補助金・助成金 資金調達

【2026年最新版】新事業進出・ものづくり商業サービス補助金|治療院・整体院・美容エステサロン・クリニック向け完全ガイド

近年、人材不足や物価高騰、診療報酬・介護報酬改定への対応など、医療・介護・ヘルスケア業界を取り巻く経営環境は大きく変化しています。
従来の保険診療や介護保険サービスだけに依存した経営では、今後の成長が難しくなるケースも増えており、自費サービスの拡充や新たな市場への進出、高付加価値サービスの提供を検討する事業者が増えています。
こうした中、中小企業等の設備投資や新規事業を支援する制度として、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」が創設されました。

本補助金は、従来の「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」の考え方を統合し、革新的な新製品・サービス開発、新市場・高付加価値事業への進出、海外展開を支援する制度です。
一方で、「接骨院や鍼灸院は対象になるのか」「医療法人でも申請できるのか」「保険診療や介護報酬の事業に使えるのか」といった疑問を持つ方も少なくありません。

本記事では、公募要領や事務局資料をもとに、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の制度概要から3つの事業枠の違い、対象事業者、補助対象経費、審査のポイントまで詳しく解説します。
また、治療院・整体院・美容サロン・クリニック・介護事業者向けの活用例も交えながら、制度を最大限活用するためのポイントをご紹介します。

目次

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは、中小企業等が取り組む革新的な製品・サービス開発、新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓を支援する補助金制度です。

令和8年度からスタートした制度であり、従来実施されていた「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」の考え方を整理・統合し、より分かりやすい制度として再編されました。

対象となる事業は、単なる設備更新や既存事業の拡大ではありません。

例えば、

  • 新しいサービスの開発
  • 新市場への参入
  • 高付加価値商品の開発
  • 海外市場への輸出体制構築

など、企業の成長につながる新たな挑戦が求められます。

制度の目的

本補助金の目的は、中小企業等の生産性向上と付加価値向上を実現し、持続的な賃上げにつなげることです。

具体的には、次の3つを支援対象としています。

  • 技術的革新性のある製品・サービスの開発
  • 新市場・高付加価値事業への進出
  • 海外市場開拓(輸出)に向けた国内体制の強化

これらの取組を後押しすることで、企業規模の拡大、生産性向上、地域経済の活性化を目指しています。

医療・介護・ヘルスケア業界でも、自費診療サービスや新たな健康サービス、介護周辺サービスなど、新たな収益の柱を育成する取り組みで活用できる可能性があります。

活用イメージ

治療院やサロン、クリニックなどでは、次のような取組が考えられます。

業種活用イメージ
接骨院・鍼灸院スポーツコンディショニング施設の新設、自費専門フロアの整備
整体院AI姿勢分析・3D動作解析を活用した新サービス
美容サロン高付加価値フェイシャル機器を導入した新ブランド展開
クリニック自由診療部門の新設、美容医療・予防医療サービスの展開
介護事業者介護保険外サービスや健康増進サービスの新規事業
訪問看護自費リハビリ・健康管理サービスの新規展開

※実際に採択されるためには、新市場性・高付加価値性などの要件を満たし、合理的な事業計画であることが必要です。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の概要(サマリー)

項目内容
制度名新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
目的新製品・新サービス開発、新市場進出、海外展開支援
対象中小企業等
事業枠革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠
補助率1/2~2/3
補助上限750万円~7,000万円(特例適用で最大9,000万円)
補助対象設備投資、建物費、広告宣伝費、外注費など(事業枠により異なる)
申請方法電子申請(GビズIDプライム必須)

従来の「新事業進出補助金」「ものづくり補助金」から何が変わったのか?

新制度では、従来別制度として運用されていた「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」の考え方が一つの制度に整理され、目的に応じて3つの事業枠から選択できるようになりました。

主な違いは以下のとおりです。

従来制度新制度
ものづくり補助金革新的新製品・サービス枠
新事業進出補助金新事業進出枠
海外需要開拓支援グローバル枠

また、新制度では、賃上げや付加価値向上をより重視した制度設計となっており、事業計画期間中の付加価値額の成長、一人当たり給与支給総額の増加、事業場内最低賃金の引上げなどが基本要件として設定されています。

これらの目標を達成できなかった場合は、一定の条件のもとで補助金返還の対象となる場合があるため、申請前に実現可能性を十分に検討することが重要です。

他の主要補助金との違い

設備投資や新規事業を検討している事業者からは、「どの補助金を活用すればよいのか分からない」というご相談を多くいただきます。

補助金ごとに制度の目的や対象となる取組みは異なるため、自社の事業内容や投資内容に応じて最適な制度を選ぶことが重要です。

ここでは、治療院・整体院・美容サロン・クリニック・介護事業者などが活用しやすい主要な補助金との違いを比較します。

主要補助金比較表

補助金目的主な対象となる取組み補助額の目安こんな事業者におすすめ
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金新市場への進出、革新的な製品・サービスの開発、高付加価値化新規事業、設備投資、機械装置導入、システム構築など数百万円~最大数千万円規模(事業枠・従業員数により異なる)新規事業や大型設備投資を計画している事業者
小規模事業者持続化補助金販路開拓・業務効率化ホームページ制作、広告宣伝、チラシ、店舗改装、展示会出展など数十万円~250万円程度(申請枠により異なる)集客を強化したい小規模事業者
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)DX・業務効率化・生産性向上予約システム、電子カルテ、POSレジ、会計ソフト、AIツール、CRMなどのIT導入導入するITツール・申請枠により異なるデジタル化やAI活用を進めたい事業者
中小企業省力化補助金人手不足への対応・省力化・自動化省力化設備、セルフ受付、自動精算機、清掃ロボットなど導入内容・事業規模により異なる人手不足の解消や業務効率化を図りたい事業者
事業承継・M&A補助金事業承継・M&A・経営資源の引継ぎ設備投資、専門家費用、PMI、設備更新など申請類型により異なる事業承継やM&Aを予定している事業者

ポイント

補助額だけで制度を選ぶのではなく、「どのような目的で投資を行うのか」を基準に選択することが重要です。例えば、ホームページ制作や広告宣伝が中心であれば小規模事業者持続化補助金、予約システムやAIツールの導入であればデジタル化・AI導入補助金、大規模な設備投資を伴う新規事業であれば新事業進出・ものづくり商業サービス補助金が適しているケースがあります。

治療院・サロン・クリニック・介護事業者はどの補助金を選ぶべき?

