※2025/11/1追記:最新の情報にリニューアルしています。
企業経営において高齢化や人材不足が進み、引退したくても「会社の跡継ぎがいない」「社内や家族で後継者が見つからない」「身近にお願いできる人がいない」「誰も名乗りを上げない」と悩む経営者が増えています。
とはいえ、これまで長年にわたって培ってきた「顧客関係やリスト」、「従業員の能力・経験」、「地域における認知」、「情報交換のネットワーク」、「取引先との付き合い」、などの貴重な経営資源を、跡継ぎがいないという理由で放棄するのは、非常に惜しいことです。
そこで、社外に目を向けて後継者を探す事業承継、あるいは事業承継に伴うM&A(合併・買収・組織再編など)が注目されているのです。そうした事業承継に必要となる経費の一部を補助し、ひとつの会社が持つ貴重な経営資源を将来へと繋いでいくのが、「事業承継・M&A補助金」の大切な役割とされています。
また、事業規模が小さい経営者ほど「事業の価値を低く見積もっている」事が多いのですが、上述したような無形の経営資源には大きな価値があるものです。
このことから、本記事では「事業承継・M&A補助金」について説明していきます。
他の補助金と大きく異なるのは、新規事業開始や既存事業の販路・拡大や生産性向上を目的としているものが多い中、引退しようとしている経営者が別の事業者にバトンタッチする事業承継の場面に特化しているのが、事業承継・M&A補助金の特徴です。
事業承継・M&A補助金には、目的によって大きく4つの申請枠(事業承継促進枠、専門家活用枠、PMI推進枠、廃業・再チャレンジ枠)が用意されています。
目次
事業承継・M&A補助金とは?
中小企業庁は2022年5月31日から、事業承継やM&A(事業再編・事業統合等。経営資源を引き継いで行う創業を含む。)を契機とした経営革新等への挑戦や、M&Aによる経営資源の引継ぎ、廃業・再チャレンジを行おうとする中小企業者等を後押しするため、「事業承継・M&A」による支援を実施しています。
「事業承継・M&A補助金」は、事業承継やM&Aに伴う経営資源の引継ぎに要する経費の一部を補助する事業を行うことにより、事業承継やM&Aを促進し、日本経済の活性化を図ることを目的とする補助金です。

事業承継・M&A補助金の概要
2025年度から「事業承継・引継ぎ補助金」は、「事業承継・M&A補助金」に名称を変更して、下表の内容での実施しております。
事業承継・M&A補助金は、「事業承継推進枠」、「専門家活用枠」、「PMI推進枠」、「廃業・再チャレンジ枠」の4申請枠および各類型に分かれており、概要は以下の通りです。
| 枠/型 | 要件 | 補助上限 | 補助率 | 対象経費 |
| 事業承継促進枠 | 5年以内に親族内承継又は従業員承継を予定している者 | 800~1,0000万 | 中小企業1/2 小規模事業者:2/3 | 設備費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費 等 |
| 専門家活用枠 | 補助事業期間に経営資源を譲り渡す、又は譲り受ける者 | ●買い手支援類型:600~800万、2,000万(100億企業要件を満たす場合) ●売り手手支援類型:600~800万 | ●買い手支援類型:1/3・1/2、2/3 ●売り手支援類型:1/2・2/3 | 謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料 |
| PMI推進枠 | M&Aに伴い経営資源を譲り受ける予定の中小企業等に係るPMIの取り組みを行う者 | ●PMI専門家活用類型:150万 ●事業統合投資類型:800~1,000万 | ●PMI専門家活用類型:1/2 ●事業統合投資類型:1/2・2/3 | 設備費、外注費、委託費等 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 事業承継やM&Aの検討・実施等に伴って廃業等を行う者 | 150万 | 1/2・2/3 ※事業承継促進枠、専門家活用枠、事業統合投資類型と併用申請する場合は、各事業における事業費の補助率に従う | 廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費用(併用申請の場合のみ) |
それでは、それぞれの申請枠および類型について詳細を見ていきましょう。
事業承継促進枠
-.jpg)
事業承継促進枠の概要
目的・特徴
事業承継促進枠は、治療院・クリニック・サロンの事業を次世代へ引き継ぐ際に、後継者主導で生産性を高めるための設備投資を支援する制度です。
親族内承継や従業員承継などを予定している後継者が中心となり、これまで培ってきた技術・顧客基盤・運営ノウハウを活かしながら、将来に向けた事業強化に取り組むことを目的としています。
この申請枠の大きな特徴は、「事業承継」と「経営改善・生産性向上」を同時に進められる点にあります。
代表交代・変更を見据えたタイミングで、後継者が主体となって設備更新、施術環境の改善、自費サービス強化などに取り組むことで、承継後も安定して成長できる体制づくりが可能です。
特に、自費診療・自費施術・物販・サブスク型サービスなど、保険収入以外の売上を軸とした事業であれば補助対象となりやすく、最大2/3補助・最大1,000万円まで支援を受けられる点も魅力です。
医療報酬・介護報酬が主となる事業は対象外となる場合があるため、自費事業や別事業としての位置づけが重要です。
こんな方におすすめ
- 親族やスタッフへの事業承継を数年以内に検討している
- 後継者が中心となり、設備更新や施術環境の改善を進めたい
- 承継を機に、古い運営体制や非効率な業務を見直したい
- 診療報酬・介護報酬とは切り分けた事業(自費部門・付帯事業等)での活用を検討している方
補助対象者
本補助事業の補助対象者は、以下の1.~15.の要件を満たし、かつ後述する「要件」を満たす中小企業者等となります。
- 日本国内に拠点又は居住地を置き、日本国内で事業を営む者であること。
- 補助対象者は、地域経済に貢献している中小企業者等であること。地域の雇用の維持、創出や地域の強みである技術、特産品で地域を支える等、地域経済に貢献している(又は貢献する予定の)中小企業者等であること。
- 補助対象者又はその法人の役員が、暴力団等の反社会的勢力でないこと。また、反社会的勢力との関係を有しないこと。なお、反社会的勢力から出資等の資金提供を受けている場合も対象外とする。
- 補助対象者は、法令遵守上の問題を抱えていないこと。
- 補助対象者は、補助事業完了後の事業化状況報告等を期限までに提出すること。
- 補助対象者は、本公募要領等に違反しないこと。
