接骨院・整骨院・鍼灸院・マッサージ院などの治療院のホームページは、集客のための重要なツールである一方、あはき師法・柔道整復師法に基づく広告規制の対象となる可能性があることをご存じでしょうか。
実際には「治る」「改善する」「専門」など、意図せず広告ガイドラインに抵触している表現がホームページ上に数多く見られます。
本記事では、厚生労働省が示すあはき・柔整広告ガイドラインを基に、治療院ホームページで知らずにやってしまいがちな違反事例を具体的に解説します。
あわせて、違反になりやすい表現の考え方や、広告規制を守りながら集客につなげるための実務上の注意点についても整理します。
目次
まず押さえるべき広告規制の基本
あはき・柔整に関する広告は、次の法律・告示により厳しく制限されています。
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(あはき師法)
- 柔道整復師法
- 広告可能事項を定めた厚生労働省告示
原則として、法律および告示で「認められている事項以外」は広告できません。
さらに、たとえ広告可能事項であっても、以下は認められていません。
- 虚偽広告
- 誇大広告
- 比較優良広告
- 公序良俗に反する広告
CASE 01
「治る」「改善する」など効果を断定する表現
よくある表現例
- 「腰痛が治ります」
- 「慢性肩こりを根本改善」
- 「どんな症状でも対応できます」
なぜ違反になるのか
施術の効果・効能を断定する表現は、施術者の技能・施術方法を誇示する内容に該当し、広告不可とされています。
ガイドラインでは、「施術者の技能、施術方法又は経歴に関する広告は一切認められない」と明確に示されています。
ポイント
- 「症状名+改善」「根本治療」などは要注意
- 言い換えやニュアンス変更でも不可
CASE 02
ビフォーアフター写真・体験談の掲載
よくある表現例
- 施術前/施術後の写真
- 「○回でこんなに変わりました」
- 利用者の声で効果を強調
なぜ違反になるのか
加工・修正の有無に関わらず、施術効果を示唆・強調する表示は、虚偽・誇大広告に該当するおそれがあります。
ウェブサイト等に掲載すべきでない事項として、以下が明記されています。
- 加工・修正した施術前後の写真
- 客観的事実であることを証明できない内容
ポイント
- 「患者さんの声」も内容次第で違反
- 口コミ転載も注意が必要
CASE 03
専門」「特化」「No.1」などの優良性表現
よくある表現例
- 「交通事故治療専門」
- 「地域No.1の技術」
- 「県内唯一の施術」
なぜ違反になるのか
比較優良広告は、たとえ事実であっても広告可能事項ではなく、誤認を与えるおそれがあるため禁止されています。
また、「専門」「特化」という表現も、対象者や施術内容を限定・強調する点で問題となります。
ポイント
- 「専門」「特化」は非常にリスクが高い表現
- 第三者評価を装っても不可
CASE 04
医療機関と誤認される表現・名称
よくある表現例
- 「○○クリニック」
- 「メディカル整体」
- 「リハビリセンター」
なぜ違反になるのか
ガイドラインでは、医療機関と誤認されるおそれのある名称・表現は不可と明確に示されています。
「診療」「診察」「初診」「再診」などの医療用語も使用できません。
ポイント
- サイト内の文言だけでなく
- ドメイン名・URL・画像表現も含めて判断される
CASE 05
国家資格以外の資格・経歴アピール
よくある表現例
- 「○○療法認定資格」
- 「海外留学で習得」
- 「有名人のトレーナー経験」
なぜ違反になるのか
広告可能なのは、国家資格(あはき・柔整)を有している旨のみです。
民間資格・海外資格・経歴・師事歴などは、施術者の経歴広告に該当し、禁止されています。
CASE 06
「各種保険取扱い」「交通事故対応」の表記
よくある表現例
- 「各種保険取扱い」
- 「交通事故治療対応」
なぜ違反になるのか
広告可能なのは、医療保険療養費支給申請ができる旨のみであり、その際も医師の同意が必要である旨の明示が必要です。
「各種保険」「自賠責」「労災」などの包括的表現は広告不可能とされています
CASE 07
ホームページは「広告ではない」という誤解
ガイドラインでは、通常のホームページは原則「広告」とは見なされないとしつつも、
- リスティング広告
- バナー広告
- SNS広告・スポンサー表示
などは、誘引性・特定性・認知性を満たす場合、広告として扱われます。
また、ホームページ内容についても利用者保護の観点から適切な在り方が求められると明記されています。
\ 「知らずに違反していないか」チェックする /
効果表現・専門表記・医療と誤認される文言などは、全体を見ないと判断できないケースがほとんどです。まずは現状をチェック。
「知らなかった」では済まされない時代へ
治療院のホームページは、集客ツールであると同時に法令遵守が求められる「情報媒体」でもあります。
広告ガイドラインに違反すると、以下につながる可能性もあります。
- 行政指導
- 是正命令
- 悪質な場合は告発
「昔からこの表現を使っている」「制作会社に任せている」という理由だけでは、リスク回避にはなりません。
1. 「違反しない表現」とは何か?
― OK/NGの線引きの考え方 ―
あはき・柔整広告ガイドラインの最大のポイントは、「何を書いてはいけないか」ではなく「何を書いてよいかが限定されている」点にあります。
つまり、
NG表現を言い換えればOK
ぼかせば問題ない
という考え方は通用しません。
ガイドラインでは、広告に掲載できる情報は、利用者の施術所等及び施術内容の選択に資する客観的な評価が可能で、事後の検証が可能な事項に限られると明記されています
よくある「言い換えNG」の例
| NG表現 | 言い換えてもNGな例 |
|---|---|
| 治ります | 改善が期待できます |
| 根本治療 | 原因にアプローチ |
| 痛くない | 負担の少ない施術 |
| 専門 | 特化・重点対応 |
意味が同一・類似であれば不可という考え方が取られます。
2. 広告規制があってもSEOはできるのか?
