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6W2Hで事業内容を整理する

6W2H(5W1H、5W2H)で事業内容を整理する

本記事では、「6W2H」について説明していきます。「5W1H」の派生系となるビジネスフレームワークですが、耳にしたことはあるかと思います。

フレームワークとしては基礎的なものですが、あらゆるビジネスの考え方の根本となるもので、物事や情報が曖昧だったり、抽象的な場合に8つの要素に展開すれば、やるべき事が具体的になってイメージしやすくなることで、スムーズに行動に移す事が出来るようになります。
また、情報が共有しやすくなり抜け漏れが防げ、問題が発生した時に「いったい何が起こったのか?」事実を確認する時にも役立ちます。正しく事実を把握した上で解決策を考えないと、とんでもない見当違いをしかねません。

「6W2H」は、ビジネスの様々な局面で使え、特に計画づくりや要件定義などでは欠かせません。
具体的には、事業計画書作成や、事業コンセプト・マーケティング戦略の立案前などに事業内容を纏める際に活用します。
また、問題の分析や整理、情報収集する項目の整理、アイデア発想、あるいはヒアリングツールとして、情報を整理する必要がある様々な場面で役立ちます。

今回はそんな基本的な考え方となる「6W2H」について説明していきたいと思います。

6W2Hとは?

「6W2H」とは、「Who(だれが)」「What(なにを)」「Whom(だれに)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「Why(なぜ)」「How(どうやって)」「How much(いくらで)」の8つの問いを用いて、物事やテーマ、問題、課題などを多面的に考察し、抜け漏れなく整理・再確認するためのフレームワークです。

設定した事象に対して様々な角度から問いを投げかけることで、思考が広がり、それまで気付いていなかった視点を得ることができるというメリットがあります。

それでは、各要素の意味を説明していきます。

Who(だれが)

Whoは誰が提供するのかについて考えます。

サービス提供元である人物や組織、役割を持つ部署や担当者、グループなどが該当します。
主となる人物を設定することで、他の項目との関係性がよりクリアになります。
個人に関わらず、組織全体やチーム全体も対象になります。

What(なにを)

Whatでは何を提供するのかについて考えます。

製品やサービスの内容を意味します。
製品やサービス自体に加えて、付加価値やコンセプトも含まれており、製品・サービスを提供することで顧客にどのような価値(ベネフィット)を与えるのかまで対象となります。
問題や事象、製品・サービスなど、考察する対象について事実や構造を明らかにします。

Whom(だれに)

Whomでは誰に提供するのかについて考えます。

ターゲットや関係人物など、対象者を意味します。個人だけでなく、ターゲット層やペルソナ像の広い意味にも使います。
ターゲットは誰か、決定権があるのは誰か、ペルソナ分析の人物像はどんな人物か、などを考えるようにします。

When(いつ)

Whenはいつ提供するのかについて考えます。Whenは、時間や時期を意味します。

製品・サービスに関わる実行日や納期など、時間軸(期間やタイミング)が該当します。
製品・サービスの販売時期・提供時期、提供する期間はどのくらいか、何時から何時なのか、キャンペーンの情報解禁日や春夏秋冬などで実施するのか、などを考えるようにします。

Where(どこで)

Whereはどこで提供するのかについて考えます。

製品・サービスを提供する場所や位置、地理情報やエリアなどを意味します。
どこで製品やサービスを提供するかという具体的な提供エリアや、提供場所(店舗なのか、オンラインなのか等)や流通経路も含まれます。
ここで考える「どこで」は地理的なものに限定するのではなく、ビジネス市場、ビジネスの商圏についても考えるようにします。

Why(なぜ)

Whyではなぜ提供するのかについて考えます。

製品やサービスを提供する目的や目標などのゴール設定が該当します。
なぜ顧客に製品・サービスを提供するのか、目指している目標、目的や原因、意義や前提条件、狙い、意図を考えるようにします。

How(どのように)

