前回の記事では、資金繰り支援内容一覧表についてと、実際の資金繰り支援(融資)の現状について触れました。
今回は、実際に資金繰り支援(融資)を考えた時に、情報が多く、どの融資が対象となり、どのように申請していけばいいか、というまとまった資料がなかったことから、「新型コロナウイルス感染症の貸付制度一覧表」にしました(表1)。
※新型コロナウイルス関連情報のまとめは (随時更新)➡
こちら
一覧表を見る前に少しだけ、資金繰り支援(融資)について説明をしておきます。
新型コロナウイルス感染症の影響による貸付制度には、以下の2種類があります。
- 公的金融機関が扱うもの(日本政策金融公庫と商工中金など)
- 民間金融機関が扱うもの(銀行や信用金庫などの民間金融機関が、信用保証協会の保証をつけて扱うもの)
公的機関が扱う融資と民間金融機関が扱う融資制度は異なります。それぞれの融資制度は条件が異なるので、事前に確認をして申込みしましょう。
条件等は違いますが、2つの制度は別枠ですので、資金が足りないのであればどちらからも借りることができます。
なお、今は日本政策金融公庫を筆頭に様々な金融機関の窓口が大変混雑していますので、感染リスクを避けるためにも、以下の配慮を心がけて訪問回数をできるだけ少なくしましょう。
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- 問い合わせは電話やネットで行う
- インターネット申し込みを利用する
- 必要書類は事前に漏れがないように揃える
- 面談の際には、事前予約をとり突然訪問しない
表1:新型コロナウイルス感染症の貸付制度一覧表(経営治療コンサルティング作成)
感染症特別貸付制度 |
公的機関が扱う融資 |
信用保証制度*¹による融資 |
機関 |
日本政策金融公庫 |
商工中金 |
民間金融機関(銀行・信用金庫) |
融資制度 |
セーフティーネット貸付
(経営環境変化対応資金) |
新型コロナウイルス感染症特別貸付 |
新型コロナウイルス対策マル経融資(拡充) |
危機対応融資 |
セーフティーネット保証4号 |
セーフティーネット保証5号 |
危機関連保証 |
概要 |
社会的・経済的環境などの外的要因により、一時的に売上が減少するなど、業況が悪化している方向けの融資 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、一時的に業況悪化を来している方を対象とした融資 |
商工会議所や商工会などの経営指導を受けている小規模事業者の商工業者が、経営改善に必要な資金を無担保・無保証人でご利用できる制度 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、一時的に業況悪化を来している方を対象とした融資 |
各都道府県に存在する保証協会が全面的に保証をすることで、民間の融資を後押しするという仕組み
■借入債務の100%を信用保証協会が保証 |
各都道府県に存在する保証協会が全面的に保証をすることで、民間の融資を後押しするという仕組み
■借入債務の80%を信用保証協会が保証 |
セーフティネット保証枠と併せて、最大5.6億円の信用保証別枠を確保
■借入債務の100%を信用保証協会が保証 |
条件 |
売上減少:不問
その他 |
売上減少:5%
その他 |
売上減少:5%
その他:業歴1年以上の小規模事業者で、商工会議所の経営指導員の指導を受けた事業者が対象 |
売上減少:5%
その他:商工中金の株主である中小企業の組合へ加入が必要 |
売上減少:20%
その他:3か月以上継続して事業を行っていること |
売上減少:5%
その他:3か月以上継続して事業を行っていること、特定738業種に該当 |
売上減少:15%
その他:3か月以上継続して事業を行っていること |
売上減少の基準 |
■業歴1年1ヶ月以上:最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している方
■業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合:最近1ヵ月の売上高が次のいずれかと比較して5%以上減少している方
(1)過去3ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高
(2)令和元年12月の売上高
(3)令和元年10月から12月の平均売上高 |
■業歴1年1ヶ月以上:最近1ヵ月の売上高と、前年同月を比較+その後2ヶ月間(見込み)を含む3ヶ月の売上高と前年同期を比較
■業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合:最近1ヶ月の売上高と次のいずれかと比較
(1)最近1ヶ月を含む最近3ヶ月間の平均売上高等を比較
(2)令和元年12月の売上高等を比較+その後2ヶ月間(見込み)を含む3ヶ月の売上高等と令和元年12月の売上高等の3倍を比較
(3)令和元年10~12月の平均売上高等を比較+その後2ヶ月間(見込み)を含む3ヶ月の売上高等と令和元年10~12月の3ヶ月を比較 |
融資限度額 |
国民事業4,800万円
中小事業:7.2億円 |
国民事業6,000万円(別枠)
中小事業:3億円(別枠) |
1,000万円(別枠) |
3億円(別枠) |
2.8億円(別枠) |
2.8億円(別枠) |
2.8億円(別枠) |
返済期間 |
国民事業・中小事業
設備資金:15年以内
運転資金:8年以内 |
国民事業・中小事業
設備資金:20年以内
運転資金:15年以内 |
小規模事業者