結論から言うと、SEOは可能です。
ただし考え方が違います。
誤解されやすいポイント
- 「症状名を書けない=SEOできない」
- 「効果を書けない=集客できない」
これは正しくありません。
ガイドラインが認めている考え方
ガイドラインでは、以下の点が明確に示されています。
- 利用者が正しく選択するための情報提供は重要
- インターネット上の情報提供は一般化している
- ウェブサイトは原則「広告」ではないが利用者保護の観点から適切な内容が求められる。
つまり、以下に切り替えることが重要です。
「効く・治る」を訴求するSEO
「施術所を選ぶ判断材料を提供するSEO」
広告ガイドライン以前に、そもそもホームページが集客につながらない構造になっているケースも少なくありません。
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3. 広告ガイドラインを踏まえたSEOの方向性
① 施術所情報の充実
広告可能事項として認められている情報を、丁寧かつ分かりやすく記載することが基本です。
- 施術所の名称
- 所在地・電話番号
- 施術日・施術時間
- 予約方法
- 出張施術の有無
- 駐車場の有無
これらはSEO上も重要なローカル要素です。
② 施術内容の「説明」は可能だが「効果」は不可
ガイドラインでは、以下については、利用者保護の観点から掲載すべき情報とされています。
- 施術内容そのもの
- 費用
- 自費施術のリスクや注意点
OKな例
- 施術の流れ
- 施術時間の目安
- 使用する器具の説明
- 自費施術であることの明示
NGな例
- 症状改善の断定
- 医学的効果の説明
- 他院との比較
③ 「不安を煽らない」ことが重要
以下のような表現は、ウェブサイトにも掲載すべきでないと明示されています。
- 不安を過度に煽る表現
- 早急な受療を過度に促す表現
- 科学的根拠が乏しい説明
NG例
- 「放置すると危険」
- 「今すぐ来院しないと悪化」
- 「命に関わる可能性」
4. ホームページ修正・制作時の実務チェックポイント
ここでは、治療院が実際に見落としやすいポイントを整理します。
チェック① トップページのキャッチコピー
- 症状名が入っていないか
- 効果・改善を断定していないか
- 医療と誤認される表現がないか
チェック② メニュー・サービス名
- 「○○改善コース」
- 「根本治療プログラム」
- 「交通事故治療」
これらは名称自体が問題になる可能性があります。
チェック③ 画像・イラスト・動画
ガイドラインでは、文字だけでなく暗示的・間接的表現も広告に含まれるとされています。
- 回復を強調するイラスト
- 医療機器のように見える演出
- 医師・白衣風の人物写真
も注意が必要です。
チェック④ URL・ドメイン名
以下のようなURLは、暗示的広告と判断される可能性があります。
- katakorinaoru.jp
- itaminashi.com
- miracle-seitai.jp
チェック⑤ 外部サイト・口コミ転載
- ランキング1位
- メディア掲載実績
- 第三者評価の引用
これらも、実質的に広告と判断される場合があるとされています。
なお、広告表現だけでなく、個人情報保護やSSL化などのセキュリティ面の対策が不十分なホームページも経営上のリスクになります。
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5. 制作会社・SEO業者に任せきりが危険な理由
広告ガイドラインでは、広告規制の対象は施術者・施術所だけでなく広告代理店やインフルエンサー等「何人も」含まれると明記されています。
つまり、以下の理由では、違反の責任を免れません。
- 制作会社が作った
- 業者が提案した
広告ガイドラインを理解していない制作会社に依頼すると、作り直しや修正が必要になるケースも少なくありません。
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まずは「現状把握」から
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ホームページを作り直す前に、必ず一度チェックしてください
広告ガイドライン違反のリスクや、集客面の課題をまとめて確認できます。
「広告ガイドラインに抵触していないか」「なぜ集客につながっていないのか」「部分的な修正で改善できるのか、それとも作り直しが必要なのか」
こうした点を、第三者の専門的な視点から整理します。
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※医療をはじめとするヘルスケア領域のインターネット上の情報は、誤った情報や不十分な設計がユーザーの判断に大きな影響を与えるため、広告ガイドラインや各種法的規制、さらにGoogleが重視するE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の観点から、特に厳しく評価されています。
まとめ|広告ガイドライン対応は「経営リスク管理」
治療院のホームページでは、広告ガイドラインを正しく理解しないまま運用すると、知らずに違反表現を使用してしまうリスクがあります。
効果を断定する表現、優良性を示す言葉、医療機関と誤認される名称や表現などは、たとえ悪意がなくても問題となる可能性があります。
一方で、広告規制があるからといって情報発信やSEOができないわけではありません。重要なのは、「効果を訴求する」のではなく、「利用者が適切に判断するための情報を丁寧に提供する」という視点です。
自院のホームページがガイドラインに沿って運用できているかを定期的に見直すことが、集客とリスク管理の両立につながります。
弊社では、ヘルスケア業界向けのデジタルマーケティング支援をおこなっております。
そして、自社製品・サービスや事業フェーズに適したホームページ作成、SEO対策、MEO対策、リスティング広告運用代行について丁寧にアドバイスします。効果的な施策を目指している方は、ぜひ一度ご相談ください。
また、マーケティング戦略やデジタルマーケティング戦略についてお悩みの方も、ご相談ください。
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