「うちは医療系だから補助金は使えない」「保険収入があるから対象外だと思っていた」
治療院・整体院・美容サロン・クリニック・介護福祉施設など、ヘルスケア事業者の方から、こうした声を聞くことは少なくありません。
実際、近年は公的制度収入(診療報酬・療養費・介護報酬等)が事業収入の大半を占める場合、補助金申請が制限される制度が増えているのも事実です。
しかし一方で、「対象外だと思い込んでいたが、実は補助金を活用できた」というケースも数多く存在します。
本記事では、制度の変化を踏まえつつ、実際に補助金を活用できたヘルスケア事業者の具体例を紹介しながら、「なぜ対象になったのか」「どこが判断の分かれ目だったのか」を分かりやすく解説します。
リスクを避けながら補助金を活かすための考え方を整理していきましょう。
目次
なぜ「対象外だと思い込む」ヘルスケア事業者が増えているのか
近年、補助金制度では次のような考え方がより明確になっています。
- 事業収入の大半が、公的制度収入(診療報酬・療養費・介護報酬・障害福祉サービス等)である場合
- 補助金を使って行う事業・サービスそのものが、公的制度収入につながる内容である場合
これらに該当すると、「すでに国の制度で支えられている事業に、さらに補助金を出すのは二重補助にあたる」という考え方から、申請対象外とされる補助金が増えています。
そのため、医科・歯科クリニック(保険診療中心)、接骨院(療養費中心)、鍼灸院・マッサージ院(医療保険の訪問中心)、デイサービスなどの介護保険事業、障害福祉サービス事業所は、以前よりも注意が必要になりました。
一方で、以下の点を整理することで、今でも補助金を活用できるケースは存在します。
- 自由診療の割合
- 補助金を活用する事業が「自由診療・保険外サービス」かどうか
- 効率化・デジタル化・承継といった「事業基盤強化」目的かどうか
CASE 01
「保険収入があるから無理」と思っていた接骨院が補助金を活用できた理由
事業者概要
- 接骨院(個人事業)
- 主収入:柔道整復療養費
- 自由診療:自費施術・コンディショニングメニューあり
当初の認識
院長は「療養費を扱っている以上、補助金は対象外」と考えており、制度自体を調べていませんでした。
実際の判断ポイント
- 補助金を活用する対象が、「保険施術」ではなく「自由診療向け設備・サービス」であった
- 自由診療メニューの強化・差別化が目的であり、療養費の算定とは直接関係しない内容だった
活用内容(例)
- 自由診療用の施術設備導入
- 自費メニュー専用の説明資料・導線整備
- 一部、事業内容の周知としてWeb関連費用を補助対象に含めた
ポイント解説
「保険を扱っている=一切不可」ではなく、補助金を使う“対象事業”が何かを切り分けて説明できたことが採択につながりました。
CASE 02
美容・エステサロンは補助金と無縁? と思い込んでいたが活用できた例
事業者概要
- 美容・エステサロン
- 完全自由診療(公的制度収入なし)
当初の誤解
「補助金は製造業やIT企業のもの」「サロンは対象外」という思い込み。
実際の判断ポイント
- サービスの高度化・新メニュー展開という明確な事業計画があった
- 設備投資(美容機器導入)が事業の中心
- Web広告やHP制作は“付随的経費”として位置づけた
活用内容(例)
- 新美容機器の導入
- 新サービス立ち上げに伴う業務フロー構築
- 周知用の最低限のWeb制作費
ポイント解説
近年は「Web関連費用だけ」に補助金を使うことは難しくなっています。
このケースでは、何をする事業なのか(設備・サービス)が明確だったため、補助対象として認められました。
CASE 03
介護・医療系は無理? と思われがちな中で活用できた「IT導入」事例
事業者概要
- 介護福祉施設(デイサービス)
- 主収入:介護報酬
注意点
現在、以下の場合は、原則として制限される補助金が増えています。
- 介護報酬が主収益
- 新たに介護サービスを始めるための補助金活用
それでも活用できた理由
- 補助金の目的が「新たな介護サービス」ではなく「業務効率化・生産性向上」だった
- ITツール導入により、記録業務・請求業務・情報共有の効率化を図る内容だった
活用内容(例)
- 介護記録・勤怠管理・請求ソフトの導入
- 情報共有のデジタル化
ポイント解説
公的制度収入がメインでも、以下の事業の効率化や事業承継などの補助金は、今でも活用できる可能性があります。
- IT導入補助金
- 省力化投資補助金