- 補助対象者は、事務局から質問及び追加資料等の依頼があった場合は適切に対応すること。
- 補助対象者は、事務局が必要と認めるときは、事務局が補助金の交付申請ほか各種事務局による承認及び結果通知に係る事項につき修正を加えて再度通知することに同意すること。
- 補助対象者は、補助金の返還等の事由が発生した際、申請その他本補助金の交付にあたり負担した各種費用について、いかなる事由においても事務局が負担しないことについて同意すること。
- 補助対象者は、経済産業省及び独立行政法人中小企業基盤整備機構から補助金指定停止措置又は指名停止措置が講じられていないこと
- 補助金申請時・利用時・事業報告提出時等に提供いただいた全ての情報は、中小企業庁関連事業データ利活用ポリシーに則り、効果的な政策立案や経営支援等(申請者への各種情報提供、支援機関による個社情報閲覧等)のために、行政機関(中小企業庁・経済産業省)やその業務委託先、独立行政法人、大学その他の研究機関、施設等機関に提供・利用され、かつ、支援機関からのデータ開示依頼に対して申請者の承認があれば支援機関にも提供される場合があるため、補助対象者は本申請を行うことにより、本データ利用に同意すること。
- 公募申請時点から過去18ヵ月の間において、中小企業庁が所管するその他補助金に申請した内容について、賃上げ加点の要件等が未達成の場合、正当な理由が認められない限り大幅に減点されることを了承した上で申請すること。
- 事務局が求める補助対象事業に係る調査やアンケート等に協力できること。
- 過去の「経営資源引継ぎ補助金」又は「事業承継・引継ぎ補助金」の補助金受給者においては、期日までに事業化状況報告を適切に実施していること。
- 【補助率に関する補助対象者の要件】補助対象者が中小企業基本法上の小規模企業者に該当する場合においては、補助率を2/3以内とする。(該当しない場合は、補助率は1/2以内とする。)
中小企業基本法上の小規模企業者
| 業種分類 | 定義 |
|---|---|
| 製造業その他 | 従業員数が20人以下の会社・個人事業主 |
| 商業・サービス業 ※商業=卸売業・小売業 | 従業員数が5人以下の会社・個人事業主 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 従業員数が20人以下の会社・個人事業主 |
対象となる中小企業者等
中小企業基本法第 2 条に準じて、本補助金において以下のとおり中小企業者等を定義しています。
| 業種分類 | 定義 |
|---|---|
| 製造業その他 | 資本金の額又は出資の総額が 3 億円以下の会社 又は常時使用する従業員の数が 300 人以下の会社及び個人事業主 |
| 卸売業 | 資本金の額又は出資の総額が 1 億円以下の会社 又は常時使用する従業員の数が 100 人以下の会社及び個人事業主 |
| 小売業 | 資本金の額又は出資の総額が 5 千万円以下の会社 又は常時使用する従業員の数が 50 人以下の会社及び個人事業主 |
| サービス業 | 資本金の額又は出資の総額が 5 千万円以下の会社 又は常時使用する従業員の数が 100 人以下の会社及び個人事業主 |
補助対象となる事業要件
事業承継の要件
(1)承継予定者の要件
承継予定者は、以下のいずれかに該当することが確認できる者とされている。
① 法人の場合
次のいずれかを満たすこと。
- 対象会社の会社法上の役員として3年以上の経験を有する者
- 対象会社に継続して3年以上雇用され、業務に従事した経験を有する者
- 対象会社の役員経験および雇用され業務に従事した経験を通算して3年以上有する者
- 被承継者の親族であり、かつ対象会社の代表経験がない者
② 個人事業主の場合
次のいずれかを満たすこと。
- 個人事業に継続して3年以上雇用され、業務に従事した経験を有する者
- 被承継者の親族であること
- ただし、過去に承継対象事業の代表経験がない者に限る
(2)事業承継の要件
本補助金における事業承継は、以下のすべての要件を満たす必要がある。
1.対象事業の経過年数に関する要件
- 対象会社は、公募申請時点で3期分の決算および申告が完了していること。
- ただし、開業後に法人成りし、法人成りから3年が経過していない場合であっても、開業からの通算年数が5年以上経過していれば要件を満たす。
- 個人事業主の場合、「個人事業の開業届出書」および「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出した日から5年が経過していること。
2.事業承継の形態に関する要件
- 同一法人または同一事業内において、代表者交代による親族または従業員への事業承継が予定されていること。
- 事業承継後に複数代表となる場合は対象外とする。
3.後継者(承継予定者)に関する要件
- 公募申請時点で、将来の経営者となることが十分に見込まれる後継者(承継予定者)が選定されていること。
- 承継予定者は、当該法人に在籍していること、または事業に雇用されていること。
4.事業承継の完了時期と蓋然性
- 公募申請期日から5年後まで(事業承継対象期間)に事業承継を完了する計画であること。
- その事業承継の蓋然性が高いことについて、認定経営革新等支援機関による確認を受けた計画書であること。
5.未達成時の取扱い
- 補助事業期間終了後の事業化状況報告において、事業承継対象期間内に承継が完了していないことが判明した場合、交付された補助金は返還対象となる。
- ただし、事業者の責めに帰することができない事由がある場合はこの限りではない。
対象事業の要件
事業承継対象期間中に実施予定の事業承継に際し、承継予定者を中心として行われ、生産性向上等に係る取組が求められる。
① 補助対象となる事業の基本要件
以下は、中小企業者等である被承継者から事業を引き継ぐ、承継予定者(中小企業者等)による取組であり、次のすべてを満たすことが確認できる必要がある。
- 承継予定者が主導して取り組む事業であること
- 承継予定の中小企業者等における事業であること
事業計画期間(5年間)において、法人または事業の存続を前提としていること - 承継予定の中小企業者等が有する経営資源を有効活用した事業であること
② 生産性向上要件
補助事業期間を含む5年間の補助事業計画において、以下の要件を満たす計画であること。
- 生産性向上要件として、「付加価値額」または「1人当たりの付加価値額」の年率3%以上の向上を含む計画であること
- 付加価値額は、営業利益+人件費+減価償却費の合計とする。
- 生産性向上要件の達成状況は、補助事業終了後の事業化状況報告等により、事務局が進捗確認を行う。
③ 補助対象外となる事業
