事業計画書の作成方法

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「事業計画書(ビジネスプラン)」の作成方法

開業の準備にあたり、事業計画書というものを初めて知り、融資などのために提出を求められ、慌てて作成する開業予定者の方は多いのではないでしょうか。

そんな事業計画書の書き方について本記事では説明していきます。

事業計画書の作成に必要な基礎知識とポイントを理解し、開業への第一歩を踏み出しましょう。

 

この記事は、株式会社リクルートが運営するオウンドメディア「Air レジマガジン」から転載しています。

 

 

事業計画書とは

事業計画書とは、頭の中で思い描いている事業を、どのようにして実現していくかを表したものです。事業計画書には、後ほど述べるように、たくさんの要素や側面があることから、それぞれの観点から事業を検討していく必要があります。

また、新規事業・既存事業のどちらかの事業計画を指しますが、本記事ではこれから開業を考えている方を対象とした新規事業の事業計画書として説明していきます。

ただし、既に事業をおこなっている方も、自身で作成した経験がなければ、改めて事業を見つめ直せることから、本記事を参考にして作成することをお勧めします。

 

医学と経営学

施術に関わる「医学」を勉強してきた方は多いと思いますが、学校などの教育では「経営学やマネジメントに関する教育」を受ける機会は与えられませんでした。そして、開業する方の多くはプレイングマネージャー(施術も経営もおこなう)であり、マネジメントのみに徹することができない現状もあります。

そして、臨床に出てからは、施術の技術や知識を評価され、その評価により管理者の立場につくことが一般的なため、経営に関する知識に自信ががない方が多いのではないでしょうか。

さらに、国家資格によっては医療提供者であり医療としての公共性が強く、通常のサービス業のように営利企業としてお金に関する議論を積極的におこなうことがタブー視されてきたことも「経営学」に触れる機会の損失に繋がっていると考えられます。

医療の本質的な内容に差別や価格差を生むことではなく、これからは以下の理由から現場での医療レベル(施術・知識)の向上などの部分最適の視点以外にも、経営に関する知識による全体最適の視点が必要となります。

  • 資格者・施術者の増加
  • 同業種以外の隣接業界も含めた過当競争
  • サービスのコモディティ化(顧客が感じる品質に差がなくなった)
  • 情報の非対称性:インターネットの普及により疾患の情報が誰でも手に入るため専門知識の差がなくなった、さらに施術者や店舗の情報の取得により顧客が施術者や店舗を容易に選択可能
  • 公共性の高い医療に対しても高度なサービスの要求:医療の範囲ではお金さえ出せば高級ホテルやレストランなどの対応はできない状況にある。そのため、周辺のサービスに関しては過剰な要求に柔軟に対応する形も必要

経営学といっても、多くの方が今までに学んできた「医学」も「経営学」も大きく変わらず、基礎医学で身体の要素や作用を知り臨床(検査・施術・評価)に活かしてきたように、ビジネスの要素や作用を知り異常があれば各パーツを見直していくという共通点があります。

頭を抱える箇所もあるかもしれませんが、これから始める事業の設計図を事業計画書として自身で作成してみましょう。

 

事業計画書の必要性

事業計画書の必要性について、「自分のため」「他者に説明して理解を得るため 」という2つの視点からそれぞれ説明していきます。

 

自分のために作成する

自分のやりたい事を客観的に見つめ直し、現実と計画のギャップを知り、始める事業が実現可能なのかを明らかにすることで、思い入れだけの無茶な創業を避けるため。

 

他者に説明して理解を得るために作成する

事業に協力してくれる人を募る際、金融機関の融資、公的機関の補助金・助成金などでの円滑な資金調達の際に、始める事業について理解を得るために必要な説明書となります。

 

事業計画書の作成手順【準備編】

事業計画書は、いきなり作成することは難しいため、以下の図1の流れで始める事業について考えて事前に準備しておきましょう。

 

事業計画書の作成手順

図1:事業計画書の作成手順

 

➀開業する理由と目指す方向を明らかにする

全体の構想、事業イメージを膨らませ、どういう目的で何をやりたいか、なぜ自分がやるのかをはっきりさせます。事業に対する考え方や、将来的な事業展開を決定します。

 