設備資金:10年以内
運転資金:7年以内 |
設備資金:20年以内
運転資金:15年以内 |
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据置期間 |
3年以内 |
5年以内 |
設備資金:4年以内
運転資金:3年以内 |
5年以内 |
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金利 |
基準利率 |
基準利率-0.9%
※当初3年間(国民事業3000万円、中小事業:1億円が限度) |
特別利率F-0.9%(別枠の1,000万円以内)
※当初3年間 |
商工中金所定の利率
※当初3年間(残高1億円まで) |
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保証人・担保 |
応相談 |
無担保 |
無担保・無保証 |
無担保 |
無担保・無保証 |
無担保・無保証 |
無担保・無保証 |
利子補給制度対象*² |
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〇 |
〇 |
〇 |
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信用保証付き融資における
保証料・利子減免*³ |
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〇 |
〇 |
〇 |
必要書類 |
新型コロナウイルス感染症特別貸付【法人】
□借入申込書(インターネット申込の場合は、代わりに受付確認受信メールのコピー):公庫のHPからDL(表裏):本人直筆、お申込金額に借り換えを含む場合はその額も含む、国民生活事業と中小企業事業で申込書が異なる
□売上減少の申告書
□最近2期分の確定申告書・決算書(BS・PL・勘定科目明細書)の一式コピー
□履歴事項全部証明書か登記簿謄本(発効から3ヶ月以内の原本)
□商売の概要(初めて公庫を利用する方)、創業間もない方は創業計画書
□運転免許証かパスポートのコピー
□許認可証のコピー
【個人事業主】
□借入申込書(インターネット申込の場合は、代わりに受付確認受信メールのコピー)
□売上減少の申告書
□最近2期分の申告決算書(青色は青色申告決算書、白色は収支内訳書)の一式コピー
□商売の概要(初めて公庫を利用する方)、創業間もない方は創業計画書
□運転免許証かパスポートのコピー
□許認可証のコピー
※あとからエビデンスとして売上を証明する資料の提出を求められることもあるので、必ず正確な金額を申告。 |
□借入申込書
□新型コロナウイルス感染症特別貸付の他機関の利用の有無について(証明書)
□ 商業登記簿謄本(写): 履歴事項全部証明書(コピー)、取引開始時には原本
□決算書(写): 直近決算期 3 期分、納税申告書、別表、科目明細一式の添付
※個人事業主の方の場合は、確定申告書(直近3期分)
□直近の売上高が把握できる資料:試算表、売上帳等(比較が可能な前年又は前々年の同種の資料も)
□その他:会社概要、事業に必要な許認可証(写)、収支計画書、資金繰り表、商流図、仕入・販売
実績、金融機関別取引状況表、代表者の個人の略歴書、資産・負債状況など
※あとからエビデンスとして売上を証明する資料の提出を求められることもあるので、必ず正確な金額を申告。 |
セーフティーネット保証の認定(自治体)□認定申請調書1部
□認定申請書2部
□登記簿謄本(3か月以内に発行された原本)
□確定申告書・決算書(個人事業主の場合は確定申告書(税務署受付印のあるもの)のコピー)
□売上高確認書類
□直近1か月間の売上高等がわかるもの(月次試算表、総勘定元帳、売上台帳など)
□前年同期の売上額等がわかるもの(法人事業概況説明書(税務署の受付印のあるもののコピー)、月次試算表など)
□1年以上事業を行っていることがわかるもの(事業所の賃貸借契約書のコピー等)
□代理申請の場合は委任状※自治体により異なるため、対象エリアの自治体のHPを確認
※あとからエビデンスとして売上を証明する資料の提出を求められることもあるので、必ず正確な金額を申告。 |
申請フロー |
事業を営むエリアの支店かお取引のある支店
➀インターネット申込み
➁申請書類の作成(HPからDL)
➂必要書類郵送
➃日本公庫から面談の連絡
➄面談(資金の使い道や事業の状況を話す、営業状況等が分かる書類を準備)
➅審査
➆融資 |
事業を営むエリアの支店
➀電話にて問い合わせ
➁申請書類の作成(HPからDL)
➂面談の予約(電話)
➃面談(申込み)
➄審査
➅融資 |
自治体(市区町村)➡金融機関➡信用保証協会➡金融機関
➀対象エリアの自治体のHPから認定書類をDL
➁認定書類の作成
➂認定申請の面談予約(電話)
➃面談(必要書類を添えて、市区町村へ認定申請)
➄認定
➅金融機関へ保証付融資の申込み(取得した認定書を添えて、金融機関へ保証付融資の申込み)
➆信用保証協会による保証審査(申込内容に基づいて審査)
➇保証付融資の実行(保証付融資の実行を金融機関が行う) |
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*²:特別利子補給制度 |
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*¹:信用保証制度 |
*³:保証料・利子減免 |
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令和2年度補正予算の成立が前提となります!