補助対象事業は、以下のいずれにも該当しないこと。
- 公序良俗に反する事業
- 公的資金の使途として社会通念上不適切と判断される事業
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条に規定される各営業を含む
- 国(独立行政法人を含む)の他の補助金・助成金等を活用する事業
補助対象外に関する注意点
以下に該当する場合は補助対象とならず、交付決定後であっても取消しとなる場合がある。
- 国(独立行政法人等を含む)が助成する他制度(補助金・委託事業等)と、同一または類似内容の事業であり、重複して採択または交付が見込まれる場合
- 他制度との重複申請が認められる場合であっても、同一の補助対象経費について、自己負担分を超えて交付を受けている、または受ける見込みがある場合
- 公的医療保険・介護保険の診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等との重複がある場合
公的医療保険及び介護保険からの診療報酬及び介護報酬、固定価格買取制度等(以下、「報酬事業等」という。)との重複がある場合において、指定保険医療機関・保険薬局等に該当しないことを明示し、補助対象となる設備等が報酬事業等とは別の事業において活用されることを明確に示す必要があります。
補助対象経費
補助対象事業を実施するために必要となる経費のうち、以下の1.~3.の全ての要件を満たすものであって、事務局が必要かつ適切と認めたものが補助対象経費となります。
- 使用目的が補助対象事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
- 補助事業期間内に契約・発注を行い支払った経費
- 補助事業期間終了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額・支払い等が確認できる経費
| 費目名 | 概要 | |
| 事業費 | 設備費 | 国内の店舗・事務所等の工事、国内で使用する機械器具等調達費用 |
| 産業財産権等関連経費 | 補助対象事業実施における特許権等取得に要する弁理士費用 | |
| 謝金 | 補助対象事業実施のために依頼した専門家等に支払う経費 | |
| 旅費 | 販路開拓等を目的とした国内外出張に係る交通費、宿泊費 | |
| 外注費 | 業務の一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経費 | |
| 委託費 | 業務の一部を第三者に委託(委任)するために支払われる経費 | |
| 廃業費 | 廃業支援費 | 廃業に関する登記申請手続きに伴う司法書士等に支払う作成経費 |
| 在庫廃棄費 | 既存の事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費 | |
| 解体費 | 既存事業の廃止に伴う建物・設備等の解体費 | |
| 原状回復費 | 借りていた設備等を返却する際に義務となっていた原状回復費用 | |
| リースの解約費 | リースの解約に伴う解約金・違約金 | |
| 移転・移設費用 | 効率化のため設備等を移転・移設するために支払われる経費 |
※廃業費は廃業・再チャレンジ申請と併用申請した場合のみ補助対象経費となるため注意すること。
※商品在庫等を売却して対価を得る場合の処分費は、補助対象経費とならないため注意すること。
※ファイナンスリース取引の解約に伴う解約金・違約金、リース資産の売買に係る費用は補助対象経費とならないため注意すること。
補助上限額・補助率等
補助対象者に交付する補助額は補助対象経費の 3 分の 2 以内であって、以下のとおりとなります。
※ 補助金の交付は補助対象事業完了後の精算後の支払い(実費弁済)
| 枠 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限 | 上乗せ額(廃業費) |
| 事業承継促進枠 | 補助対象経費の2/3または1/2以内 ※小規模企業者に該当する場合は補助率2/3 | 100万円 | 800万円または1,000万円以内 ※賃上げを達成した場合に1,000万円 | +150万円以内 |
補助上限額の変更に関する賃上げ要件
事事業承継促進枠では、補助事業期間終了時に、公募申請時と比較し事業場内最低賃金 +50 円以上となる賃上げを達成することで、補助上限額が 800 万円以内から 1,000 万円以内へと引き上げられます。
各要件と、補助上限額及び補助率の整理
補助上限額および補助率については、必要に応じて下表でご確認ください。
| 区分 | 【条件】 小規模事業者 | 【条件】 賃上げの実施 | 補助上限額 | 補助額 | 補助率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 事業費 | 該当 | 実施 | 1,000万 | 800万円超~1,000万円相当部分 | 1/2以内 |
| ~800万円相当部分 | 2/3以内 | ||||
| 実施しない | 800万 | - | 2/3以内 | ||
| 該当しない | 実施 | 1,000万 | 600万円超~800万円相当部分 | 1/2以内 | |
| ~600万円相当部分 | 1/2以内 | ||||
| 実施しない | 800万 | - | 1/2以内 | ||
| 廃業費 (併用時) | - | - | 150万 | - | 事業費に従う (1/2又は2/3以内) |
専門家活用枠
(買い手支援類型、売り手支援類型)
-.jpg)
専門家活用枠の概要
目的・特徴
専門家活用枠は、治療院・クリニック・サロンの事業承継・M&Aを、専門家のサポートを受けながら安心して進めるための補助制度です。
事業承継やM&Aでは、
- 「本当にこの条件で良いのか」
- 「後からトラブルにならないか」
- 「契約書の内容がよく分からない」
といった不安がつきものです。
専門家活用枠では、M&A仲介会社やファイナンシャルアドバイザー(FA)、士業などの専門家に支払う費用の一部が補助対象となるため、自己負担を抑えながら、適切な判断を行うことができます。
特にヘルスケア業界は、患者対応・スタッフ雇用・資格者管理など特有の事情があるため、業界に理解のある専門家を活用できる点が大きなメリットです。
こんな方におすすめ
- 将来を見据えて、治療院・クリニック・サロンの事業承継や売却を検討している方
- 後継者不在のため、第三者への承継(M&A)を考え始めた方
- 他院・他店舗を引き継いで、多店舗展開や事業拡大を検討している方
- M&Aに詳しい専門家に相談しながら、失敗リスクを抑えて進めたい方