Howではどうやって提供するのかについて考えます。

製品やサービスを認知・購入してもらうための方法が該当します。
どのような方法を使って顧客に知ってもらうのか、または購入してもらうのかの販売促進方法、集客方法などをより具体的に考えます。
手段やプロセス、方法、手順、構造などを明らかにします。

How much(いくらで)

How muchではいくらで提供するのかについて考えます。

製品やサービスをいくらで提供するのか、さらにはその資金や、経費、原価率はいくらか、利益はどのくらいになるかなども考えるようにします。
の提供時間や価格、コスト、人材など、資源を明らかにします。

それぞれの要素を「6W2Hシート」に纏めてみる

「6W2H」シートに纏める手順は次の通りです。

➀テーマを設定する

テーマを決めなくては、何に対し「6W2H」の項目を問いかけていけばいいのかわかりません
なのでテーマから先に設定しておきます。

テーマは、経営・マーケティング戦略、新規開業に向けた事業計画、企画書の作成、事業コンセプト、具体的な販売促進活動、人材教育、問題解決などが考えられます。

➁情報を広げて書き出してみる

設定したテーマに対して、8つの問いのそれぞれに回答しながら、シートなどに書いて纏めていきます(表1)。

切り口は前章を参考にして考えてみてください。

どこから書いていいのか、完璧にまとまってから、などと考えていると進まないため、最初は思いついたことを先ず書き出してみる事が大事です

思考がブレてしまったり、行き詰った際には、テーマや他の問いとの整合性を確認できるようにしましょう。

表1:6W2Hシート
テーマ:                            
項目記入欄
➀Who
(だれが)
 
➁What
(なにを)
 
➂Whom
(だれに)
 
➃When
(いつ)
 
➄Where
(どこで)
 
➅Why
(それはなぜ)
 
➆How
(どのように)
 
➇How much
(いくらで)
 

 イメージしずらい方が書き出しやすいように、簡単な例を4つほどあげておきます。

この程度の内容でも、「6W2H」をその計画の中に当てはめて考えてみると、はっきりとした行動の輪郭が見えてくるようになります。

1.経営戦略(年間計画、予算計画、行動計画など)

テーマ:予算計画
➀本部長、➁今年度の予算、➂スタッフ全員、➃2022年12月1日、➄本社会議室で、➅年間計画に準じて、➆スライドショーを使って、➇主任クラス全員分の機会損失

2.販促活動

テーマ:新規顧客の獲得
➁マーケティング担当者、➁自社のサービス、➂30代の独身女性、➃2ヶ月後から実施し3か月間、➄web上で、➅顧客の分母を増やすため、➆Googleのリスティング広告を使って、➇30万円

3.社内人材教育

テーマ:オペレーションの浸透
➀店舗責任者、➁接客方法、➂新入社員、➃入社後3か月間、➄店舗内で、➅顧客満足度向上のため、➆教育マニュアルを使って、➇正社員数×3ヶ月分の時間単位コストがかかる見込み

4.問題解決

テーマ:人材不足問題
➀人事担当者、➁自社の魅力を伝えるため、➂新卒見込者、➃2ヶ月後、➄合同説明会会場にて、➅労働力減少による問題、➆合同企業説明会を使って、➇一人当たり20万のコストがかかる見込み

思考を深めるためのポイント

  • 問題について正確に理解しているか?
  • この問題が起きる典型的なシチュエーションは?
  • なぜこの問題が生まれているのか?
  • 無意識に目を背けている点はないか?

➂見直してみる

チェックポイントは以下の通りです。
記載した「6W2H」を見直してみましょう。

  1. テーマに対する前提が間違っていないかどうか?
  2. テーマについて偏りなく情報を網羅できているか?
  3. すべての項目は互いに相互関係のある状態になっているか?
  4. テーマについて、文章で説明できるようになっているか?
  5. 思考を広げた先に曖昧な情報がある場合は、その情報についても考えられているか?