➁市場調査をする

これから始める事業を取り巻く環境等を調査し、事業計画書における裏付けデータとして活用でできるようにします。

事業を取り巻く環境は外部環境と内部環境があり、さらに外部環境は大きくマクロ環境とミクロ環境に分かれます(図2)。

環境分析(外部環境・内部環境)

図2:事業を取り巻く環境(外部環境・内部環境)

  • マクロ環境:広く全体的な視点で、事業や業界において影響を与える要因(政治・法律、経済、社会、技術)について調査(PEST分析)
  • ミクロ環境:マクロより絞った領域として、「商圏における市場(顧客)」や「競合他社」について調査
  • 内部環境:自社・自分に関する情報について棚卸し

外部経営資源の主な分析項目(機会・脅威に該当する項目)

マクロ環境

  1. 経済的環境:経済成長率、景気動向、為替、インフレ、デフレ、個人の可処分所得の動向、物価指数、株価、企業の倒産動向など
  2. 人口動態的環境:出生率、人口動態、少子高齢化の進展、世帯構成の変化など
  3. 社会文化的環境:衣食住などライフスタイルの変化、消費者の購買行動の変化、労働形態の変化、教育、趣味・レジャーの多様化、福祉の動向、ブーム・トレンドなど
  4. 技術的環境:情報技術(IT関連)、特許、エネルギー、新素材、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーなど
  5. 政治・法律的環境:政府・自治体の意思決定、法律の制定や改正、税制、規制緩和、財政・公共事業など
  6. 自然的環境:地球温暖化、大気汚染、土壌汚染、ごみ処理、産業廃棄物、天然資源など

ミクロ環境

  1. 市場・顧客ターゲット:顧客ニーズの変化、対象とする市場の動向、潜在的な市場・顧客の推移など
  2. 競合他社:競合他社の動向、他社の新製品・サービスの状況、新たな市場参入者の動きなど

 

➂事業取り巻く環境を分析する

SWOT分析(内部環境分析)

図3:SWOT分析(内部環境分析)

市場調査したものを、事業にとってポジティブな要因となるか、ネガティブな要因となるかを整理します。

外部の経営環境を「機会」と「脅威」、内部の経営資源を「強み」と「弱み」に分類し、4つの象限を重ね合わせることで、自社にとっての市場機会を検討します(SWOT分析)。特にポジティブな項目である「強み」を活かし、「機会」をどのように捉えることができるかを考えます。

 

内部経営資源の主な分析項目(強み・弱みに該当する項目)

  1. 経営理念・ミッション:なぜこの事業を行うかの明確さ、事業に対する思いの強さなど
  2. ヒト資源:スタッフのレベル、組織形態、組織文化、命令系統、リーダーシップなど
  3. モノ資源:製品・サービスのコンセプト、品質、納期、コスト、新製品・サービス開発力など
  4. カネ資源:開業資金、資金調達力、計数管理能力、資金運用力など
  5. 情報資源:コミュニケーションの良好さ、情報の共有化の程度、必要情報の入手方法など
  6. 無形資源:創業者のキャリア、経験、有するノウハウなど

 

➃ターゲットとなる市場(顧客)を選定し、自社のポジションを決める

年齢、地域、心理などの視点で、市場あるいは顧客グループを細分化して、ターゲットを決定し、自社が取るポジションを決めていきます(STP分析)。

パレートの法則(80:20の法則)によると、売上の80%は上位20%の顧客で生み出されているとされていることから、市場・顧客グループを決めることはとても重要です。

どのような視点で細分化するかによって変化するため、自社の独自性や強みを活かして差別化できるターゲットを選定し、ポジションを決めましょう。

簡単な例ですが、「年齢」と「分野(治療、リラクゼーション、美容、スポーツ等)」で細分化し、30代~40代の美容分野の市場(顧客)をターゲットとするなどです。その他に、「顧客ニーズ」「顧客の解決したい悩み」、「職業」「所得」、「部位」「疾患・症状」などで細分化することもできます。

そして、競合との違いを認識できる2つの軸を設定した「ポジショニングマップ」を作成し、顧客ニーズを十分に認識した上で、競合が強い地位を占めておらず、差別化できるポジションを見つけ出していきます。

 

ターゲット市場(顧客)を選定し、自社のポジションを決める

図4:STP分析

 

