できること、もしくはこれに代わるべき適当な換気装置があること ・外気開放面積:ドアは含まず、窓等で実際に外気に開放できる面積 ・施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること ※例示: 流水設備を設けること ・はりを業とする場合は 、オートクレーブ・煮沸消毒器・乾熱滅菌機のいずれかを有すること(全てディスポーザブルの場合不要) |
待合室 | 3.3平方メートル以上の面積を有すること | ||
衛生上必要な措置 | ・常に清潔に保つこと ・採光、照明及び換気を充分にすること |
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指導事項 | 施術室と待合室の区画 | ・施術室、待合室の区画は、固定壁および扉で上下左右完全に仕切られているものであることが望ましい (カーテン等容易に動かすことができるものは不適切) |
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施術所の独立性 | ・住居や店舗などと構造上、機能上独立している ただし、一定の条件の下で、施術室以外の構造設備を共用することはやむを得ない。(施術室は専用である必要がある。) |
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施術室のベッド | ・プライバシに配慮して、ベッドごとにカーテンを設けることが望ましい ・施術者の人数に対し、ベッドの数があまりにも多いのは望ましくない |
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その他 | 消火用の器具機械を設置してください。 |
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施術所の名称は、法律による広告の規制を受けます。 施術所以外の医業類似行為施設と区別するために、「マッサージ指圧」、「鍼灸」、「接骨」等を名称につけることが望ましいとされています。 | |
使用できない名称 | ① 病院又は診療所に紛らわしい名称(医療法第3条) (例:〇〇療院 〇〇はり療院は可 、〇〇治療所 〇〇はり治療所は可 、〇〇はり科、〇〇きゅう科) ② あはきと柔整が混在した名称 (あはき法第7条第1項・柔整法第24条第1項) (例:〇〇鍼灸接骨院) ③ 施術所で認められていない 民間療法 名の使用 (あはき法第7条第1項・柔整法第24条第1項) (例:〇〇整体鍼灸院 ・〇〇カイロプラクティック接骨院) ④ 施術者の流派その他技能経歴を含んだ名称 (あはき法第7条第2項・柔整法第24条第2項) (例:〇〇流鍼灸治療院) ⑤ 適応症 を含んでいる名称( 医療法その他関係法令による広告について:医収第1027号) (例:〇〇腰痛マッサージ治療院) |
看板のレイアウト(あはき・柔整兼業の場合) |
原則として法律に定められた事項以外は、広告できません。 広告可能な事項を広告する場合にも、その内容は、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項になってはいけません。(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第7 条第2 項・柔道整復師法第24 条第2 項) |
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「あはき法」に基づく施術所で認められている広告事項 |
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「柔道整復師法」に基づく施術所で認められている広告事項 |
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(参考)
違反の多い広告の例 |
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出張専門で施術所を開設しない方(あはき個人のみ)
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が個人宅への出張のみによってその業務に従事する場合に必要な届出となります。
尚、施術者が個人の立場で出張するものなので、「治療院」等、名称を名乗ることはできません。