導入したい内容によって、活用しやすい補助金は異なります。

やりたいことおすすめの補助金
新しい自費サービス・新規事業を始めたい新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
大型の設備投資をしたい新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
ホームページを制作・リニューアルしたい小規模事業者持続化補助金
Web広告やチラシなど販路開拓をしたい小規模事業者持続化補助金
予約システム・電子カルテ・POSレジを導入したいデジタル化・AI導入補助金
AIツールを導入して業務効率化したいデジタル化・AI導入補助金
セルフ受付・自動精算機などで省力化したい中小企業省力化補助金
事業承継やM&Aを予定している事業承継・M&A補助金

複数の補助金を組み合わせることも可能

事業内容によっては、一つの補助金だけでなく、複数の補助金を活用することで、より効果的に設備投資や事業展開を進められる場合があります。

例えば、

  • 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金で新規事業に必要な設備を導入する
  • 小規模事業者持続化補助金でホームページや広告宣伝を行う
  • デジタル化・AI導入補助金で予約システムやAIツールを導入する

といったように、それぞれの制度の目的に応じて使い分けることで、事業全体の成長につなげることができます。

注意

同一の経費を複数の補助金で重複して補助を受けることはできません。また、公募回や制度によって併用に関する条件が定められている場合があるため、申請前に最新の公募要領を確認しましょう。

補助対象となる事業者(医療法人・社会福祉法人・個人医院・介護事業者は対象になる?)

「接骨院やクリニックでも申請できるのか」「医療法人や介護事業者も対象になるのか」は、本補助金に関するご相談の中でも特に多い質問です。

結論からいうと、治療院・整体院・美容サロン・株式会社が運営する介護事業者などは、中小企業者の要件を満たせば補助対象となる可能性があります。一方で、医療法人や社会福祉法人などは、原則として補助対象外です。

また、補助対象となる事業者であっても、実施する事業が補助金の目的に合致していなければ採択されません。
そのため、「誰が申請するか」と「どのような事業を行うか」の両方を確認することが重要です。

補助対象となる事業者一覧

まずは、自社が補助対象となる可能性があるかを確認してみましょう。

事業者区分対象可否ポイント
個人事業主(接骨院・鍼灸院・整体院・美容サロンなど)中小企業者の要件を満たせば対象
株式会社・合同会社・有限会社治療院・整体院・介護事業などで活用可能
個人開業医(医科・歯科)〇※中小企業者の要件を満たし、自費診療など補助対象事業であれば申請可能性あり
医療法人×公募要領において補助対象外
社会福祉法人×公募要領において補助対象外
学校法人×補助対象外
NPO法人・一般社団法人など法人形態や公募要領の要件によって異なる

※対象となるのは事業者ではなく、「補助事業」が制度の要件を満たす場合です。

補助対象となるのは「中小企業者」

本補助金の補助対象者は、日本国内に本社および補助事業の実施場所を有する中小企業者等です。

業種ごとに資本金または常勤従業員数の基準が設けられており、例えばサービス業では資本金5,000万円以下または常勤従業員100人以下などの要件があります。

そのため、多くの接骨院・鍼灸院・整体院・美容サロン・介護事業者(株式会社等)は、この基準を満たす可能性があります。

医療法人・社会福祉法人は原則対象外

公募要領では、医療法人や社会福祉法人などは補助対象外とされています。

そのため、例えば次のようなケースは原則として対象になりません。

  • 医療法人が運営する病院・診療所・クリニック
  • 医療法人が運営する歯科医院
  • 医療法人が運営する美容クリニック
  • 社会福祉法人が運営する特別養護老人ホーム
  • 社会福祉法人が運営する介護施設

一方で、個人開業医株式会社が運営する介護事業所などは、中小企業者の要件を満たせば対象となる可能性があります。

ポイント

「クリニックだから対象外」「介護事業だから対象外」というわけではありません。重要なのは法人形態であり、医療法人・社会福祉法人か、それとも個人事業主や株式会社かによって判断されます。

業種別の対象可否

医療・ヘルスケア業界では、法人形態だけでなく業種によっても対象可否を気にされる方が多くいます。代表的な業種をまとめると、次のようになります。

業種対象可否補足
接骨院・整骨院個人事業または株式会社等で運営している場合
鍼灸院保険施術・自費施術を問わず申請可能性あり
整体院民間事業者として対象になりやすい
美容・エステサロン新市場・高付加価値サービスへの展開で活用可能
個人クリニック・個人歯科医院〇※補助対象事業であることが前提
医療法人の病院・診療所×原則対象外
株式会社等が運営する介護事業者中小企業者の要件を満たせば対象
社会福祉法人の介護施設×原則対象外

保険診療・介護報酬を受ける事業への投資は補助対象になる?

ここも非常に重要なポイントです。

結論からいうと、保険診療や介護報酬を受けている事業者だから対象外になるわけではありません。

審査で評価されるのは、補助金を活用して実施する事業の内容です。

つまり、補助事業が制度の目的である

  • 新市場への進出
  • 高付加価値化
  • 革新的な製品・サービスの開発

に該当するかどうかが重要になります。

補助対象となりにくい例

既存事業の維持や更新を目的とした設備投資は、補助対象として認められにくいと考えられます。

  • レントゲン設備の更新
  • 電気治療器の買い替え
  • 施術ベッドの更新
  • 保険診療用施術室の改修
  • 既存デイサービスの送迎車の更新

補助対象となる可能性がある例

一方で、既存事業とは異なる市場や顧客を対象とした新たな事業であれば、補助対象となる可能性があります。

  • 保険診療中心の整形外科が自由診療センターを新設する
  • 接骨院がスポーツコンディショニング施設を開設する
  • 鍼灸院が外国人向けウェルネスプログラムを開始する
  • 整体院がAI姿勢分析を活用した新サービスを提供する
  • 株式会社が運営する介護事業者が介護保険外の健康支援サービスを開始する