- 仲介会社や専門家に依頼したいものの、費用面がネックになっている方
- 「何から始めればいいのか分からない」という段階の方
支援類型
➀ 買い手支援類型(Ⅰ型)-引き継ぐ側
買い手支援類型は、他の治療院・クリニック・サロンを引き継ぐ側(買収・譲受する側)の事業者を対象とした支援です。
例えば、
- 廃業予定の院・店舗を引き継ぎ、患者さん(顧客)やスタッフをそのまま承継したい
- 近隣の院・店舗を引き継ぎ、体制を強化したい
- 分院展開・事業拡大の一環としてM&Aを活用したい
といったケースが該当します。
M&Aを進める際には、
事業内容・契約関係・財務状況などを専門家が確認する必要がありますが、
これらにかかる専門家費用が補助対象となるため、安心して次の成長戦略に踏み出せる点が特徴です。
➁ 売り手支援類型(Ⅱ型)-引き継いでもらう側
売り手支援類型は、治療院・クリニック・サロンを譲り渡す側(売却・承継する側)の事業者を対象とした支援です。
例えば、
- 後継者がいないため、第三者に事業を引き継ぎたい
- 高齢化や体力面の不安から、院を第三者に引き継ぎたい
- 将来の引退を見据えて、早めに事業承継を進めたい
- スタッフや患者さん(顧客)を守りながら、円滑に廃業・承継したい
といった方に向いています。
専門家のサポートを受けながらM&Aを進めることで、
条件整理や契約内容の確認、交渉の負担を軽減でき、
代表者自身の精神的・実務的な負担を抑えつつ、
患者(顧客)・スタッフ・地域に配慮した形で事業承継を実現できる点が特徴です。
「買い手支援類型(I型)100億企業特例」については、本記事では割愛しています。
補助対象者
事業承継促進枠の補助対象者 1.~13. に加えて、以下も満たす必要があります。
- ファイナンシャルアドバイザー(以下、「FA」という)・M&A 仲介費用を補助対象経費とする場合は、補助事業対象者の内容について、「M&A 支援機関登録制度」に登録された登録 FA・M&A 仲介業者により、M&A 支援機関登録制度事務局に対し実績報告がなされることに同意すること。
- 「M&A 支援機関登録制度」に登録された FA・仲介業者又は FA・仲介業者(法人)の代表者が、補助対象者又は補助対象者(法人)の代表者と同一でないこと。
- 過去の「経営資源引継ぎ補助金」又は「事業承継・引継ぎ補助金」の補助金受給者においては、期日までに事業化状況報告を適切に実施していること。
補助対象となる事業およびM&Aの要件
補助対象となるM&Aの基本的な考え方
M&Aとは、合併・会社分割などの会社法上の組織再編に加え、株式譲渡や事業譲渡を含む、事業の引継ぎ(譲り渡し・譲り受け)を指します。
補助対象となるM&Aは、以下の要件を満たしたうえで、補助事業期間内に被承継者(譲り渡す者)と承継者(譲り受ける者)の間で、
- 事業再編・事業統合が着手および実施される予定であること
または - 廃業を伴う事業再編・事業統合等が行われる予定であること
とし、公募要領に定める「M&A形態に係る区分整理」の形態に該当するものが対象となります。
なお、実質的な事業再編・事業統合が行われていないと事務局が判断した場合は補助対象外となります。
廃業を伴う場合の要件
- 事業の一部廃業の場合は、補助事業期間内に当該一部廃業が行われ、設備撤去等の実施事実が実績報告時に確認できること。
- 廃業費については、補助事業期間内に廃業に関連する事業再編・事業統合が行われる予定であること。
補助対象事業の類型別要件
①買い手支援型においては以下の 2 点を満たすこと
- 経営資源を譲り受けた後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること。
- 経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること。
- M&Aの検討・成立後のトラブル防止・PMIに資する観点から、デュー・ディリジェンス(DD)を実施すること
(補助対象経費への計上有無は問わないが、実施証憑の提出は求められる)
②売り手支援型においては以下の点を満たすこと
- 地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。
補助対象とならない事業
- 公序良俗に反する事業
- 公的な資金の使途として社会通念上、不適切であると判断される事業(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和 23 年法律第 121 号)第 2 条において規定される各営業を含む)
- 国(独立行政法人を含む)及び地方自治体の他の補助金、助成金を活用する事業
※ 同一の補助対象経費に対して国(独立行政法人を含む)及び地方自治体の他の補助金、助成金の交付を受けている、又は受ける見込みである場合は対象外
補助対象経費
補助対象事業を実施するために必要となる経費のうち、以下の1.~3.の全ての要件を満たすものであって、事務局が必要かつ適切と認めたものが補助対象経費となります。
- 使用目的が補助対象事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
- 補助事業期間内に契約・発注を行い支払った経費
- 補助事業期間終了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額・支払い等が確認できる経費
| 類型 | 補助対象経費の区分 |
| 買い手支援類型(Ⅰ型) | 謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料、廃業費:廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費用 |
| 売り手支援類型(Ⅱ型) |
補足
- M&A マッチングサイト等プラットフォーマーが提供するサイトを利用した際の登録料、利用料、成約手数料はシステム手数料に区分します。 ただし、プラットフォーマーが付加的に提供する FA 又は仲介業務に関するサービスについては、委託費に区分して整理します。
- 保険料は、M&A 当事者間で交わされる最終合意契約に規定される表明保証条項に関して、事後的に当該表明保証条項違反が判明することに起因して発生する損害等を補償目的とする保険契約等に係る保険料に関するものが対象となります。 ・買い手支援類型(Ⅰ型):買い手手配の表明保証保険に係る保険料 ・売り手支援類型(Ⅱ型):売り手手配の表明保証保険に係る保険料 ※同一成約事案に対して買い手及び売り手が重複加入とならないようにすることが必要