➄事業内容を纏める

これまでのステップで明らかになった事業の概要を「6W2H」の視点から書くプロセスの中で、曖昧な部分を明確化していきます(表1)。

 

表1:6W2H
視点 内容 留意点
WHO
(誰がやるのか)
経営主体 従業員や協力者の有無、家族の理解・協力はあるか。
自社単独の展開ならばアライアンスの検討もする。
WHY
(なぜやるのか)
動機と必然性 「成長市場だから」などの理由でなく、自社自身がやらなければならない理由は何か。
WHAT
(何を売るのか)
商品・サービス+α 事業およびコンセプトの明確化。
真に売るものは「価値」「便益(ベネフィット)」のため、アフターサービスなども含め総体的に確認。
WHOM
(誰を対象とするのか)
顧客ターゲット 単なる顧客の属性ではなく、困りごと、ライフスタイルや生活シーンまで明確化。
WHERE
(どこで売るのか)
立地・商圏 開業時は有力な立地確保は困難であり、ITの有効活用により立地の限界を超える。
出張・訪問、ネット販売、オンラインサービス、移動販売、代理店販売も検討。
WHEN
(いつ売るのか)
営業時間・納期 顧客のニーズを最優先する。「時間」は事業規模に関係のない平等な経営資源で、「納期」は小回りが利く中小企業の差別化の武器になる。
HOW
(どのように売るのか)
マーケティング 「売る仕組み」より「売れる仕組み」づくりを考える。新規顧客獲得より固定客を惹きつける工夫が大事。
後述する「4P(マーケティング・ミックス)」である製品・サービス、価格、販売促進、チャネルの組み合わせ。
HOW MUCH
(いくらで売るのか)
価格設定 低価格競争に巻き込まれると、大手に負けてしまうので、(品質+付加価値)÷価格のお値打ち感で勝負する。
顧客の判断基準を、定量的な要素から定性的な要素へシフトさせる。

 

別記事で具体的な説明をしてますので参考にしてください。

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➅売れる戦略を考える

4P分析(マーケティングミックス)

図5:4P分析(マーケティング・ミックス)

製品・サービス、価格、販路、販売促進の整合性を考えながら、どのように売るかを考えます。

それには、4P(マーケティング・ミックス)というフレームワークを活用するとよいでしょう。
4Pとは「製品・サービス(Product)、価格(Price)、流通・チャネル(Place)、プロモーション(Promotion)」の頭文字から命名されたフレームワークです。この4つの観点からサービスを検討していきますが、個別に考えるのではなく、それぞれの項目を上手く組み合わせることが大切です。

また、4Pは企業(売り手)の視点に立った考え方であるため、顧客(買い手)視点に立ち、 製品・サービス(Product)は顧客が価値をどこにおくものか、 価格(Price)じゃ顧客が納得できるコスト(費用・時間)か、 流通・チャネル(Place)は顧客にとって利便性が高いか、プロモーション(Promotion)は顧客に対して有益な情報を発信しているか、と比較検討することも必要です。

 

表2:4P分析(マーケティング・ミックス)の例
製品・サービス
(Product)
➀整体・リラクゼーション
➁鍼灸施術
➂美容はり
価格
(Price)
➀30分3,500円~
➁30分4,500円~
➂30分6,000円~
流通・チャネル
(Place)
店舗、オンライン(無料相談)
プロモーション
(Promotion)
・新規顧客獲得:ウェブサイト、SNS、ブログ、チラシ配布、初回・紹介割引
・既存顧客継続:メルマガ、公式LINE、ポイントカード、回数券、口コミの獲得

 

➆始める事業が利益になるか考える

確実に利益を出し続けられる計画にするために、以下の4つの流れで収支の中身を明らかにしていきます。

 

資金計画

開業費用がどのくらいの金額になるかをまとめて、その資金調達方法を決めます。

 

売上計画

事業に入ってくる収入をまとめます。

「売上=客数×客単価」ため、前提条件として、前項➄の売れる戦略でどのくらいの客数が見込めるか、どのくらいの単価が顧客にとって適切かを決めておきます。

 

価格設定方法

価格設定はさまざまな要因の影響を受けますが、価格の下限は「サービス提供コスト」であり、価格の上限は顧客が認める価値である「カスタマーバリュー」となります。
価格設定の方法は大きく分けると次の3つの視点で検討することができます。