- 事業承継・M&A関連補助金 など
CASE 04
「昔は使えたと聞いたのに…」自由診療のみの整体院が注意すべきポイント
事業者概要
- 自由診療のみの整体院
- 個人事業主
- 過去に「療養費を扱う接骨院が補助金を使えた」という話を耳にしていた
当初の誤解
「自由診療だから、今でも何でも補助金が使えるはず」という認識。
実際の制度状況確かに過去には、以下のようなケースがありました。
- 療養費を扱う接骨院が既存事業の拡張に補助金を使えた
- 自由診療のみの整体院が、介護報酬を主収益とする機能訓練型デイサービスの立ち上げ時に補助金を活用できた
しかし現在は、
- 公的制度収入につながる新規事業
- 将来的に診療報酬・介護報酬を主収益とする計画
については、原則として制限される補助金が増えています。
今回の判断結果
- 介護保険サービスを前提とする新規事業 → 対象外
- 自由診療の整体サービス高度化 → 対象になり得る
ポイント解説
「昔の成功事例」をそのまま当てはめるのは危険です。
現在の制度では、“収益の性質”と“補助金で行う事業内容”の一致が強く求められています。
CASE 05
Web販促だけで補助金を使おうとして失敗しかけた治療院の例
事業者概要
- 鍼灸・マッサージ院
- 自由診療と療養費を併用
- 新規集客に課題あり
当初の計画
- ホームページ全面リニューアル
- Web広告・SEO対策
→ 補助金を「Web販促費用100%」で活用したい
問題点
近年、多くの補助金では以下のような計画は、対象外であったり、申請しても採択されにくくなっています。
- Web関連費用のみ
- 広告・HP制作が事業の“主目的”
計画の修正内容
- メイン事業:
自由診療向けの新施術サービス・設備導入 - Web関連費用:
新サービスを周知するための“副次的経費”として整理
結果
- 事業の軸が明確になり
- Web費用も一定範囲で補助対象に含めることができた
ポイント解説
補助金は「何をするか」が主、「どう広めるか」は従という考え方が、年々強くなっています。
CASE 06
事業再構築補助金(現:新事業進出補助金)|医療・ヘルスケア事業者でも採択されたケースの共通点
対象制度
- 事業再構築補助金(現:新事業進出補助金)
誤解されやすい点
「医療系は事業再構築補助金の対象外」という認識。
実際の採択傾向
医療・ヘルスケア分野でも、
- 自由診療領域への展開
- 保険外サービスの強化
- 既存事業とは異なる顧客層・提供価値
が明確な場合、採択されている事例があります。
採択事例に共通するポイント
- 公的制度収入からの“脱却”または“依存度低下”が明確
- 新たな事業の収益構造が、診療報酬・介護報酬に依存しない
- 設備投資・体制構築が中心で、Web販促は補助的
注意点
一方で、以下と判断されると、不採択になる可能性が高くなります。仮に採択されても補助金の返還を求められる場合もあります。
- 実質的に保険診療・介護サービスの延長
- 名称だけ変えた事業
制度変更を踏まえた「判断のチェックポイント」
ヘルスケア事業者が補助金を検討する際は、次の点を整理しておく必要があります。
- 現在の収益構造
- 公的制度収入の割合はどの程度か
- 補助金を使う事業内容
- 自由診療・保険外サービスか
- 業務効率化・基盤強化か
- 二重補助と見なされないか
- 既存の制度収入と直結していないか
- Web費用の位置づけ
- 主目的になっていないか
これらを整理せずに「業種だけ」で判断すると、本来使えたはずの補助金を逃すことにもなりかねません。
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まとめ
「うちは対象外だと思っていた」という声の多くは、制度そのものではなく“判断の前提”を誤っていることに原因があります。
確かに近年は、公的制度収入が主となる医療・介護分野で補助金申請が制限されるケースが増えました。
しかし、自由診療・保険外サービスへの取り組みや、業務効率化・IT導入・事業承継といった分野では、今も活用できる補助金は存在します。
また、Web販促費用についても「主目的」にせず、事業の一部として整理することが重要です。
業種や過去の事例だけで判断せず、「自社の収益構造」と「補助金で行う事業内容」を切り分けて考えることが、補助金活用の第一歩になります。
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