日本政策金融公庫等の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」、「新型コロナウイルス対策マル経融資」等若しくは商工中金等による「危機対応融資」により借入を行った中小企業者等のうち、売上高が急減した事業者などに対して、利子補給を実施。公庫等の既往債務の借換も実質無利子化の対象に。
【適用対象】
日本政策金融公庫等の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」、「新型コロナウイルス対策マル経融資」若しくは商工中金等による「危機対応融資」により借入を行った中小企業者のうち、以下の要件を満たす方
①個人事業主(事業性のあるフリーランス含み、小規模に限る):要件なし
②小規模事業者(法人事業者) :売上高▲15%減少
③中小企業者(上記➀➁を除く事業者):売上高▲20%減少
※小規模要件
・製造業、建設業、運輸業、その他業種は従業員20名以下
・卸売業、小売業、サービス業は従業員5名以下
【利子補給】
・期間:借入後当初3年間
・補給対象上限:(日本公庫等)中小事業1億円、国民事業3,000万円
(商工中金)危機対応融資1億円
※利子補給上限額は新規融資と公庫等の既往債務借換との合計金額
※国民事業における利子補給上限金額は、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」、「新型コロナウイルス対策マル経融資」、「生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付」および「新型コロナウイルス対策衛経」との合計で3,000万円となります。 |
信用保証制度とは、中小企業や小規模事業者が、信用保証協会の「信用保証」を得て、金融機関から融資を受ける仕組み。やむをえぬ事情により、借主である中小企業が借入金を返済できなくなったときには、信用保証協会が代位弁済をします。 |
令和2年度補正予算の成立が前提となります!
都道府県等による制度融資を活用して、民間金融機関にも実質無利子・無担保・据置最大5年・保証料減免の融資を拡大。さらに、信用保証付
き既往債務も制度融資を活用した実質無利子融資に借換可能。
【対象要件】
SN4号・5号・危機関連保証の適用要件と連動した売上高等の減少を満たせば、保証料補助と利子補給を実施。
①個人事業主(事業性のあるフリーランス含む、小規模に限る)
・・・売上高等前年同月比▲5%以上減少で保証料ゼロ+金利ゼロ
②小・中規模事業者(①除く)
・・・売上高等前年同月比▲5%以上減少で保証料1/2
・・・売上高等前年同月比▲15%以上減少で保証料ゼロ+金利ゼロ
【融資上限】3000万円 【担保】無担保
【据置期間】5年以内
【保証料補助割合】 1/2 または 10/10
【金利補給期間】当初3年間、4年目以降は制度融資所定金利
【既往債務の借換】
信用保証付き既往債務も対象要件を満たせば、制度融資を活用した実質無利子融資への借換が可能。 |
※弊社の主なコンサルティング事業の対象でないことから、生活衛生関係事業を対象とした融資を除いてあります。(日本政策金融公庫で生活衛生関係事業を対象とした融資があります)
このように、融資制度ごとの内容、売上減少要件・基準、用意する書類、申請の順序を、確認・比較できるようになっています。
それでは、この一覧表の内容である、1.公的機関が扱う融資と2.民間金融機関が扱う融資について以下で説明していきます。
1.公的金融機関が扱うもの(日本政策金融公庫と商工中金など)
政府系金融機関はいくつかありますが、中小企業向けは日本政策金融公庫(日本公庫)と商工組合中央金庫(商工中金)です。
コロナ関連の融資制度として、日本政策金融公庫の「セーフティネット貸付」「新型コロナウイルス感染症特別貸付」「新型コロナウイルス対策マル経融資」と、商工中金の「危機対応融資」。そして、これらを補完するために「特別利子補給制度」が創設されています。
日本公庫は、銀行と違い融資をするだけの金融機関であるため、決済業務などは行っておらず、通帳はありません。
また、独自の判断に基づき融資できるので、保証協会の保証も必要ありません。さらに、設立第一期(まだ決算を一度もやったことのない生まれたて)の会社にも融資をしてくれます。
商工中金は、以前は100%日本政府出資で運営していましたが、現在は株式会社化され、民間と日本政府の共同出資で運営されています。