重要なポイント

本補助金では、「保険診療を行っている事業者かどうか」ではなく、「補助金を活用して行う事業が、新市場への進出や高付加価値化につながるか」が審査されます。

そのため、保険診療・介護報酬事業を営んでいる場合でも、新たな事業として制度の目的に合致していれば、補助対象となる可能性があります。

一方で、既存事業の維持・更新を目的とした設備投資は、補助対象として認められにくいため注意が必要です。

補助上限額・補助率

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、事業枠・従業員数・特例の適用有無によって補助上限額が異なります。

また、補助率についても、中小企業、小規模事業者・再生事業者、最低賃金特例の適用有無によって異なるため、自社がどの区分に該当するかを事前に確認することが重要です。

表① 補助上限額

事業枠従業員数通常上限賃上げ特例
革新的新製品・サービス枠5人以下750万円850万円
6~20人1,000万円1,250万円
21~50人1,500万円2,500万円
51人以上2,500万円3,500万円
新事業進出枠20人以下2,500万円3,000万円
21~50人4,000万円5,000万円
51~100人5,500万円7,000万円
101人以上7,000万円9,000万円
グローバル枠20人以下2,500万円3,000万円
21~50人4,000万円5,000万円
51~100人5,500万円7,000万円
101人以上7,000万円9,000万円

表② 補助率

事業枠中小企業小規模事業者・再生事業者最低賃金特例
革新的新製品・サービス枠1/22/3中小企業は2/3
新事業進出枠1/22/3
グローバル枠2/3

治療院・サロン・クリニックで活用する場合の目安

治療院・整体院・美容サロン・個人クリニックでは、従業員数が20人以下の事業者が多いため、革新的新製品・サービス枠では750万円~1,000万円程度、新事業進出枠では2,500万円が一つの目安になります。

一方、複数店舗を運営する法人や介護事業者では、従業員数に応じて補助上限額が大きく引き上げられるため、設備投資や新規事業への投資規模に応じて適切な事業枠を選択することが重要です。

ポイント

補助上限額いっぱいまで申請することが有利とは限りません。審査では「事業規模に対して投資額が妥当か」「売上計画や資金計画と整合しているか」も評価されます。

必要以上に高額な設備投資を計画するのではなく、事業目的に即した適切な投資計画を立てることが採択への近道です。

3つの事業枠(革新的新製品・サービス枠/新事業進出枠/グローバル枠)の詳細比較

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、補助対象となる事業内容に応じて、以下の3つの事業枠が設けられています。

  • 革新的新製品・サービス枠
  • 新事業進出枠
  • グローバル枠

どの事業枠を選択するかによって、求められる要件や補助対象経費、審査のポイントが異なります。

特に治療院や整体院、美容サロン、クリニック、介護事業者では、「新事業進出枠」と「革新的新製品・サービス枠」のどちらに該当するか迷うケースが少なくありません。

まずは3つの事業枠の違いを一覧で確認しましょう。

3つの事業枠比較一覧

項目革新的新製品・サービス枠新事業進出枠グローバル枠
目的革新的な製品・サービス開発新市場・高付加価値事業への進出海外市場への展開
対象既存事業の強みを活かした革新的製品・サービス既存事業とは異なる市場への新規参入輸出・海外展開
新市場性必須ではない必須海外市場
高付加価値性必要必要必要
海外展開不要不要必須
主な対象設備導入・試作品開発新規店舗・新サービス海外販売体制構築

制度全体としては、いずれの事業枠も「単なる設備更新」ではなく、中長期的な企業の成長につながる取り組みを支援することを目的としています。

革新的新製品・サービス枠とは

制度の概要

革新的新製品・サービス枠は、これまでの「ものづくり補助金」の考え方を引き継ぐ事業枠です。

自社がこれまで培ってきた技術やノウハウを活用し、革新的な新製品や新サービスを開発するための設備投資などを支援します。

ここでいう「革新的」とは、単に新しい設備を導入することではなく、既存の商品・サービスとは異なる価値を生み出すことが求められます。

治療院・サロンで活用できる例

例えば、以下のようなケースが考えられます。

接骨院

  • AI動作解析システムを活用した施術プログラム
  • スポーツ障害専門プログラムの開発
  • オーダーメイドリハビリシステム

鍼灸院

  • データ解析を活用した美容鍼プログラム
  • 睡眠改善プログラム
  • 自律神経評価システム

整体院

  • AI姿勢分析
  • 3D身体計測
  • 運動指導システム

エステサロン

  • 肌診断AI
  • 高付加価値フェイシャル
  • オーダーメイド美容プログラム

これらは「新サービス」を提供するための設備投資であり、従来サービスとの差別化が図られていることが重要です。

この事業枠が向いている事業者

革新的新製品・サービス枠は、次のような事業者に向いています。

  • 新しいサービスを開発したい
  • 最新設備を活用した高付加価値サービスを提供したい
  • 技術力で差別化したい
  • 既存顧客への提供価値を高めたい

一方で、全く新しい市場へ進出する計画であれば、次に紹介する「新事業進出枠」の方が適している場合があります。

新事業進出枠とは

制度の概要

新事業進出枠は、本補助金の中でも最も注目されている事業枠です。

既存事業とは異なる市場へ進出し、新たな収益の柱を育てるための設備投資などを支援します。

ここで重要なのは、

「自社にとって新しい事業」であるだけではなく、「市場としても一定の新規性」が求められる

という点です。

つまり、

  • 新市場性
  • 高付加価値性

の両方について審査されます。

「新市場性」とは?