 

実践的な考え方の例(新サービスのマーケティング戦略)

簡易的な例は前述に記載しましたが、実践的な「6W2H」の例と考え方や注意点も説明していきます。

【事例】鍼灸接骨院のマーケティング戦略

簡単な概要は以下として、表2に記載しました。

  • 業種:鍼灸接骨院(治療院)で開業2年目
  • 事業規模:従業員数5人以下の小規模事業者
  • 主なサービス:保険診療と自費診療
  • 目的:自費診療の新サービスにおけるマーケティング戦略の検討

※整骨院(接骨院)、鍼灸院、マッサージ院、整体院、リラクゼーションサロン、美容サロン、リハビリ施設、トレーナー、デイサービス、介護関連サービス、歯科医院、クリニックなど、多くのヘルスケア関連事業者でこの規模は多いかと思います。

表2:6W2Hシートの例(鍼灸マッサージ院における新サービス)
テーマ:   「頭痛に特化した施術サービス」のマーケティング戦略を考える 
項目記入欄
➀Who
(だれが)
● 国家資格を有する施術スタッフ
(鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、理学療法士など)
➁What
(なにを)
● 鍼灸・整体・マッサージ施術による頭痛に特化したサービス
● 頭痛で生活や仕事のパフォーマンスを下げたくない、薬の服用による副作用での不具合も避けたい
➂Whom
(だれに)
● 頭痛で悩んでいるが、副作用が嫌で頭痛薬を飲みたくない女性
➃When
(いつ)
● 昼:主婦、近隣の会社員
● 夕・夜:近隣に住む帰宅途中の会社員
➄Where
(どこで)
● 自社店舗:施術サービス
● オンライン:無料相談やアフターフォロー
➅Why
(それはなぜ)
● 頭痛に悩んでいる女性が多く、パフォーマンス低下により家庭における主婦業務や企業における労働生産性への影響が大きい。
● 薬による副作用を嫌がる女性も多く、既存顧客からの要望も多かった。
● 近隣で同様のサービスを提供している競合他社はいない。
● このことから、自社の認知拡大や新規顧客獲得、地域住民の円満な家庭環境への貢献、顧客が勤務する企業の労働生産性の向上を目指す。
➆How
(どのように)
● 近隣住民・会社員でインターネットを活用しない女性:オフライン(チラシ配布、タウン誌掲載)から自社への電話問い合わせや来店へ繋げる
● 近隣住民・会社員でインターネットを活用する女性:オンライン(Googleビジネスプロフィール、● SNS(Instagram、YouTube)、リスティング広告)から自社webサイトへのアクセスを増やし、来店へ繋げる。
● 周辺企業:DMなどにより、自社への問い合わせへ繋げ、従業員に対するサービス提供を図る。
● 主に、webサイトへのアクセスからユーザーは来店判断をおこなうため、webサイトの内容も整備する。また、無料相談から来店へ繋げ、オンラインによるアフターフォローで顧客満足度向上を図る。
➇How much
(いくらで)
● 鍼灸施術:30分5,000円~
● 整体・マッサージ施術:30分4,000円~
● 企業向け出張施術サービス:3時間~で10,000円/時間

 鍼灸接骨院(治療院)における自費診療の「頭痛に特化した施術サービス」のマーケティング戦略を「6W2H」で検討しました。

開業2年目の既存事業における新サービスの例ですが、新規開業時でも同様の考え方です。また、もちろん多店舗展開しているような事業規模の大きい事業者でも活用可能です。

尚、一つのサービスについて記載していますが、もしその他複数のサービスのマーケティング戦略を検討する場合は、それぞれの要素は異なるためそれぞれに対応した「6W2H」を作成する必要があります

この「6W2H」には、マーケティング戦略を立案するフレームワークであるマーケティングミックス(4P分析)の考え方が含まれています。

そのため、事業計画書(ビジネスプラン)作成、新規事業の立案、販売促進(webサイト作成、SEO対策、MEO対策、リスティング広告、SNSなど)のスムーズな施策実行が可能となるのです。

マーケティングミックス(4P分析)