- 商品在庫等を売却して対価を得る場合の処分費は、補助対象経費とならないため注意すること。
- ファイナンスリース取引の解約に伴う解約金・違約金、リース資産の売買に係る費用は補助対象経費とならないため注意すること。
委託費について
委託費のうち、FA・M&A 仲介費用については、「M&A 支援機関登録制度」に登録された登録 FA・M&A 仲介業者による FA 又は M&A 仲介費用のみが補助対象経費となります。
M&A登録支援機関
登録 FA・M&A 仲介業者については、中小企業庁 HP 又は M&A 支援機関登録制度事務局 HP において公表されているため、補助対象事業において FA 又は M&A 仲介業者の利用を検討する場合は必ず参照してください。
※「M&A 支援機関登録制度」に登録された FA・M&A 仲介業者かの要件確認は、実績報告提出時
(参考 URL):https://ma-shienkikan.go.jp/
中間報酬、成功報酬について
委託費のうち、FA・M&A 仲介費用の基本合意に基づく「中間報酬」については、補助事業期間内に以下 A 又は B を行い、補助事業期間内に支払った経費が補助対象経費となります。
また、FA・M&A 仲介費用の最終契約に基づく「成功報酬」については、補助事業期間内に以下 A 又は C を行い、補助事業期間中に支払った経費が補助対象経費となります。
なお、2022 年 3 月 31 日前に締結した FA・M&A 仲介業者との委任契約に専任条項*¹があり、相見積を取得することが FA・M&A 仲介業者との契約上困難な場合は、当該補助対象経費について、相見積の取得は不要となります。
- 選任専門家と契約書を締結
- 交渉相手と中間報酬について定めのある基本合意書を締結(意向表明書は不可)
- 交渉相手と成功報酬について定めのある最終契約書を締結
(※1)専任条項とは、FA・M&A 仲介業者との委任契約の内容において、並行して他の M&A 専門業者への業務依頼を行うことを禁止する条項のこと。なお、中小 M&A ガイドラインでは専任条項の対象範囲を無限定にすることは推奨していないため留意してください。
補助上限額・補助率等
補助対象者に交付する補助額は補助対象経費の 3 分の 2 以内であって、以下のとおりとなります。
※ 補助金の交付は補助対象事業完了後の精算後の支払い(実費弁済)
| 類型 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限 | 上乗せ額 (デュー・ディリジェンスに係る費用) | 上乗せ額(廃業費) |
|---|---|---|---|---|---|
| 買い手支援類型(Ⅰ型) | 補助対象経費の2/3以内 | 50万円 | 600万円以内 ※補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合は300万円以内 | +200万円以内 | +150万円以内 ※補助事業期間内に実現しなかった場合は対象外 |
| 売り手支援類型(Ⅱ型) | 補助対象経費の1/2または2/3以内 ※「売り手支援型の補助率に関して」下記参照 |
売り手支援類型の補助率に関して(売り手支援類型の補助率の特例)
以下1.2.のいずれかに該当する場合は、補助率が 2/3 以内となります(該当しない場合は1/2 以内)。
- 物価高等の影響により、営業利益率が低下している者
―具体的には、直近の事業年度(申告済み)及び交付申請時点で進行中の事業年度において、
(1)直近の事業年度(申告済み)と 2 期前の事業年度(通年)
(2)直近の事業年度(申告済み)及び交付申請時点で進行中の事業年度のうち、それぞれ任意の連続する 3 か月(当該期間の前年度同時期)の平均
上記(1)(2)のそれぞれの期間における営業利益率を比較した場合に、低下していること。 - 直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の者
PMI推進枠
-.jpg)
PMI促進枠の概要
目的・特徴
PMI促進枠は、治療院・クリニック・サロンのM&Aや事業承継が完了した「その後」を支援する補助枠です。
M&Aは契約が成立して終わりではなく、
- スタッフの雇用条件や役割・体制はどうするか
- 予約管理・カルテ・会計・レセプト・顧客管理の仕組みをどう統一するか
- 院・店舗ごとの運営ルール・サービス内容などの方針をどう整理するか
といった 「統合後の運営(PMI)」 がうまく進まなければ、
現場の混乱や生産性低下につながってしまいます。
PMI促進枠では、
M&A後の治療院・クリニック・サロン運営を安定させ、事業の成長につなげるための取組を、
「専門家の支援」や「事業統合に必要な投資」という形で補助する点が特徴です。ます。
こんな方におすすめ
- 他院・他店舗を引き継いだが、統合後の運営やスタッフ管理に不安がある方
- 治療院・クリニック・サロンを複数統合し、効率的な運営体制を作りたい方
- M&A後、予約管理・顧客管理・会計などがバラバラで困っている方
- スタッフの定着や現場混乱を防ぐため、第三者(専門家)のサポートを受けたい方
- 統合をきっかけに、予約管理・会計・顧客管理の仕組みを見直したい方
- 引き継ぎ後の設備投資やシステム導入に、コスト面の不安を感じている方
支援類型
PMI推進枠では、M&A成立後に行われる経営統合作業(PMI)の具体的な内容に応じて「専門家活用類型」「事業統合投資類型」の2つの類型にわかれます。
「専門家活用類型」と「事業統合投資類型」には前後関係があり2類型の同一公募回での同時申請は認められないため、ご自身のPMI実行状況をご確認の上適切な類型で申請を実施する必要があります。
| フェーズ | 事業分類 | 概要 | ➀専門家活用類型 | ➁事業統合投資類型 |
| PMI計画 | PMI実施スケジュール・実施体制の策定 | 補助対象 (PMI専門家の活用によるPMIの実行) | 対象外 | |
| PMI実行 | 経営統合 | 経営体制(新経営者・会議体・意思決定プロセス等)の整備、事業計画の作成 | ||
| 事業統合(事業機能整備) | サプライヤー・在庫管理方法・生産体制等の見直し、販売拠点統廃合 | |||
| 事業統合(管理機能整備) | 人事・労務、会計・財務、法務、ITシステム等管理機能の改善(人材配置の改善等) | |||
| 統合効果 (PMIの最大化) | 事業統合投資 | 工場・製造ラインの統合に係る設備・システム導入等の設備投資 | 対象外 | 補助対象 (設備投資等) |
➀ 専門家活用類型(統合の進め方を相談したい方向け)
専門家活用類型は、M&A後の治療院・クリニック・サロン運営を整えるために、専門家のサポートを受ける場合に活用できる類型です。