・自社視点
コストを考慮して価格を設定します。適切な利益を確保することとサービス提供コスト増加のリスクを最小化することが重要になります。自社視点での価格設定は簡単ではありますが、一方で顧客が払ってもいいと考える価格よりも低い価格を提示してしまう(得られるはずの利益を逃してしまう)リスクがあります。

・顧客視点
顧客が認識する価値(カスタマーバリュー)に焦点を合わせ、需要を考慮して価格を設定します。前述通り「カスタマーバリュー」は価格の上限となるため、適切な価値が提供できるサービスであれば、事業者にとって最も利益が上がることになります。

・競合視点
差別化されていないサービスである程度の競争がある場合には、競合他社の価格を考慮して価格設定します。低価格競争となりやすいため、事前に何らかの差別化を図る必要があります。

 

仕入・経費計画

事業から出ていく支出と仕入先をまとめます。

 

収支計画

事業活動の結果、いくら売上があって何に経費を使ってどのくらい利益が上がるかを明らかにしていきます。

 

➇実行計画に落とし込む

開業から開業後の実行計画と事業運営体制、想定される課題・リスクへの対応策を検討します。

 

良い事業計画書を作成するポイント

良い事業計画書とは、一貫性・実現可能性があるものですが、➀自分のためと➁他者に説明して理解を得るための観点から、それぞれの重要とするポイントを説明していきます。

 

自分のために作成するときのポイント

「開業することに自信が持て、すぐにでも実行できる計画で、開業後の羅針盤にもなるもの」が、自分のために良い事業計画書です。

起業時には、想定外の事が起こったり、予定通りにいかない事の方が多いものです。起業後に見直すことで、見込み違いの点や修正すべき点にすぐに気付けることが必要です。

以下が作成する際のポイントとなります。

  • 事業内容や特徴が把握・整理できている
  • 創業までの段取りなどのやるべきことが明確になっている
  • 創業時および創業後の、当面必要な資金が明確になっている

起業後の課題やリスクが想定されており、対応策が明確となっている

 

他者に説明して理解を得るために作成するときのポイント

「他者が客観的にみて(論理で)理解できるもの」が、他者に説明して理解を得るために良い事業計画書です。

他者に対して、ただ言葉で説明しただけでは、なかなか相手の理解を得ることはできません。

そのため、目的に応じた他者がみて、本当に事業化できそうか、顧客が喜びそうか、その価格で売れそうか、出したお金を回収できそうか等、判断できる内容になっている必要があります。

以下が作成する際のポイントとなります。

  • 誰が読み手かを把握できている
  • 思いや熱意など自分の言いたい事だけでなく論理で説明できている
  • 事業の見通しが明確になっている
  • 採算性があり、損益に無理のない計画となっている

 

事業計画書を作ってみよう【実践編】

開業に向けて調査や準備してきたことを、実際に事業計画書に落としていきます。

形式は基本的には決まっていないため、以下の内容について纏めておくことで、目的に応じた形式に合わせて転記すれば良いでしょう。

尚、名称や数字などの調べたデータを記載していく事で、具体的な内容となります。また、業界の専門用語などはなるべく控えて、誰が見ても分かりやすい表現を意識しましょう。

最初から、完璧に作成しようとすると、書き進めることが難しくなります。

そのため、粗くても一通り項目を埋めて、何度か修正を繰り返してブラッシュアップできるようにしていきましょう。

 

企業・事業者概要(プロフィール)

この章はイメージの事業計画書サンプルを参考にして作成してください。

事業計画書サンプル(1)

事業計画書サンプル(1)

 

事業の概要

事業者名、代表者名、業種、所在地、従業員数等を記載します。

 

代表者の経歴

学歴、職歴、業界経験、取得資格、ノウハウ、技術など、単なる項目の羅列にせずに、事業を始めるのにプラスになるような経験を積んできたことが分かるように記載します。

 

事業をおこなう理由・動機

自身がなぜこの事業を始めたいのか(経営理念)、何を実現したいのか(ビジョン)について、自身の経験や社会的な問題等に触れながら、可能性や共感性を意識して記載します。

 

環境分析

この章はイメージの事業計画書サンプルを参考にして作成してください。

事業計画書サンプル(2)