事務局資料では、「新市場性」とは次のように考えられています。

補助事業で提供する製品・サービスが、自社にとって新しいだけでなく、その属するジャンル・分野自体が社会において一般的な普及度・認知度が低いことを求めるもの。

つまり、

「新しいメニューを始めます」

だけでは不十分です。

例えば、

  • 整体院が整体メニューを追加
  • エステサロンが痩身メニューを追加

では、市場として新しいとは評価されにくいでしょう。

「ジャンル・分野」の考え方に注意

新市場性の審査では、「ジャンル・分野」の設定方法が重要です。

事務局は、「価格帯」「地域」「ターゲット」「業態」などで市場を細分化することは適切ではないとしています。

例えば、

× 高級整体院

ではなく

○ 整体サービス

というジャンルで考えます。

同様に、

× 港区の美容サロン

ではなく

○ 美容サロン

という単位で市場性を判断します。

この考え方を理解していないと、「新市場性」の説明が不十分となり、審査で評価されにくくなる可能性があります。

「高付加価値性」とは?

新市場進出枠では、「高付加価値性」も重要な審査項目です。

事務局資料では、

  • 一般的な価格帯
  • 一般的な付加価値

を調査・分析したうえで、

自社サービスがそれらより高い価値を提供できることを説明する必要があるとされています。

例えば、

  • 独自技術
  • AI解析
  • 専門資格
  • オーダーメイド対応
  • DXによる品質向上

などが、高付加価値化の根拠となります。

治療院・クリニックで活用できる例

例えば、以下のような取り組みが考えられます。

接骨院

  • アスリート向けパフォーマンスセンター

鍼灸院

  • インバウンド向けウェルネス事業

整体院

  • AI姿勢分析センター

クリニック(個人開業)

  • 自由診療専門施設

訪問介護

  • 保険外健康支援サービス

重要なのは、

既存サービスを拡張するだけではなく、新しい市場へ進出していること

です。

グローバル枠とは

制度の概要

グローバル枠は、海外市場への展開を目的とする事業者向けの事業枠です。

対象となる取り組みには、

  • 海外市場への輸出
  • 海外販路開拓
  • 海外展示会への出展
  • 海外向け製品開発

などがあります。

治療院・サロンでは活用できる?

一般的な治療院では活用機会はそれほど多くありません。

一方、

  • 健康機器メーカー
  • 美容機器メーカー
  • サプリメント販売
  • 自社ブランド商品の輸出
  • 海外向け健康サービス

などを展開する事業者では活用できる可能性があります。

医療・ヘルスケア業界ではどの事業枠がおすすめ?

多くの医療・ヘルスケア事業者では、次のような選択になるケースが考えられます。

業種おすすめの事業枠理由
接骨院新事業進出枠スポーツ・健康事業など新市場への展開がしやすい
鍼灸院新事業進出枠美容・睡眠・ウェルネスなど保険外サービスとの親和性が高い
整体院新事業進出枠自費サービスが中心で新市場への展開を計画しやすい
美容サロン新事業進出枠または革新的新製品・サービス枠新ブランド展開か、既存サービスの高度化かで選択
個人クリニック新事業進出枠自由診療や予防医療など新たな収益源を構築する場合
介護事業者(株式会社等)新事業進出枠介護保険外サービスや健康支援事業などへの進出が考えられる

基本要件・特例要件

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、「設備を導入したい」「新しいサービスを始めたい」という理由だけでは申請できません。

補助金の交付を受けるためには、公募要領で定められた基本要件を満たす事業計画を策定し、事業期間中および事業終了後も一定期間にわたってその目標を達成する必要があります。さらに、補助上限額や補助率の引き上げを受けるためには、特例要件を満たすことも求められます。

ここでは、それぞれの要件を分かりやすく解説します。

基本要件一覧

申請時には、次の基本要件をすべて満たす事業計画を策定する必要があります。

基本要件概要
①付加価値額要件付加価値額を一定以上増加させること
②賃上げ要件一人当たり給与支給総額を増加させること
③事業場内最低賃金要件最低賃金を一定額以上引き上げること
④ワークライフバランス要件所定の取り組みを実施すること
⑤金融機関要件(該当者のみ)融資を受ける場合は金融機関の確認を受けること

これらは採択後も確認されるため、「申請時だけ要件を満たせばよい」というものではありません。

①付加価値額要件

本補助金では、設備投資を通じて企業の「付加価値額」を継続的に増加させることが求められます。

付加価値額とは、一般的に次のような計算式で算出されます。

営業利益+人件費+減価償却費

つまり、単に売上を伸ばすだけではなく、

  • 利益が増える
  • 従業員へ還元できる
  • 生産性が向上する

ことが重要になります。

医療・介護業界で考えるポイント

例えば、

  • AI姿勢分析導入による施術単価アップ
  • 自費診療の開始
  • 保険外サービスの新設
  • 美容メニューの追加

などは、付加価値額向上を説明しやすい事業です。

一方、

単なる機械の買い替えでは、付加価値額の増加を説明することは難しくなります。

②賃上げ要件

本補助金では、補助事業終了後3~5年間の事業計画期間において、一人当たり給与支給総額を一定以上増加させる計画を策定する必要があります。

補助金の目的は、設備投資だけではなく、

「企業の成長」

「従業員への利益還元」

を実現することにあります。

そのため、

  • 人件費
  • 賃上げ
  • 生産性向上

が非常に重視されています。

治療院・サロンではどう考える?

例えば、

施術スタッフが3名いる接骨院であれば、

設備投資によって売上が増えた結果、

  • 基本給アップ
  • 賞与増額
  • 資格手当新設

などを実施する計画を立てることになります。

③事業場内最低賃金要件

事業場内で最も低い賃金についても、一定額以上引き上げることが求められます。

対象となるのは、

  • 正社員
  • パート
  • アルバイト

などを含めた事業場全体です。

最低賃金近くで雇用しているスタッフがいる場合は、事前に十分なシミュレーションが必要です。

④ワークライフバランス要件

本補助金では、賃上げだけでなく、働きやすい職場づくりも重視されています。

具体的には、

  • 育児支援
  • 働き方改革
  • 女性活躍

などに関する取り組みが求められます。

治療院では

例えば、

  • 有給取得促進
  • 時短勤務制度
  • フレックスタイム
  • 育児休業制度

などの整備が考えられます。

⑤金融機関要件

補助事業の実施にあたり、金融機関から融資を受ける場合は、資金提供元の金融機関による事業計画の確認が必要です。

申請時には「金融機関による確認書」を提出します。一方、自己資金のみで事業を実施する場合は提出不要です。なお、複数の金融機関から融資を受ける場合でも、いずれか1機関の確認書で要件を満たします。

実務のポイント

事業計画を金融機関に初めて見せるのが申請直前では、確認書の取得が間に合わないことがあります。融資を予定している場合は、事業計画の方向性が固まった段階で金融機関へ相談しておくことをおすすめします。

特例要件とは?