例えば、
- 統合後の運営体制・役割分担の整理
- スタッフ配置・人事制度の見直し
- 業務フロー(受付・施術・会計など)の統一
- 複数院・店舗を見据えた経営管理体制の構築
- 経営方針やルールの整理・言語化
など、PMIを進めるうえで必要なアドバイスや計画づくりにかかる専門家費用が補助対象となります。
「何から手をつければいいか分からない」という状態でも、
第三者の専門家を入れることで、段階的にPMIを進めやすくなる点が特徴です。
➁ 事業統合投資類型(設備・システムを整えたい方向け)
事業統合投資類型は、PMIを進める中で必要となる設備やシステムへの投資を支援する類型です。
治療院・クリニック・サロンでは、例えば以下のような取組が想定されます。
- 予約管理・顧客管理システムの統一
- 電子カルテや会計・請求・レセプト関連システムの導入・切り替え
- 複数院・店舗を一元管理するためのITツール導入
- 統合後の業務効率化を目的とした設備投資
「統合後の運営をスムーズにするための投資」が対象となるため、
M&Aをきっかけに、
現場の負担軽減・生産性向上・経営の見える化を進めたい事業者に適した類型です。
補助対象者
事業承継促進枠の補助対象者 1.~15. に準じます(専門家活用類型は15.はなし)。
補助対象となる事業要件
- 事業再編・事業統合を伴うM&Aであること
- 承継者と被承継者の間で、M&A 成立前に承継者によるデュー・ディリジェンス(DD)が実施されていること。
➀専門家活用類型の要件
- 事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後にPMIを実施することにより、ディスシナジー(=投資しないことによって生まれる非効率)の解消やコストシナジーの創出が見込まれること。
- 【単独申請の場合】事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後(M&A のクロージング後)、1年以内に実施するPMIであること。
※当公募回の公募申請期日時点でM&Aのクロージング日から1年を超えていないことを要件とする。 - 【単独申請の場合】交付申請時点において、承継者と被承継者によるM&Aにおいてクロージング済のものであること。
- 【同時申請の場合】M&A のクロージング後の取組を対象とするものであること。
ただし、対象とする取組が対象M&Aのクロージング前における検討及びPMI専門家との契約締結が必要である場合は、クロージング前の交付申請を認める。なお、対象 M&A がクロージングに至らなかった場合、PMI費用は補助対象外となるため注意すること。 - PMI を実施する専門家は、金融機関(関連会社を含む)又は弁護士、会計士、税理士、中小企業診断士、経営コンサルタント等が実施するものであること。
※なお、不正等が発覚した場合には、所属先名称に加えて専門家の個人名を公表する。実績の有無は問わない。 - 事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後にPMIを実施することで、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること。
- 実施するPMIの内容を検討する際には、中小PMIガイドラインを参照すること。
➁事業統合投資類型の要件
- 事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、統合効果(PMI)の最大化を図り、生産性の向上を目的とする設備投資等が実施されること。
- 設備投資等を実施することにより、ディスシナジー(=投資しないことによって生まれる非効率)の解消やコストシナジーの創出が見込まれること。
- M&Aのクロージング後、1年以内に実施する取組みであること。
※当公募回の公募申請期日時点でM&Aのクロージング日から1年を超えていないことを要件とする。 - 事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること。
実施例
- 工場、製造ライン、物流等サプライチェーンの統合に係る設備導入、及び導入のための工事
- 業務統合・効率化を目的としたシステムの導入・最適化等
- 販路の拡大・開拓に向けた看板、ロゴデザイン等の統一、告知物の制作等
補助対象経費
補助対象事業を実施するために必要となる経費のうち、以下の1.~3.の全ての要件を満たすものであって、事務局が必要かつ適切と認めたものが補助対象経費となります。
- 使用目的が補助対象事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
- 補助事業期間内に契約・発注を行い支払った経費
- 補助事業期間終了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額・支払い等が確認できる経費
| 類型 | 経費区分 |
| ➀専門家活用類型 | 謝金、旅費、委託費 |
| ➁事業統合投資類型 | 事業統合のための設備費(設備購入・工事等)、外注費、委託費 |
補助上限額・補助率等
| 申請の種類 | 【条件】 小規模事業者 | 【条件】 賃上げの実施 | 補助下限額 | 補助上限額 | 上乗せ額 (廃業費) | 補助率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ➀PMI専門家活用類型 | - | - | 50万円 | 150万円 | +150万円以内 | 1/2以内 |
| ➁事業統合投資類型 | 該当 | 実施 | 100万円 | 1,000万 | +150万円以内 | 1/2以内 |
| 実施しない | 800万 | 2/3以内 | ||||
| 該当しない | 実施 | 1,000万 | 1/2以内 | |||
| 実施しない | 800万 | 1/2以内 |
補助上限額の変更に関する賃上げ要件
事業統合投資類型では、補助事業期間終了時に、公募申請時と比較し事業場内最低賃金 +50 円以上となる賃上げを達成することで、補助上限額が 800 万円以内から 1,000 万円以内へと引き上げられます。
廃業・再チャレンジ枠
-.jpg)
廃業・再チャレンジ枠の概要
目的・特徴
廃業・再チャレンジ枠は、事業承継やM&Aに取り組む中で、やむを得ず既存事業の廃業等を行う中小企業等が、その後の再チャレンジに向けて円滑に事業整理を進めることを目的とした補助枠です。
事業承継やM&Aでは、
- 不採算事業の整理
- 事業再編に伴う一部事業の廃止
など、廃業や事業整理が避けられないケースもあります。