すでに施術所を開設されていて、施術所から出張する場合には、不要な届出となります。
step
1出張施術業務開始
あん摩マッサージ指圧、はり・きゅうの出張施術業務を開始します。
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の個人が対象となります。
step
2出張施術業務開始届の提出
業務開始後、10日以内に出張施術業務開始届を保健所へ提出します。
必要書類
- 出張施術業務開始届書2部
- 施術者の免許証の写し2部(原本も持参してください)
- 届出者(出張施術業務を開始する人)の印鑑
注意ポイント
- 個人の資格者が対象
- 事業所などを住所として提出することは不可
- 他自治体で既に出張施術業務の開始届を提出済みの場合は、新たな手続き不要
- あん摩マッサージ指圧、はり、きゆうの施術所開設届の手続きをした人は、手続き不要で出張業務を行うことが可能(場所を設けて施術を行う場合は、施術所開設届が必要)
- 「治療院」など、名称を名乗ることはできない
- 柔道整復師は対象ではない
- 業務内容の変更は、現行業務の廃止届と、新たな開始届が必要
➁療養費関係各所の届出
療養費の取り扱いをおこなう場合は、Ⓐ地方地方厚生局への受領委任の申出、Ⓑ各種共済番号の取得、©労災保険指定医療機関への届出、Ⓓ生活保護法等指定施術機関への届出などが必要となります。
Ⓐ地方厚生局
接骨院(整骨院)やあはき施術所で健康保険を取り扱いたい場合、地方厚生局に申請が必要となります。
保健所への届出では、施術可能とはなりますが、地方厚生局の申出により療養費による施術可能となります。
地方厚生局は受領委任の取扱いに際し、すでに開業している施術所が保険適用(療養費)に対しての受領委任契約の申請を承諾する機関です。
受領委任取扱いに係わる申し出の書類一式を管轄の地方厚生局に提出します。
受領委任契約により契約記号番号が発行されるのですが、これは各都道府県の知事に承諾を受けていることを示す番号です。
個人で請求を行う場合は、保険請求の際に契約記号番号が必要です(社団法人の会員は団体協定)。
プレオープン等の活用
必要書類には、保健所の受理印がある開設届の写しが必要となるため、保健所の開設が受理された後でないと受領委任の申出がおこなえません(療養費の請求ができない)。
申出は、2通り(郵送・直接窓口)の方法でおこなえますが、受理されるまで日にちが空くことが多いことから、開業初日から療養費請求のできない施術をしてしまうケースが少なからずあります。
そのため、この期間にプレオープン等のイベント期間とし、その後、届出が受理されてから本格的なオープンをすることで無理なく届出を進めることが可能です。
地方厚生局への受領委任の届出の流れ
step
1保健所への開設届の受理
申請時には、保健所への“開設届の控え”が必須
step
2ホームページから申請書類をダウンロード
※関東信越厚生局のHPでは以下からダウンロード可能です。
トップページ→申請等手続き→下にスクロール→「柔道整復師の施術に係る療養費の受領委任に関する申し出」、「はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費の受領委任に関する申し出」
step
3必要書類を確認する
必要書類
- 確約書
- 受領委任の取扱いに係る届出
- 実務経験期間証明書
- 施術管理者研修修了証の写し
- 開設届の写し(保健所の受理印のあるもの)
- 施術所平面図
- 施術所周辺図
- 施術管理者の柔道整復師免許証の写し
- その他地方厚生局が求める書類
※勤務柔道整復師がいる場合、開設者と施術管理者が別の場合などの要件や、届出をする地方厚生局によって必要書類が異なる場合もありますので、事前に必ず厚生局に確認しましょう。
step
4窓口または郵送にて書類を提出
そのため、保険取扱開始日より以前に保健所への開設届が必要
窓口または郵送にて受理された日から取扱い可能(窓口>郵送) ※最短では当日の開設も可能
あはき施術に係る療養費に関する受領委任を取り扱う保険者等について
はり、きゅう及びあん摩マッサージ指圧について、施術者等が患者等に代わって療養費の支給申請を行う「受領委任制度」が導入されました。(平成31年1月1日から取扱い開始)