事業計画書サンプル(2)

 

業界の状況

その業界を知らない人でも、業界の状況や特徴が分かるように記載します。

治療院業界においては、施術所数、施術者数のデータを示しながら過当競争になっていることや、業務によっては国家資格が必要な業種があること、療養費についてなどについても記載があるとよいでしょう。

業界情報のカテゴリはこちら

 

市場分析

市場調査から得たデータを示しながら、以下のような流れを意識して記載できると良いでしょう。

意識する流れ

  • ある特定の業界や市場・顧客には、○○のような課題(困りごと)があり、今はその課題を完全に満たすサービスが存在していない。
  • そのため、今はとりあえずの解決策として競合他社のサービスが利用されています。しかし、全ての悩みを解決できないことから利用に対して満足していません(不満を抱えている)。
  • そこで、自社による事業やサービスはこの課題を解決することが可能なものとなるため、顧客から必要とされることが見込まれます。

これらを踏まえ、次の章から具体的な市場・顧客や、自社の具体的な事業・サービスを説明していきます。

 

事業の方向性

この章はイメージの事業計画書サンプルを参考にして作成してください。

事業計画書サンプル(3-1)

事業計画書サンプル(3-1)

事業計画書サンプル(3-2)

事業計画書サンプル(3-2)

 

市場規模と特徴

市場規模の大きさや推移がわかるように記載します。民間調査会社なども推計を出していますで、出来るだけ客観的なデータを提示します。

 

競合分析

想定される競合

具体的な競合企業を列挙し、それぞれの特徴などの概略を記載します。

 

競合他社との比較検討

競合他社と自社とのサービス内容、価格等の比較を一覧化し、競争優位性を強調するだけでなく、劣る点も率直に記載します(表3)。

競合他社の情報のほとんどは、インターネット上で取得できると思いますので、参考にしながら項目を埋めていきましょう。

主な項目は、コンセプト、顧客ターゲット(年齢、性別、職業、所得、どんな悩みを抱えているかなど)、サービスメニュー、サービス価格、サービスの提供方法(対面、訪問、オンラインなど)、販促手法(webサイトの有無、SNS、ブログ、チラシ、広告など)、立地(最寄り駅から徒歩やバスで何分、国道沿いなど)、強み、弱み、などです。

競合他社との差別化の要因、競合と比べて何が優れているのか、顧客に何を訴求するのか、競合との違いを意識して整理しましょう。

表3の例では、以下のような考察ができるのではないでしょうか。

競合Aは急性疼痛の治療、競合Bは健康管理としてのリラクゼーションがメインとなっている。自社は保険適用とならない「慢性の痛みに対する治療」での自費診療がメインとなり、競合しないことから、このポジションでのサービスは商圏でのシェアを獲得していく。また、美容メニューを取り入れることで差別化を図る。

また、販促手法は認知度向上のために、コストのかからないSNSなどの活用をしていき、オンラインによる無料相談をおこなうことで新規顧客獲得をしていく。

表3:競合分析
自社 競合他社A 競合他社B
コンセプト オーダーメイドの施術 外傷・スポーツ疾患への治療 気軽に立ち寄れるリラクゼーション
顧客ターゲット やや富裕層 近隣の中高齢者、スポーツ学生 仕事帰りの会社員、主婦
サービス 自費施術がメイン 急性疼痛に対する保険適用施術 自費施術がメイン
価格 やや高価格 低価格 一般的な価格で幅広く設定
提供方法 店舗 店舗、訪問(一部) 店舗、オンラインでの運動指導
販促手法 ウェブサイト、チラシ配布 他社ポータルサイト、利用者の口コミ ウェブサイト、SNS、駅広告、チラシ配布
立地 駅近くのマンション3階 住宅街 駅近くの商業施設内
強み 代表者の幅広い経験(病院、専門治療院、リラクゼーションサロンなど) 高い治療技術 手軽さ、入店しやすさ、認知度の高さ
弱み 新規開業で店舗が3階のため認知されづらい 近隣住民以外の認知度の低さ 痛みを伴う症状への専門性の低さ

 

具体的なターゲット市場(顧客)