本枠では、そうした廃業等に伴って発生する
原状回復費用や在庫処分費用などの負担を軽減することで、
次の事業展開や再チャレンジに前向きに踏み出せる環境を整える点が特徴です。
こんな方におすすめ
- 事業承継・M&Aを進める中で、一部事業の廃業や整理を検討している治療院・クリニック・サロン
- 複数事業を運営しており、経営効率を高めるために事業再編を行いたい事業者
- 廃業に伴う費用負担がネックとなり、次の一手に踏み出せずにいる方
- 事業整理後、新たな事業や経営の立て直し(再チャレンジ)を目指したい方
- M&Aや承継を「失敗」ではなく、前向きな経営判断として整理したい方
申請パターン
➀ 再チャレンジ申請(単独申請)
再チャレンジ申請(単独申請)は、廃業・再チャレンジ枠のみを活用して申請するパターンです。
事業承継やM&Aに関連して、
- 既存事業の廃業
- 店舗・設備の原状回復
- 在庫の処分
などを行う場合に、その廃業等に要する費用の一部が補助対象となります。
「まずは事業を整理し、身軽な状態で次に進みたい」
という事業者にとって、再スタートに向けた負担を軽減するための申請形態です。
➁ 他補助事業枠との併用申請
廃業・再チャレンジ枠は、
事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI促進枠など、他の補助事業枠と併用して申請することも可能です。
例えば、
- M&Aを実施しつつ、不要となる事業を廃業する
- 事業統合を進める一方で、既存店舗の整理を行う
といったケースでは、
承継・統合を支援する枠+廃業・再チャレンジ枠を組み合わせることで、
事業再編全体をトータルで支援してもらえる構成となります。
単独ではなく併用することで、
「攻め(承継・M&A)」と「守り(事業整理)」の両面をカバーできる点が大きな特徴です。
補助対象者
事業承継促進枠の補助対象者 1.~13. に加えて、以下も満たす必要があります。
- 2020年以降、M&A(事業の譲り渡し)に着手したものの、成約に至らなかった者であること
- 廃業後、再チャレンジする事業に関する計画を作成し、認定支援機関の確認を受けていること。
- 過去の「経営資源引継ぎ補助金」又は「事業承継・引継ぎ補助金」の補助金受給者においては、期日までに事業化状況報告を適切に実施していること。
※事業化状況報告の実施義務が生じているにも関わらず、当該報告を提出しなかった者は対象外
補助対象となる事業要件
対象となる廃業の要件
(1)対象とする廃業について 再チャレンジ申請の場合は以下①のみが対象となる。併用申請の場合は、①又は②のいずれかが対象となる。
- 会社自体を廃業するために、補助事業期間内に廃業登記を行う、在庫を処分する、建物や設備を 解体する、原状回復を行う事業。
- 事業の一部を廃業(事業撤退)するために、補助事業期間内に廃業登記を行う、在庫を処分する、 建物や設備を解体する、原状回復を行う事業。
(2)廃業対象である事業が、以下のいずれにも合致しないこと。
- 公序良俗に反する事業
- 公的な資金の使途として社会通念上、不適切であると判断される事業に該当しないこと。
- 国(独立行政法人を含む)の他の補助金、助成金を活用する事業
廃業後の再チャレンジの要件
再チャレンジ申請の場合は以下の要件を満たすこと。
(1)地域の新たな需要の創造又は雇用の創出にも資する、以下に例示するような新たな活動に、補助対象者である支配株主又は株主代表、もしくは個人事業主が取り組むこと。
再チャレンジの例
- 新たに法人を設立して事業活動を実施する
- 個人事業主として新たな事業活動を実施する
- 自身の知識や経験を活かせる企業への就職や、社会への貢献等を実施する
(2)再チャレンジとして支配株主又は株主代表、もしくは個人事業主が実施する事業が、公序良俗に反する事業・公的な資金の使途として社会通念上、不適切であると判断される事業に該当しないこと。
補助対象経費
補助対象事業を実施するために必要となる経費のうち、以下の1.~3.の全ての要件を満たすものであって、事務局が必要かつ適切と認めたものが補助対象経費となる。
- 使用目的が補助対象事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
- 補助事業期間内に契約・発注を行い支払った経費
- 補助事業期間終了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額・支払い等が確認できる経費
| 廃業支援費 | ・廃業に関する登記申請手続きに伴う司法書士等に支払う作成経費 ・解散事業年度・清算事業年度・残余財産確定事業年度(いずれも法人の場合)における会計処理や税務申告に係る専門家活用費用 ・精算業務に関与する従業員の人件費 ※上限額50万円 |
| 在庫廃棄費 | 既存の事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費 ※商品在庫等を売却して対価を得る場合の処分費は、補助対象経費とならない |
| 解体費 | 既存事業の廃止に伴う建物・設備等の解体費 |
| 原状回復費 | 借りていた設備等を返却する際に義務となっていた原状回復費用 |
| リースの解約費 | リースの解約に伴う解約金・違約金 |
| 移転・移設費用 (併用申請のみ計上可) | 効率化のため設備等を移転・移設するために支払われる経費 |
補助上限額・補助率等
補助対象者に交付する補助額は、補助対象経費の 3 分の 2 以内であって、以下のとおりとなります。ただし、経営革新枠、専門家活用枠と併用申請する場合は、各事業における事業費の補助率に従うものとなります。
※ 補助金の交付は事業完了後の精算後の支払い(実費弁済)
| 支援類型 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限 |
| ➀再チャレンジ申請 (単独申請) | 補助対象経費の2/3以内 | 50万円 | +150万円以内 |
| ➁併用申請 | 他補助事業枠の補助率に従う |
交付申請
交付申請の流れ
簡単な流れ
- 公募要領や Web サイトを確認し、補助対象事業(対象となる類型)への理解を深める
- gBizID プライムのアカウントを取得する(1 週間程度)
- 本補助金 Web サイトより認定経営革新等支援機関による確認書をダウンロードする
※専門家活用事業の場合は不要 - 認定経営革新等支援機関に本補助金に係る確認書記載を依頼し、記載済の確認書を受け取る
※専門家活用事業の場合は不要 - 交付申請に必要な各種書類の準備(交付申請類型に則る)