受領委任の取扱いは、制度に参加する保険者等に関する取扱いです。各保険者等の制度への参加やその時期については保険者等により異なるのでご注意下さい。(制度に参加するまでは、各保険者等のこれまでどおり償還払い・代理受領委任払いの取扱いとなります。)
Ⓑ共済組合
受領委任契約で出てきた契約記号番号は各都道府県の知事に承諾を得た事を示している番号です。しかしその承諾された受領委任には共済組合には含まれてはおりませんので、共済組合にも受領委任の申請をして各種共済番号の取得をする必要があります。
- 国家公務員関係の保険者へは、共済組合連盟に申請を行います。
- また、地方公務員関係の保険社へは、地方公務員共済組合協議会に申請を行います。
- 自衛官関係の保険社に請求をするためには、防衛省に申請を行い、防衛書番号を取得しましょう。
国家公務員
国家公務員関係の保険者へは共済組合連盟へ申請し、共済連盟承諾番号の取得が必要となります。
共済連盟承諾番号取得の流れ
- 電話をかけて、指定された内容(氏名、免許番号、郵便番号、住所、電話番号)をFAXにて送付します。
※HP上から申請は不可、FAX番号は電話時に教えてくれます。 - 承諾番号申請書類一式が送付されてきます。
- 提出書類を送付します。
柔道整復療養費の受領委任の取扱いに係る申出書(様式第1号)、確約書、柔道整復師免許証のコピー、返信用封筒(84円切手を貼付し、返信住所と宛先を記入) - 審査
毎月25日受付分までを審査し、不備がなければ翌月の1日付けで承諾書を発送 - 承諾書が送付され手元に届く
参考
(社)共済組合連盟
〒102-0071
東京都千代田区富士見1-7-5 共済ビル
℡03-3261-0073
地方公務員
地方公務員関係の保険者へは地方公務員共済組合協議会へ申請しが必要となります。但し、現在は知事承諾となっている都道府県もあり、申請が必要のない都道府県もあります。
※都道府県によっては、当該都道府県知事・都道府県を管轄する地方厚生局(地方厚生支局)に当該委任契約の権限を委任しており、同知事・同局が発行する登録記号番号の付番を受ければ、当協議会との個別契約は不要です。
登録記号番号取得の流れ
- (社)地方公務員共済組合協議会のHPにアクセス
協議会と個別契約が必要か確認(都道府県により異なります)
申請書類一式をダウンロード(様式第1号「柔道整復療養費の受領委任の取扱いに係る申出書」、様式第1号「柔道整復療養費の受領委任の取扱いに係る申出書」) - 必要書類を送付
様式第1号「柔道整復療養費の受領委任の取扱いに係る申出書」、 様式第2号「遵守事項確約書」、柔道整復師免許証明書の写し、郵便番号、住所、氏名を記載した返信用封筒(84円切手を必ず添付のこと) - 審査
月に3回締切日を設け、1~2週間後に承諾通知書を発送(急ぎの時は、電話にて番号を確認できます)。 - 承諾通知書が発送され手元に届く
参考
(社)地方公務員共済組合協議会
〒100-0011 東京都千代田区内幸町2-1-1 飯野ビルディング11階
TEL:03-6807-3691
送付FAX:03-3261-0086
自衛官関係
自衛官関係の保険者に請求する場合は、防衛省に申請を行い防衛省番号を取得します。
なお、現在「防衛庁」の名で取得している番号はそのまま使用することができます。レセプト提出の際には、防衛省番号に直しても防衛庁番号のままでも構いません。
登録記号番号取得の流れ
- 防衛省のHPにアクセス
申請書類一式をダウンロード(【様式第1】柔道整復療養費の受領委任の取扱いに係る申出書、【様式第2】遵守事項確約書) - 必要書類を送付(柔整担当者宛て)
【様式第1】柔道整復療養費の受領委任の取扱いに係る申出書、 【様式第2】遵守事項確約書、柔道整復師免許証明書の写し、郵便番号、住所、氏名を記載した返信用封筒(84円切手を必ず添付のこと) - 審査
毎月20日受分を審査し、月初に承諾通知書を発送(急ぎの時は、電話にて番号を確認できます) - 承諾通知書が発送され手元に届く
参考
防衛省 人事教育局衛生官付
〒162-8801 東京都新宿区市谷本村町5-1
TEL 03-3268-3111(内線20643)
©労災保険
接骨院(整骨院)、あはき施術所で、労災保険を取り扱うためには、管轄する都道府県労働局に対し必要な書類を提出し、都道府県労働局長による指定を受ける必要があります。
労災の指定機関として指定を受けるためには、労災保険指定医療機関への届出が必要となります。
届出のタイミングですが、必要書類に「保健所への開設届」があることから、保健所への届出が受理されてからとなります。