特例要件を満たすことで、

  • 補助上限額の引き上げ
  • 補助率の優遇

などを受けられる場合があります。

代表的なものが、

  • 賃上げ特例
  • 地域別最低賃金引上げ特例

です。

賃上げ特例

賃上げ特例では、通常の賃上げ要件よりも高い水準の賃上げを行う事業者が対象となります。

具体的には、事業計画期間中に以下の両方を満たす必要があります。

  • 一人当たり給与支給総額を、通常要件に加えてさらに年平均+2.5%(合計で年平均+6.0%)以上増加させること
  • 事業場内最低賃金を、通常要件に加えてさらに+20円(合計で+50円)以上引き上げること

要件未達の場合は返還義務に注意

賃上げ特例は補助上限額が引き上げられるメリットがありますが、事業化状況報告で要件を達成できなかった場合には、引き上げ分の補助金について返還を求められることがあります。

実務のポイント

補助上限額を増やしたいという理由だけで賃上げ特例を選択するのは避けましょう。事業計画に照らして無理のない賃上げを実現できるかを慎重に検討することが重要です。

地域別最低賃金引上げ特例

地域別最低賃金引上げ特例は、最低賃金水準に近い従業員を多く雇用している事業者への支援措置です。

適用には、2024年10月から2025年9月までの間で、一定期間、地域別最低賃金以上かつ2025年度改定前の最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上いる月が3か月以上あることなどが要件となります。適用されると、基本要件の「事業場内最低賃金要件」が除外される一方、小規模事業者や再生事業者は利用できません。

医療・介護業界で特に注意したいポイント

治療院や介護事業者では、柔道整復師・鍼灸師・看護師・介護職員・受付スタッフなど、多様な雇用形態の従業員が在籍していることが一般的です。

そのため、

  • 最低賃金の引上げによる人件費への影響
  • 賃上げ計画の実現可能性
  • パート・アルバイトを含めた賃金管理

を事前にシミュレーションしておくことが欠かせません。

また、補助金は採択されることがゴールではなく、採択後に事業計画を着実に実行し、賃上げや付加価値向上の目標を達成することが求められます。無理のない計画を立てることが、採択後のリスクを抑えるうえでも重要です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 一人で経営している接骨院・鍼灸院でも申請できますか?

はい、申請できる可能性があります。

本補助金は従業員数ではなく、「中小企業者」の要件を満たしているかどうかで判断されます。そのため、個人事業主で従業員を雇用していない場合でも、対象事業者に該当し、補助対象となる事業であれば申請できます。

ただし、賃上げ要件など一部の要件については、従業員の有無によって考え方が異なる場合があります。最新の公募要領を確認するとともに、申請前に専門家へ相談することをおすすめします。

Q2. パートやアルバイトしか雇っていない場合でも申請できますか?

可能です。

ただし、賃上げ要件や事業場内最低賃金要件では、パート・アルバイトを含めた賃金管理が必要になります。

特に、

  • 最低賃金
  • 時給アップ
  • 人件費計画

については、事業計画作成時から十分にシミュレーションしておきましょう。

Q3. 採択後にスタッフが退職した場合はどうなりますか?

退職者が発生しただけで補助金が取り消されるわけではありません。

ただし、

  • 給与総額
  • 賃上げ
  • 最低賃金

などの要件を満たせなくなる可能性があります。

退職者が出た場合は、

  • 新規採用
  • 人件費計画の見直し

なども含め、早めに対応することが重要です。

Q4. 途中で事業内容を変更できますか?

採択後であっても、一定の範囲で計画変更が認められる場合があります。

しかし、

  • 導入設備
  • 建物
  • 事業内容
  • 投資額

などの重要な変更については、事前承認が必要になるケースがあります。

勝手に変更すると補助対象外になる可能性もあるため、必ず事務局へ確認しましょう。

Q5. 新しい機械を購入するだけでも申請できますか?

基本的には難しいと考えられます。

本補助金は設備を購入する制度ではなく、

設備を活用して新しい事業を行う制度

です。

例えば、

× ベッドの買い替え

× 電気治療器の更新

× エコー機器の更新

だけでは採択は難しいでしょう。

一方、

〇 AI診断システムを導入し、新たな自費診療サービスを開始する

〇 スポーツコンディショニング施設を新設する

などであれば、設備投資が事業計画の一部として評価される可能性があります。

Q6. 採択されやすい事業計画にはどのような特徴がありますか?

採択事例を見ると、次のような共通点があります。

  • 新市場性を客観的なデータで説明している
  • 高付加価値性が明確である
  • 売上計画に根拠がある
  • 市場分析・競合分析が十分である
  • 設備投資の必要性が説明されている
  • 数値計画に整合性がある
  • 賃上げ計画が現実的である

逆に、

  • 「設備を買いたい」
  • 「売上を増やしたい」

だけでは評価されにくい傾向があります。

H2 補助対象経費・対象外となる経費

補助金を活用するうえで、「何に使えるのか」「何には使えないのか」を正しく理解することは非常に重要です。

設備投資を計画していても、その費用が補助対象外であれば補助金は受けられません。

また、補助対象経費は事業枠によって細かな違いがありますが、基本的な考え方は共通しています。

ポイントは、

新規事業の実施に直接必要な経費であること

です。

単なる修繕や更新、既存事業の維持管理に係る支出は対象となりません。

補助対象経費一覧

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、主に次のような経費が補助対象となります。

経費区分概要治療院・サロンでの具体例
機械装置・システム構築費設備・機器・システム導入AI姿勢分析機器、3D動作解析装置、美容機器、予約・顧客管理システム
建物費建物の新築・改修・増築など自由診療フロアの整備、スポーツコンディショニングスペースの新設
運搬費設備等の運搬大型機器の搬入費用
技術導入費技術・ノウハウ導入専門技術のライセンス取得
知的財産権等関連経費特許・商標など新ブランドや独自サービスの知財取得
外注費専門業者への委託システム開発、設計、試作品製作
専門家経費専門家への謝金等技術指導、マーケティング支援
クラウドサービス利用費クラウド利用料予約・分析・業務管理システム
広告宣伝・販売促進費(事業枠による)販路開拓新サービス専用サイト、パンフレット、動画制作