- オンライン申請フォーム(jGrants)及び各種申請様式(電子ファイル)に必要事項を記入し、提出する必要書類を添付する
- 申請処理を行い、申請状況を確認する
電子申請が必須
電子申請システム(jGrants)のみで交付申請をおこなっているため、事前にgBizIDのアカウント作成が必要となります。
gBizIDの申請・発行には 1 ~2週間程度必要となる場合がありますので、事前に取得しましょう。
- jGrants について:https://www.jgrants-portal.go.jp/
- gBizID について:https://gbiz-id.go.jp/top/
スケジュール
事業承継・M&A補助金における今後の申請受付期間のスケジュール以下の通りです。
5次公募:2023年3月20日(月)~2023年5月12日(金)まで6次公募:2023年6月23日(金)~2023年8月10日(木)まで7次公募:2023年9月15日(金)~2023年11月17日(木)まで8次公募:2024年1月9日(火)~2024年2月16日(金)まで9次公募:2024年4月1日(月)~2024年4月30日(火)まで10次公募:2024年7月1日(月)~2024年7月31日(水)まで※専門家活用枠のみ11次公募:2025年5月9日(金)~2025年6月6日(金)まで※専門家活用枠のみ12次公募:2025年8月22(金)~2025年9月19日(金)まで13次公募:2025年10月31(金)~2025年11月28日(金)まで
「事業承継・M&A補助金」の採択結果・採択率
事業承継・M&A補助金の採択率は、申請する枠によっても異なります。
そのため、申請する枠の申請数・採択者数や採択率もあわせて確認しておきましょう。
| 公募回 | 経営革新 | 専門家活用 | PMI推進枠 | 廃業・再チャレンジ | |
|---|---|---|---|---|---|
| 1次 | 申請者数 | 209 | 790 | - | 34人(単独0件、併用34件) |
| 採択者数 | 105 | 407 | - | 9 | |
| 採択率 | 50.2% | 51.5% | - | 42.9% | |
| 2次 | 申請者数 | 188 | 422 | - | 21人(単独0件、併用21件) |
| 採択者数 | 105 | 234 | - | 9 | |
| 採択率 | 55.9% | 55.5% | - | 42.9% | |
| 3次 | 申請者数 | 189 | 408 | - | 29人(単独2件、併用27件) |
| 採択者数 | 107 | 234 | - | 13 | |
| 採択率 | 56.6% | 57.4% | - | 44.8% | |
| 4次 | 申請者数 | 264 | 518 | - | 28人 (単独1件、併用27件) |
| 採択者数 | 146 | 290 | - | 10 | |
| 採択率 | 55.3% | 56.0% | - | 35.7% | |
| 5次 | 申請者数 | 309 | 453 | - | 37人 (単独0件、併用37件) |
| 採択者数 | 186 | 275 | - | 17 | |
| 採択率 | 60.2% | 60.7% | - | 45.9% | |
| 6次 | 申請者数 | 357 | 468 | - | 37人 (単独1件、併用36件) |
| 採択者数 | 218 | 282 | - | 23 | |
| 採択率 | 61.0% | 60.2% | - | 62.1% | |
| 7次 | 申請者数 | 313 | 498 | - | 28人 (単独2件、併用26件) |
| 採択者数 | 190 | 299 | - | 10 | |
| 採択率 | 60.7% | 60.0% | - | 35.7% | |
| 8次 | 申請者数 | 334 | 374 | - | 22人 (単独1件、併用21件) |
| 採択者数 | 201 | 229 | - | 12 | |
| 採択率 | 60.2% | 61.2% | - | 54.5% | |
| 9次 | 申請者数 | 388 | 440 | - | 25 |
| 採択者数 | 233 | 275 | - | 14 | |
| 採択率 | 60.1% | 62.5% | - | 56.0% | |
| 10次 | 申請者数 | - | 518 | - | 8 |
| 採択者数 | - | 318 | - | 3 | |
| 採択率 | - | 61.3% | - | 37.5% | |
| 11次 | 申請者数 | - | 590 | - | 29 |
| 採択者数 | - | 335 | - | 12 | |
| 採択率 | - | 60.8% | - | 41.4% | |
| 12次 | 申請者数 | 250 | 436 | 55 | 1 |
| 採択者数 | 152 | 266 | 34 | 1 | |
| 採択率 | 60.8% | 61.0% | 61.8% | 100% | |
最後に
今回は、「事業承継・M&A補助金」について説明してきました。
事業承継やM&Aにより、「引退したい」「新たな事業を始めたい」「事業の一部を買いたい」「事業の一部を売りたい」などを悩んでいるようでしたら、M&Aに必要な取組であれば広範囲の経費が対象になるお得な補助金でとなっているため、M&Aを検討している方は是非この補助金の申請を検討してみてください!
尚、公募開始から締切まで期限の余裕がないため、支援者に相談するなど早めの準備が必要です。
また弊社は、M&A 支援機関制度の登録事業者であることに加え、認定支援機関であるため、専門家活用の費用も対象となります。
ヘルスケア業界においても、M&A案件が増加しています。
弊社では、特に事業規模の大きくないスモールM&AやマイクロM&Aを中心に支援しているため、1人で経営されているような規模からでも、「事業承継・M&A補助金」を活用してM&Aを検討している方で、ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
ヘルスケア業界
病院・診療所(クリニック・医院)、歯科医院、治療院(整骨院、鍼灸院、マッサージ院)、整体院、カイロプラクティック院、リラクゼーションサロン、美容サロン、エステサロン、スポーツトレーナー、フィットネスクラブ、介護関連(通所、訪問)、機能訓練型デイサービス、リハビリテーション、薬局など
事業承継・M&A補助金の申請サポート
スモールM&A・事業承継支援
TwitterとLINEにて情報(経営やマーケティング、業界情報)を配信しています。また、フォローや友達追加でお問い合わせなどにも対応しています。