市場環境について

どのくらいの人が顧客になり得るのかを意識して、商圏の特徴や情報を見直して、全体を俯瞰し記載できるようにしましょう。例えば、「○○地区における自社1キロ圏内では、(××世帯、○○○○人)のため、△△人からの集客を見込める」など。

主な見直す項目は以下となります。

  1. 店舗の立地
    都心部か、郊外か、オフィス街か、住宅街か、商店街か、駅から近いか、ロードサイドかなど
  2. 商圏利用者の情報
    商圏におけるにおける人口数・世帯数および推移、昼間人口や夜間人口、男女比、年齢比、平均所得、近隣で多い業種、駅の乗降客数、競合他社の数、新型コロナウイルス感染症による影響など

 

想定される顧客ターゲット

どの顧客をターゲットにして、なぜその顧客を狙うのか、顧客が抱えるニーズ・課題を抽象的な表現でなく、具体像を意識して記入します。

顧客ターゲットを決めることは、売上の80%は上位20%の顧客で生み出されている事からとても重要です(パレートの法則)。

尚、顧客ターゲットについては、【準備編】の「➃ターゲットとなる市場(顧客)を選定し、自社のポジションを決める」のSTP分析で決めているの思います。

 

事業内容

この章はイメージの事業計画書サンプルを参考にして作成してください。

事業計画書サンプル(4)

事業計画書サンプル(4)

 

事業内容

サービスの具体的な内容

一言で言うと何をやるのか(事業コンセプト)、サービス内容、価格、提供方法、販売促進方法を記載します。

サービスについては、顧客にとって得られる価値(便益)、価格については安さではなく、品質や付加価値を強調します。また、提供方法については、顧客の利便性を考えて店舗内、出張、オンラインを活用するのかを記載します。

 

自社が発揮できる強み・特徴

上記の商品・サービスによって、ターゲット顧客のどんな困りごとが解決できるか分かるように記載します。

自社の強みを意識して、なぜそれが可能になるのかという独自性や差別化ポイントを自己満足に陥らないようにデータなどの根拠を示しましょう。

また、地域経済へ与える影響(雇用創出や活性化など)があればそれも記載しましょう。

 

マーケティング展開

販売促進方法

WEBサイト作成、SNS、Googleビジネスプロフィール(Googleマイビジネス)、リスティング広告、チラシ作成・配布などおこなう方法を記載します。

 

顧客獲得および関係構築の方法

上記販売促進により、ターゲット顧客が、どのように自社を知り、来院に至り、リピートし、顧客の紹介につながるか、というストーリーを意識して記載することが重要です。

そして、自社の経営資源を踏まえた現実的で、顧客にとって有益な方法により、販売を不要にするような「売れる仕組みづくり」を考えましょう。

 

収支計画

この章はイメージの事業計画書サンプルを参考にして作成してください。

事業計画書サンプル(5-1)

事業計画書サンプル(5-1)

事業計画書サンプル(5-2)

事業計画書サンプル(5-2)

 

資金計画

開業に必要な費用を表4左側にある「設備資金」と「運転資金(3ヶ月分)」に整理して、該当する項目と金額を埋め、合計金額を算出します。

次に、表4右側にある資金調達の方法について「自己資金」と「借入金」、親族からの借入金などがあれば「その他の資金」として整理し、合計額を算出します。尚、自己資金は開業資金の50%以上が望ましいとされています。

そして、左右の合計金額は一致するようにしましょう。

表4:資金計画
必要な資金(投資資金) 金額 調達方法・内容 金額
設備資金 【主な記載項目】
店舗、事業用不動産取得、賃貸敷金・入居保証料、内装工事費、機器・備品、ソフトウェア等
自己資金
➀設備資金合計
運転資金 【主な記載項目】
商品・材料の仕入れ資金、人件費・賃金等、店舗家賃、水道光熱費、広告宣伝費
金融機関からの借入
※内訳、返済方法
➁運転資金合計 その他の資金
合計(➀+➁) 合計

 

売上計画

「売上=客数×客単価」ですが、単価は決まっていても、客数(数量)を事前に把握することは困難です。そのため、決定したマーケティング展開により1日の顧客数を見込んでいき、月・年毎の売上高も予測していきます。

尚、営業時間・日数、ベッド数・回転率、施術者数から、サービス提供上限(売上上限)を加味して1日の売上高は算出しましょう。

 