※対象となる経費区分は事業枠によって異なるため、最新の公募要領で必ず確認してください。

治療院・クリニックで活用しやすい経費

医療・ヘルスケア業界では、特に以下の経費が活用されるケースが多く見られます。

AI・DX設備

  • AI姿勢分析
  • 3D身体測定
  • 動作解析
  • 顧客管理システム(CRM)
  • オンライン予約システム

建物改修

  • 自費専用フロア
  • 美容施術室
  • カウンセリングルーム
  • トレーニングスペース

新サービス開発

  • オーダーメイド施術プログラム
  • 健康測定サービス
  • スポーツパフォーマンス評価
  • ウェルネスプログラム

このように、設備だけでなく「新たな事業モデル」を構築するための経費であることが重要です。

補助対象外となる経費

補助金申請では、「何が補助対象になるか」と同じくらい重要なのが、「何が補助対象外となるか」を理解しておくことです。

実際に不採択となる事例や、採択後の実績報告で補助対象外と判断されるケースの多くは、「補助対象経費の考え方」を十分に理解していなかったことが原因です。

本補助金では、補助事業の実施に直接必要な経費のみが補助対象となります。一方で、事業との関連性が低い支出や、既存事業の維持・更新に過ぎない支出は対象外です。

主な補助対象外経費

経費の例対象外となる理由
既存設備の単純な更新・買い替え新規性・付加価値向上につながらないため
既存事業の維持管理費新規事業への投資ではないため
土地の購入費補助対象外経費として整理されているため
自動車・送迎車の購入(汎用性が高いもの)事業専用性が低いため
パソコン・スマートフォンなど汎用機器補助事業以外にも利用できるため
消耗品費・文房具資産形成や新規事業への直接投資ではないため
人件費・役員報酬通常の事業運営費であるため
家賃・光熱費・通信費ランニングコストに該当するため
飲食費・接待交際費事業実施との直接的な関連性が認められないため
税金・振込手数料・各種保険料補助対象経費に含まれないため

治療院・クリニックで特に注意したい経費

医療・ヘルスケア業界では、次のような設備投資を検討するケースが多くありますが、「新事業との関連性」が明確でなければ補助対象として認められにくい点に注意が必要です。

  • 施術ベッドの更新
  • 電気治療器の買い替え
  • 超音波治療器の更新
  • レントゲン設備の更新
  • 内装のリニューアルのみを目的とした改装
  • デイサービスで使用する送迎車の更新

これらは、既存事業を継続するための設備更新と判断される可能性が高く、補助対象外となるケースがあります。

一方で、同じ設備であっても、新市場への進出や高付加価値サービスの提供を実現するために必要不可欠であることを事業計画で合理的に説明できれば、補助対象となる可能性があります。

業種別(治療院・整体院・サロン・クリニック・介護事業者)の活用事例

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、単に設備を導入することではなく、その設備を活用して新市場への進出高付加価値サービスの提供を実現することが求められます。

そのため、同じ設備を導入する場合でも、「どのような事業として展開するのか」によって評価は大きく異なります。

以下は、治療院・整体院・美容サロン・クリニック・介護事業者などで考えられる活用イメージです。実際の採択可否は、新市場性・高付加価値性・実現可能性などを総合的に審査して判断されます。

活用事例一覧

業種活用例想定事業枠ポイント
接骨院・整骨院スポーツコンディショニングセンターの開設新事業進出枠保険施術とは異なる市場への進出
接骨院・整骨院企業向け健康経営サービス新事業進出枠法人市場への新規参入
接骨院・整骨院AI姿勢・動作分析サービス革新的新製品・サービス枠デジタル技術を活用した高付加価値化
鍼灸院睡眠改善プログラム新事業進出枠健康・ウェルネス市場への展開
鍼灸院自律神経ケア専門サービス革新的新製品・サービス枠専門性の高い新サービス開発
鍼灸院インバウンド向け和鍼灸グローバル枠・新事業進出枠海外需要や訪日客市場への対応
整体院AI姿勢改善スタジオ革新的新製品・サービス枠AI・DXを活用した差別化
整体院シニア向け転倒予防センター新事業進出枠高齢者向け健康市場への進出
整体院産後ケアセンター新事業進出枠ターゲット市場の拡大
美容・エステサロンAI肌診断サービス革新的新製品・サービス枠美容DXによる高付加価値化
美容・エステサロンメンズ美容専門ブランド新事業進出枠新たな顧客層の獲得
美容・エステサロンウェルネス総合サービス新事業進出枠美容から健康分野への展開
個人クリニック自由診療センターの開設新事業進出枠保険診療と異なる収益モデルの構築
個人クリニックスポーツメディカルサービス新事業進出枠専門分野への新規展開
個人クリニック予防医療・健康増進サービス新事業進出枠健康寿命延伸市場への対応
介護事業者(株式会社等)介護保険外サービス新事業進出枠保険外サービス市場への進出
介護事業者(株式会社等)フレイル予防センター新事業進出枠地域包括ケア・介護予防分野への展開
介護事業者(株式会社等)企業向け健康支援サービス新事業進出枠法人向け福利厚生市場への参入

医療・ヘルスケア業界で採択を目指すポイント

業種を問わず、採択されやすい事業計画には共通点があります。

  • 既存事業とは異なる顧客層や市場を明確に設定している
  • 高付加価値化の根拠(技術・専門性・DX・独自性など)が説明されている
  • 設備投資が目的ではなく、新たな事業を実現するための手段となっている
  • 市場規模や競合分析など、客観的なデータに基づいて事業計画を作成している
  • 売上・利益・賃上げ計画に実現性がある

反対に、「最新機器を導入する」「既存サービスを充実させる」といった内容だけでは、新市場性や高付加価値性を十分に説明できず、評価を得ることは難しくなります。

「保険診療の設備更新」は対象になりますか?