「セーフティネット貸付」については、基準金利の減額もなく「特別利子補給制度」の適用もないため、今の状況で優先して利用する方はほとんどいません。
「新型コロナウイルス対策マル経融資」ですが、商工会議所の経営指導員の指導を受けた事業者が対象であることから、融資までに時間がかかります。
「危機対応融資」については、商工中金の株主である中小企業の組合へ加入が必要であったり、会社規模によって融資のハードルが高くなっています。
このことから、日本公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」に集中しているのが現状です。
仮にほかの融資の要件を満たしていても、金利、返済据置期間、貸付期間などの条件から「新型コロナウイルス感染症特別貸付」が圧倒的に有利となっています。これに「特別利子補給制度」を組み合わせると、実質的な無利子化が可能となります。
次に、日本公庫と商工中金の手続きの流れについて説明していきます。
■日本公庫
申込み(インターネット)➡申請書類をHPからDLして作成➡書類一式を郵送➡窓口にて書類提出➡金融公庫から電話➡面談➡審査➡融資
■商工中金
申請書類をHPからDL➡書類作成➡電話にて面談の予約➡面談(申請書類一式持参)➡審査➡融資
このように進めていくと、どちらも訪問するのは面談時のみで申請できるために、不明な点は電話で確認などして、不用な来店を控えるようにしましょう。
2.民間金融機関が扱うもの(銀行や信用金庫などの民間金融機関が、信用保証協会の保証をつけて扱うもの)
民間金融機関が扱うものは、信用保証制度を利用した融資のことです。
信用保証制度とは、信用保証協会の「信用保証」を得て、金融機関から融資を受ける仕組みです。中小企業が保証協会を利用することで金融機関からの資金調達を円滑に進める制度(図1)。詳しくは以下の図2のような流れで行います。
やむをえぬ事情により、借主である中小企業が借入金を返済できなくなったときには、信用保証協会が代位弁済することになります。
銀行との違いは、保証協会はあくまで「保証」をするだけの機関。対して銀行は、融資に値するかの審査から融資、回収まで全てを行う機関です。
今回の、新型コロナウイルス関連の融資を受ける際には、下記の図1.図2.に自治体と、自治体がおこなうセーフティーネット保証の認定が加わります。
信用保証協会は、金融機関に対し保証割合に応じて借入金を保証しますが、金融機関にとって、今の状況で先行きが見えない会社に融資するとなるとリスクを伴います。そのため、80%保証の5号認定に比べて、100%保証の4号認定のほうが融資しやすいとも考えられます。
大規模な経済危機、災害等による信用収縮への対応として全国・全業種に対して別枠(2.8億円)で借入債務の100%を保証する「危機関連保証」も措置されました。
セーフティーネット保証ですが、保証枠を全額貸してくれるわけではありません。企業の財務状況、コロナ感染拡大による影響額、そして今までの取引状況(融資していないけど預金だけある、という場合は取引先という扱いになっていません)をもとに審査してから融資額が決定されるのです。
ただし、コロナ不況回復後の取引を見据えた新規融資先獲得のために、融資を受け付けるという方針の銀行もあるようなので、諦めずに交渉してみることも大切です。
次に、セーフティーネット保証の手続きの流れについて説明していきます。
図3に地方自治体によるセーフティーネット保証認定が加わります。
■セーフティーネット保証
事前予約(対象エリアの自治体)➡自治体のHPから申請書類をDL➡申請書類作成➡事前予約した自治体の窓口にて面談➡審査➡認定書取得➡金融機関にて面談➡信用保証協会にて面談➡承諾➡金融機関より融資
信用保証制度による民間金融機関の融資は自治体(市区町村)、民間金融機関、信用保証協会との面談を経て融資の審査がおこなわれます。公的金融機関による融資制度に比べて、工程が多いために時間がかかってしまいます。
以上が、実際に資金繰り支援(融資)を考え、実行しようとした時の融資内容と流れになっています。
現状、どこの窓口も混み合っていて、面談まで長いと1か月は時間がかかるところもありますので、融資が必要な事業所は早めに動いて、説得力のある申請書類の準備をしましょう。
難しい融資の内容や方法も、これをみて実際に動きやすくなり、必要な融資を受けれる方が一人でも増えれば良いと思います。
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