仕入・経費計画

開業後、毎月かかる経費である原価(売上にかかる費用)と販売管理費(人件費、賃料、光熱費、広告・宣伝費等)について仕入先、単位と数量、金額をまとめます。

売上原価

売上原価は、サービスに付随するオイルや鍼などが該当します。尚、株式会社TKCの「TKC経営指標(令和3年版)」によると、按摩マッサージ師・鍼灸師・整復師の施術所で、黒字企業の平均売上総利益率(限界利益率)は95.6%、売上原価は約5%と、ほとんどかかりません。

仕入れ

仕入れ量はサービス提供数と連動するため、「何を」「どこから」「どんな仕入条件で」を考えて計画的におこない、過剰在庫にならないように仕入れをすることが大切です。
また仕入先の数はあまり多くならないように、必要な商品を、必要な時期に安定的に供給してくれるところを選ぶようにしましょう。

 

収支計画

事業活動の結果、いくら売上があって何に経費を使ってどのくらい利益が上がったかを明らかにしていきます。(1)~(3)で算出した金額を、表6の収支計算書(損益計画表)へ月毎にまとめていくイメージです。

月毎に作成し、1年以内に単月ベースで良いから黒字を作れるようにしましょう。また、月毎に作成したものを根拠として1~3年後までの形式も作成出来るようにします。

作成時には、「採算が採れるのは何ヶ月後か?」「事業が軌道に乗るのはどのくらいの期間がかかるのか?」「損益からみて無理のない計画となっているか?」を意識しましょう。

もし、損益に無理がある計画だとしたら、投資内容、経費内容、資金調達について再検討する必要があります。

尚、➂売上総利益(粗利)は大雑把に利益を見る指標で、⑫営業利益は本業である事業の儲けを見る指標です。

 

事業計画書における収支計画_月次

図6:事業計画書における収支計画(月次)

 

実行計画(事業化計画)

この章はイメージの事業計画書サンプルを参考にして作成してください。

事業計画書サンプル(6)

事業計画書サンプル(6)

 

アクションプラン(開業スケジュール)

事業展開に必要なアクションを一覧できるように、以下の項目を図や表にしてスケジュール化しましょう(図7)。

・施設・設備:物件契約、内装工事、機器・備品搬入
・発注・仕入れ:機器、備品、消耗品
・届出・許認可:税務署、保健所など
・販売促進:WEBサイト作成、広告作成、広告配布など
・人材:雇用、教育
・資金調達:融資の相談、申込、融資の実行

開業のアクションプラン(事業化計画)

図7:開業のアクションプラン(事業化計画)

 

事業実施体制

自社の経営資源で、なぜこの事業を実行することが可能なのかを意識して記載しましょう。

 

人員体制の計画

事業へ従事する人員体制について、従業員を雇う場合は、人数・採用方法・担当業務も記載します。

 

事業運営体制

事業全体を俯瞰した運営等の仕組みを記載します。仕入先、協力者、支援者なども含めた位置付けがわかる概況図などに出来ればなお良いです。

 

事業実現への課題や想定されるリスクとその対応策

 

表5:想定される課題・リスクとその対応策
カテゴリ 内容 対応策
課題 立地が、駅から近いがビルの3階で認知されづらい インターネットからの集客に注力し顧客を呼び込む
また、入口まで来た顧客の離脱防止のためにビルの入り口に立て看板を設置する
施術者によるサービスの品質のバラツキ マニュアル作成、社内勉強会、社外講習・セミナーへの参加でサービス(技術・知識・接遇)の標準化を図る
リスク 施術による症状の悪化などのリスク 提携病院の紹介や賠償責任保険への加入をおこなう
新型コロナウイルスの感染リスク 業種別ガイドラインに則り、感染対策をおこなう
また、内装工事でカーテンレールや仕切りで個室を多くすることで密にならないようにする

 

最後に

本記事に記載した内容は、開業後に経営者として事業を運営していく上で必ず必要となるものです。開業前に作成することで自信がつき、スムーズな開業や事業の成功に近づけるでしょう。

また、事業が継続する限り、事業計画書の作成に終わりはありません。もし更新することがなくなったら、その事業はもう成長しないということです。新たな事業の方向性の検討や経営環境の変化に対応できるように、必要に応じて更新するものであると考えておきましょう。

 

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