接骨院やクリニックから最も多く寄せられる質問の一つが、「施術ベッドや治療機器の更新にも補助金を使えますか?」というものです。

原則として、既存事業の維持・更新を目的とした設備投資は補助対象になりません。一方で、その設備が新市場への進出や高付加価値サービスの提供に不可欠であることを事業計画で合理的に説明できる場合には、補助対象となる可能性があります。重要なのは設備そのものではなく、「設備を活用してどのような新しい事業を行うか」です。

採択されやすい事例・採択されにくい事例

実際の審査では、「何を導入するか」ではなく、「どのような事業を行うか」が重視されます。

以下は、一般的な考え方をまとめたものです。

採択されやすい事例採択されにくい事例
新たな顧客層を開拓する事業既存顧客向けサービスの単なる拡充
新市場への進出が明確既存サービスの延長に留まる
高付加価値化の根拠を説明できる「最新機器だから」という説明のみ
市場分析や競合分析が十分市場調査や根拠が不足している
設備投資の必要性が具体的設備導入が目的になっている
収益計画に客観的な根拠がある売上予測が希望的観測に留まる

ポイント

審査では、「設備が新しいか」よりも、「その設備を活用して、どの市場に対し、どのような新しい価値を提供するのか」が評価されます。特に新事業進出枠では、新市場性と高付加価値性を客観的なデータや市場分析に基づいて説明することが採択の重要なポイントになります。

事業計画の策定と審査のポイント

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、設備投資の内容だけで採択・不採択が決まるわけではありません。

審査では、**「なぜその事業に取り組むのか」「市場でどのような価値を提供するのか」「投資に見合う成果が期待できるのか」**を、事業計画書によって総合的に評価されます。

そのため、優れた設備を導入する計画であっても、事業計画書で十分に説明できなければ採択は難しくなります。一方、設備投資額がそれほど大きくなくても、市場分析や事業戦略が明確で、実現可能性が高い計画は評価されやすい傾向があります。

審査で評価される主なポイント

公募要領では複数の審査項目が設けられていますが、大きく整理すると次のような観点で評価されます。

審査項目主な評価内容治療院・サロンでのポイント
事業の新規性・革新性新しい製品・サービスか既存メニューの追加ではなく、新たな価値を提供しているか
新市場性新たな市場へ進出しているか新しい顧客層・市場を具体的に示せているか
高付加価値性競合との差別化が図られているか価格ではなく、技術・専門性・DXなどで優位性を示せるか
事業の実現可能性実施体制・スケジュール・資金計画人員・設備・資金を含めて無理のない計画か
収益性・成長性継続的な売上・利益が見込めるか設備投資後の収益モデルを具体的に説明できるか
政策との整合性賃上げ・生産性向上への貢献付加価値額や賃上げ目標に実現性があるか

「新市場性」の説明が採択のカギ

治療院やクリニックでは、最も苦労するのが「新市場性」の説明です。

例えば、

  • 美容鍼を始める
  • パーソナルトレーニングを始める
  • 自費診療を始める

というだけでは、「新市場」とは評価されない可能性があります。

重要なのは、

  • 誰を対象とするのか
  • 従来と何が違うのか
  • 市場として成長性があるのか

を客観的なデータで示すことです。

ポイント

「新しいサービスを始める」ことと、「新しい市場へ進出する」ことは同じではありません。市場規模や競合状況、ターゲットのニーズなどを踏まえて、新市場性を論理的に説明することが重要です。

「高付加価値性」は価格ではなく価値で示す

事務局資料では、高付加価値性について、一般的な製品・サービスと比較して高い付加価値を提供できるかが審査されるとされています。

そのため、

「価格が高い」

だけでは評価されません。

例えば、

  • AIやDXを活用したサービス
  • 専門資格を活かした独自プログラム
  • オーダーメイド対応
  • エビデンスに基づくサービス
  • 他院では提供できない専門技術

など、「なぜ高い価値を提供できるのか」を説明する必要があります。

市場分析・競合分析も重要

事業計画書では、自社の強みだけでなく、市場環境についても整理することが求められます。

具体的には、

  • 市場規模
  • 市場の成長性
  • ターゲット顧客
  • 顧客ニーズ
  • 競合他社との違い
  • 自社の優位性

などを、統計データや公的資料などの客観的な情報を用いて説明すると説得力が高まります。

売上計画は「根拠」が重要

売上予測についても、

「1年目に売上1,000万円」

と記載するだけでは評価されません。

例えば、

  • 施術単価
  • 月間利用者数
  • 稼働率
  • リピート率
  • 集客方法

などを積み上げて計算し、数値の根拠を明確にすることが重要です。

施術単価15,000円 × 月40名 × 12か月 = 年間売上720万円

このように、売上の算出過程を示すことで、事業計画の実現可能性を説明しやすくなります。

加点項目も積極的に活用する

補助金では、基本的な審査項目に加え、一定の条件を満たす事業者については加点措置が設けられています。

公募回によって内容は変更される場合がありますが、代表的なものとしては、

  • 成長加速マッチングサービスへの登録
  • パートナーシップ構築宣言
  • 事業継続力強化計画の認定
  • 健康経営優良法人の認定
  • えるぼし・くるみん認定
  • DX認定

などがあります。※最新の公募回で適用される加点項目は必ず公募要領をご確認ください。

医療・ヘルスケア事業者へのアドバイス

健康経営優良法人や事業継続力強化計画は、比較的取り組みやすく、他の補助金や融資制度でも活用できるため、中長期的な経営基盤の強化という観点からも取得を検討する価値があります。