※あはきは団体を経由した請求が必要
登録記号番号取得の流れ
- 労働局へ電話し、書類一式を郵送依頼
所轄する労働局へアクセスし、問い合わせる - 必要書類を送付し申請
申出書、申立書、確約書、柔道整復師の費用の受任者払いに係る同意書(管理柔道整復師以外の勤務柔整師がいて、労災の施術を行う場合には提出)、指定・指名期間登録(変更)報告書、再委任同意書(口座名義人が受任者以外の場合には必要)、施術所開設届、柔道整復師免許証明書の写し(労災の施術をする柔整師全員分)、施術所の平面図、施術所付近の見取図 - 審査
不備がなければ約1~3か月程で通知書によって通知 - 通知書が発送され手元に届く
通知書が届くまでの期間の請求は訴求可能
東京都の場合
東京労働局 労働基準部 労災補償課分室
〒110-0005 東京都台東区上野1-10-12 商工中金・第一生命上野ビル5階
TEL 03-5812-8391
Ⓓ生活保護法、医療助成(マル障及びマル親乳子)
生活保護や医療助成(マル障及びマル親乳子)を取り扱うためには、施術所を管轄する福祉事務所に対し必要な書類を提出し、生活保護法による指定、医療助成費に関する受領委任の承認を受ける必要があります。
この指定は施術者ごとの指定となります。また、「施術所を開設した場合」と「施術所を開設していない場合」で記載内容が変わります。
届出のタイミングは、開業日1ヶ月前くらいから可能です。
生活保護法等指定施術機関への届出の流れ
医療助成費の受領委任に関する申し出の流れ
➂施術管理者の要件
柔道整復師およびあはき師が、療養費の受領委任を取り扱う際には、施術管理者の要件を満たす必要があります。
柔道整復
平成30年4月から、柔道整復療養費の受領委任を取り扱う「施術管理者」の届出又は申出の際は「実務経験」及び「研修の受講」が要件となりました。
あはき
令和3年1月1日以降、はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師が、療養費の受領委任を取り扱う「施術管理者」として新たに申し出する場合、「実務経験」と「研修の受講」が必要となります。
(参考)整体院・エステ等の民間資格の届出
民間資格等(整体院・リラクゼーションサロン・エステサロン・美容サロン)での開業では、➀保健所への届出、➁療養費関係各所への届出ともに不要な手続きとなります。
2.事業開始に伴う届出 (開業および税務関係の届出)
法人・個人事業主問わず全業種において事業を開始した際に必要となる届出となります。
混同されやすいですが、保健所への開設届は施術所開設・施術開始に伴うものであり、税務署の届出は事業開始に伴うものであるため、それぞれの届出が必要となります(図3)。
税務署への届出 国税(所得税及び源泉所得税並びに消費税)
法人設立後や個人事業の開始後は、国税(所得税及び源泉所得税並びに消費税)の届出を納税地を管轄する税務署におこなう必要があります。
法人
法人設立後(定款等の書類一式の作成→公証人による定款認証→法務局への登記申請)2ヶ月以内に「法人設立届出書」を税務署に提出します。
また、青色申告を選択する場合は、「設立から3ヶ月を経過した日」か「最初の事業年度終了の日」のどちらか早いほうの前日までに「青色申告の承認申請書」を提出する必要があります。
個人事業主
事業を開始した場合または、事業所等を開設等した場合には、事業開始等の日から1か月以内に「開業届出書」提出する必要があります。
ただし、期限を過ぎてしまっても提出することはできます。なお、開業届を出さないままでも罰則はありません。また、青色申告を選択する場合は、2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
その他
新規開業時に従業員を雇用することが決まっている場合は、従業員の所得税や保険に関する届出を行う必要があります。
従業員を雇用する場合(パート・アルバイト・日雇労働者・外国人労働者問わず)、事業主が従業員の所得税を代行して納付することになります。
その場合は1カ月以内に、納税地を所轄する税務署へ「給与支払事務所等の開設届出書」を提出し、給与支払事務所になったことを通知する必要があります。
都道府県税事務所・市町村の届出
税務署とは別に、地方税(住民税や個人事業税)に関する届出を都道府県税事務所にもおこなう必要があります。
※都道府県の所管税務署により異なります