マーケティングミックス(4P分析)とは、構成要素である製品・サービス(Product)、価格(Price)、流通・チャネル(Place)およびプロモーション(Promotion)の頭文字から命名されたフレームワークです。
ターゲット市場においてマーケティング目標を達成するために、コントロール可能で有効な製品・サービス戦略、価格戦略、流通・チャネル戦略、プロモーション戦略をいかに組み合わせ、実行していくかを決定していきます。

【事例解説】考える順番とポイント

「6W2H」を書く場合には、思いついたことを先ず書き出してみる事が大事と言いましたが、ビジネス上で効果的にするには考える順番とポイントがあります

鍼灸接骨院における新サービスのマーケティング戦略の事例(表2)を基に説明していきますが、図1に大きな流れを図示しました。

6W2Hの作成手順と治療院、整体院、マッサージ院、整骨院、介護施設、デイサービス、歯科医院、クリニックなどにおける活用方法
図1:6W2Hの基本となる作成手順

図1の上部となる「➀Who(だれが)」「➁What(なにを)」「➂Whom(だれに)」「➅Why(なぜ)」は、なぜターゲットとした顧客に対して、どのような価値(製品・サービス)を提供して、何を解決出来るのか、なぜやる必要があるのか、というサービスの根幹部分です。

一方で下部となる「➃When(いつ)」「➄Where(どこで)」「⑧How much(いくらで)」「➆How(どうやって)」は、上部を実現していくために、場所、時間、価格、を決めて、どのように提供していくかを考えていきます。

上部では、「Why(なぜ)」を常に意識する

「➅Why(なぜ)」となる目的や目指している目標(売上、認知・ブランディング、社会貢献、顧客リストの獲得など)を常に意識して記載します。

そうすることで、「➀Who(だれが)」「➁What(なにを)」「➂Whom(だれに)」との整合性が取れるようになります。

また、以下の点を意識して検討しましょう。

  • 「➁What(なにを)」:製品・サービス名の記載とともに、提供価値を考えます。「~できる」という記載をできるようにしましょう。
  • 「➂Whom(だれに)」:年齢や性別のみではなく、困りごと(課題)で顧客を分けます。「~したい」「~したくない」という記載をできるようにしましょう。

下部では、「➆How(どうやって)」を意識する

「➆How(どうやって)」で実現可能性を意識して記載します。

「➃When(いつ)」「➄Where(どこで)」「⑧How much(いくらで)」は、もちろん前半でも考慮していきますが、ターゲットとなる顧客像の抱えている課題と提供する製品・サービスの価値を決めることが優先されます。

それは、基本的に企業や人は、プロダクトアウト(自社が売りたいもの、売れるものを基準に製品・サービス考えること)の考え方に偏ってしまいがちです。そのため、購入するのは顧客だという考え方であるマーケットイン(顧客の意見・ニーズを基準に製品・サービスを考えること)を重要とするためです。

  • 自社のリソース(経営資源)の棚卸しをして検討しましょう。
    特に主な経営資源いわれる「ヒト(人的資源)」「モノ」「カネ」「情報」「時間」「知的財産」を棚卸しをすることでより明確な記載が可能となります。
    また棚卸しができると、テーマに対しての理由を説明することもできるようになります。

最後に

「6W2H」のフレームワークは、経営やマーケティングをはじめとするあらゆるビジネスシーンで活用できます。

書き出すことで、簡単に事業内容が整理でき、新しい問題点や発想の転換ができるのではないでしょうか。

新規事業の立案やマーケティング企画にも役立ちますが、マーケティング施策(Webサイト制作やECサイトリニューアル、SEO対策、MEO対策、リスティング広告、SNS)を実行する前にも役立ちます。

誰に向けて、どんな製品・サービスを、どのように訴求していくのか…をあらかじめ考えている場合と考えていない場合は雲泥の差となります。

書き出すことで思考が整理されるので、プロジェクトやテーマに対する理解を深めるために、まず書き出すことから始めてみましょう。

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