不採択になりやすい事業計画の特徴

最後に、治療院・サロン・クリニックからのご相談で多い、不採択につながりやすいケースをまとめます。

不採択になりやすいケース改善のポイント
設備導入が目的になっている設備を活用した事業戦略を明確にする
新市場性の説明が弱い市場規模や顧客ニーズをデータで示す
競合との差別化が曖昧自社独自の強みを具体的に整理する
売上計画に根拠がない単価・利用者数・稼働率などを積み上げて算出する
賃上げ計画が現実的でない利益計画と整合した無理のない計画にする
文章が制度要件と一致していない公募要領の用語や審査項目を踏まえて記載する

ワンポイントアドバイス

医療・ヘルスケア業界では、「技術やサービスには自信があるが、それを事業計画書として文章化するのが難しい」というご相談を多くいただきます。

採択される事業計画書では、事業者の思いや経験だけでなく、市場分析・数値計画・投資効果を客観的な根拠とともに示すことが重要です。制度の趣旨や審査項目を踏まえて計画を整理することで、採択の可能性を高めることにつながります。

公募スケジュール

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、公募回ごとに募集期間が設定されます。申請を検討している場合は、公募開始後に準備を始めるのではなく、あらかじめ事業計画や必要書類の準備を進めておくことが重要です。

一般的なスケジュールは、以下のような流れになります。

項目内容
公募開始公募要領の公開・申請受付開始
電子申請受付GビズIDを利用した電子申請
申請締切期限までに電子申請を完了
審査・採択発表事業計画書などをもとに審査
交付決定採択後、正式に事業開始が可能
補助事業実施設備導入・サービス開発などを実施
実績報告事業完了後に報告書を提出
補助金交付審査後に補助金が支払われる

注意

補助金は採択後すぐに支払われるわけではありません。原則として、事業を実施し、実績報告が完了した後に補助金が交付されます。そのため、設備投資や工事費などを一時的に立て替える資金計画も必要です。

申請の流れ

申請は、GビズIDプライムアカウントを利用した電子申請で行います。郵送や窓口での申請はできません。

申請の一般的な流れは以下のとおりです。

STEP内容
STEP1補助金の公募要領を確認する
STEP2GビズIDプライムを取得する
STEP3事業計画を策定する
STEP4見積書・決算書など必要書類を準備する
STEP5電子申請システムから申請する
STEP6審査・採択結果を待つ
STEP7交付決定後に補助事業を開始する
STEP8事業完了後に実績報告を提出する
STEP9補助金の確定・交付を受ける

STEP1 公募要領を確認する

まずは最新の公募要領を確認し、自社が補助対象となるか、どの事業枠で申請するかを整理します。

特に、

  • 対象事業者
  • 基本要件
  • 補助対象経費
  • スケジュール

は必ず確認しましょう。

STEP2 GビズIDプライムを取得する

電子申請にはGビズIDプライムアカウントが必要です。

取得までに数週間かかる場合もあるため、公募開始前に取得しておくことをおすすめします。

STEP3 事業計画を作成する

採択の可否を大きく左右するのが事業計画書です。

事業計画では、

  • 新市場性
  • 高付加価値性
  • 市場分析
  • 競合分析
  • 売上計画
  • 資金計画
  • 賃上げ計画

などを具体的に整理する必要があります。

STEP4 必要書類を準備する

主な提出書類には、次のようなものがあります。

  • 事業計画書
  • 決算書
  • 確定申告書
  • 見積書
  • 賃上げ計画
  • その他、公募要領で定められた書類

公募回や事業者区分によって必要書類は異なるため、最新の公募要領を確認してください。

STEP5 電子申請

準備した内容を電子申請システムへ入力し、期限までに提出します。

申請締切直前はアクセスが集中することもあるため、余裕をもって申請することをおすすめします。

申請時の注意点

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、次のような点に注意が必要です。

①交付決定前に契約・購入しない

補助対象となる設備や工事は、原則として交付決定後に契約・発注・購入する必要があります。

交付決定前に契約・支払いを行った場合は、補助対象外となる可能性があります。

②複数社から見積書を取得する

設備導入では、適正な価格であることを示すため、複数社から見積書の取得が求められる場合があります。

③補助対象経費を正しく理解する

設備投資の内容によっては、補助対象外となるケースがあります。

「導入したい設備」ではなく、「新事業に必要な設備」であることが重要です。

④採択後も報告義務がある

補助金は採択されて終わりではありません。

事業完了後には、

  • 実績報告
  • 事業化状況報告

などが求められます。

そのため、採択後も継続して適切な管理が必要です。

まとめ

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、中小企業等が新市場への進出や革新的な製品・サービスの開発、高付加価値化を目指す際に活用できる補助金です。治療院・整体院・美容サロン・個人クリニック・介護事業者においても、保険診療や既存サービスの単なる設備更新ではなく、新たな市場や顧客層を対象とした事業であれば活用できる可能性があります。一方で、医療法人や社会福祉法人など対象外となる法人形態や、保険診療・介護報酬事業そのものへの投資は対象外となるケースもあるため、公募要領を十分に確認することが重要です。

また、本補助金では設備の内容よりも、「なぜその事業を行うのか」「市場性・収益性・成長性をどのように説明するのか」が採択の大きなポイントとなります。市場分析や競合分析、売上計画、賃上げ計画などを含めた実現可能性の高い事業計画を策定することで、採択の可能性を高めることができます。申請を検討されている場合は、早い段階から準備を進め、自社に最適な事業計画を作成することをおすすめします。


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単に申請書を作成するだけでなく、

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  • 活用できる事業枠の選定
  • 市場分析・競合分析
  • 事業計画書の作成支援
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しています。

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法政大学経営大学院発ベンチャー/経営革新等認定支援機関/M&A支援機関/IT導入支援事業者

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飯塚 伸之(いいづか のぶゆき)

株式会社BE NOBLE 代表取締役、法政大学経営大学院特任講師、MBA(経営管理修士)
医療機関での勤務経験を活かし、ヘルスケア事業者の経営・集客支援や資金調達支援、M&A、企業向け健康経営支援事業を展開。 中小企業診断士/健康経営エキスパートアドバイザー/医療経営士/ファイナンシャルプランナー/鍼灸師/柔道整復師/キャリアコンサルタント/産業カウンセラーなど、多岐にわたる資格を保有し、幅広い視点からクライアントの課題解決に取り組む。

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