法人
東京都の場合、「法人設立届書」を事業開始後15日以内
※都道府県の所管税務署により異なります
例)東京都主税局
個人
東京都の場合、「法人設立届書」を設立から2ヶ月以内(東京23区は事業開始後15日以内)
※都道府県の所管税務署により異なります
例)東京都主税局
3.労働保険・社会保険関係の届出
従業員を1人でも雇用する場合は、労働保険(労災保険と雇用保険)・社会保険(健康保険・厚生年金保険)の届出が必要となります(図4)。
労災保険
労働保険への加入は、労働基準監督署に「労働保険関係成立届」と「労働保険概算保険料申告書」を提出することで行われます。
労働保険に加入することで、従業員は仕事中に怪我をしてしまった場合、国から給付金を受け取ることができます。
提出期限は、労働保険関係成立届は従業員を雇用した日の翌日から10日以内で、労働保険概算保険料申告は従業員を雇用した日の翌日から50日以内です。
※申請用紙の紙が特殊印紙であるため、ダウンロードできません。所轄の労働基準監督署かハローワークから郵送してもらうか、直接取りに行く必要があります。
その他
就業規則届
常時10人以上の従業員を使用する場合は遅滞なく
時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)
時間外・休日労働させる場合、速やかに
雇用保険
雇用保険への加入は、公共職業安定所に「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を提出することで行われます。雇用保険に入ることで、従業員は失業したり病気により休業したりしてしまった場合、国から手当金を受け取ることができます。
31日以上の長期雇用で、1週間の労働時間が20時間以上の従業員を雇用した場合、事業主は雇用保険へ加入する義務があります。
提出期限は、雇用保険適用事業所設置届は従業員を雇用した日の翌日から10日以内、雇用保険被保険者資格取得届は従業員を雇用した翌月10日までです。
※労基署で保険関係成立届を提出した後でなければ雇用保険関係の手続きはできないので注意して下さい。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)
強制適用事業所とは、事業主や個人の意思、企業の規模・業種に関係なく、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられるすべての事業所を指します。
合同会社や株式会社といった法人事業主は従業員の人数にかかわらず、社会保険の強制適用事業所となるため、従業員が社長ひとりでも社会保険への加入が義務付けられています。
個人事業所の場合は、従業員を5人以上常時雇用している事業で、製造業、鉱業、土木建築業、電気ガス事業、清掃業、運送業などが強制適用の対象となります。美容業や飲食店等のサービス業、弁護士等の士業は従業員数に関係なく強制適用にはなりません。
健康保険・厚生年金保険の加入義務が生じた場合には5日以内に「新規適用届」と「被保険者資格取得届」を年金事務所に提出する必要があります。
- 法人は役員1人のみでも報酬が生じていれば加入義務がある
個人事業主は従業員5人以上
社会保険に加入しなくてもよいケース
- 社長ひとりの会社で役員報酬を支給しない場合(社長の給料がゼロの場合)
- 会社を複数経営しているような社長の場合は、その中の一部の会社から給料をもらっていないという状況
最後に
今回は、施術事業開始にかかる届出関係を大きく3つに整理して説明してきました。
- 療養費の請求を伴う柔道整復やあはき施術所の開設の届出
- 税務関係の届出
- 雇用関係の届出
また、開業にあたり融資などを検討される場合には、金融機関に対しての「事業計画書」の作成も必須です。開業日が決まったら、開業に向けて資金計画や事業コンセプトを考えて、形にしていかなければいけません。
届出だけで、これほど煩雑なので、スムーズに開業を進めるためには、事前にしっかりと準備しましょう。
弊社では、施術ビジネス(治療院/整骨院/整体・リラクゼーション院/美容・エステサロン/トレーニング/リハビリ/デイサービス等)などのヘルスケア業界向けの開業支援をおこなっております。
もし、開業についてお悩みの方は、ぜひ弊社へご相談ください。
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